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口元
大きな
眼を
揃へて、
襖の
陰から
入つて
來た
宗助の
方を
向いたが、
二人の
眼元にも
口元にも、
今笑つた
許の
影が、まだゆたかに
殘つてゐた。
ニヤ/\と
両の
頬を
暗くして、あの
三日月形の
大口を、
食反らして
結んだまゝ、
口元をひく/\と
舌の
赤う
飜るまで、
蠢めかせた
笑ひ
方で
兒を
靜かに
寢床に
移して
女子はやをら
立上りぬ、
眼ざし
定まりて
口元かたく
結びたるまゝ、
疊の
破れに
足を
取られず