-
トップ
>
-
道子
本堂の
方では
経を
読む
声、
鉦を
打つ
音もしてゐる。
道子は
今年もいつか
盆の十三
日になつたのだと
初めて
気がついた
時である。
「
一寸伺ひますが、アノ、アノ、
田村と
云ふ
女のお
墓で
御在ますが、アノ、それはこちらのお
寺で
御在ませうか。」と
道子は
滞り
勝ちにきいて
見た。
「あつちと
同じでいゝのよ。お
願ひするわ。
宿賃だけ
余計になるけど。」と
言ひながら、
道子は
一歩一歩男を
橋向の
暗い
方へと
引ツ
張つて
行かうとする。