うつ)” の例文
旧字:
あちらで、それをおくさまは、おんなはだれでも、かがみがあれば、しぜんに自分じぶん姿すがたうつしてるのが、本能ほんのうということをらなそうに
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それだから、彼等にとって生徒はまことに有難いものにうつるので「生徒さん」と云う名をつけてママして呼びずてにする事はしなかった。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
いぬかわをかぶって、おせんのはだかおも存分ぞんぶんうえうつってるなんざ、素人しろうとにゃ、鯱鉾立しゃちほこだちをしても、かんがえられるげいじゃねえッてのよ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ゾオラが偶々たま/\醜悪しうあくのまゝをうつせば青筋あをすじ出して不道徳ふだうとく文書ぶんしよなりとのゝしわめく事さりとは野暮やぼあまりに業々げふ/\しき振舞ふるまひなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
両様りやうやうともくはしく姿すがたしるさゞれども、一読いちどくさい、われらがには、東遊記とういうきうつしたるとおなさまえてゆかし。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「なんといわるる、ではそこもとが、苦心に苦心をかさねてうつされたこの秘図を、おしげもなく、伊那丸さまへおゆずりなさろうとおっしゃるか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其中そのうちあつらへた御飯ごはん出来できましたから、御飯ごはんべて、過去帳くわこちやうみなうつしてしまつた。過去帳くわこちやううちに「塩原多助しほばらたすけ養父やうふ塩原覚右衛門しほばらかくゑもん実父じつぷ塩原覚右衛門しほばらかくゑもん
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「単に、手本にするだけではござりませぬ。きた馬と朝夕ちょうせき起居をともにし、その習性を忠実に木彫もくちょううつしてみたいというのが、愚老の心願でござりまする」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この村の恒例で、甲州術道五宿の『うつ』の名人、小浜太夫こはまたゆうの一座がにぎにぎしく乗りこんできた。
顎十郎捕物帳:15 日高川 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
下流かりゅうの方の川はばいっぱい銀河ぎんがおおきくうつって、まるで水のないそのままのそらのように見えました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
主観的とは心中の状況を詠じ、客観的とは心象にうつり来りし客観的の事物をそのままに詠ずるなり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
橋をわたらずときゝて心おちつき、岩にこしかけて墨斗やたてとりいだし橋をうつしなどして四辺あたりを見わたせば、行雁かうがんみねこえて雲にをならべ、走猿そうゑんこずゑをつたひて水にうつす。
代助は又に這入つて、平岡の云つた通り、全たくひまがありぎるので、こんな事迄考へるのかと思つた。湯からて、鏡に自分の姿をうつした時、又平岡の言葉を思ひした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いにしへよりやまと漢土もろこしともに、国をあらそひて兄弟あたとなりしためしは珍しからねど、つみ深き事かなと思ふより、悪心あくしん懺悔さんげの為にとてうつしぬる御きやうなるを、いかにささふる者ありとも
けがれのない少年しょうねんたましいをほめたたえ、これをけが大人おとな生活せいかつみにくさ、いやしさをにくのろうソログーブの気持きもちは、レース細工ざいくのようにこまやかな、うつくしい文章ぶんしょうで、こころにくいまでにうつされている。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
さなきだにかれ憔悴しょうすいしたかお不幸ふこうなる内心ないしん煩悶はんもんと、長日月ちょうじつげつ恐怖きょうふとにて、苛責さいなまれいたこころを、かがみうつしたようにあらわしているのに。そのひろ骨張ほねばったかおうごきは、如何いかにもへん病的びょうてきであって。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それからツルゲーネフの翻訳「あひゞき」を国民の友で、「めぐりあひ」を都の花で見た時、余は世にも斯様こんな美しい世界があるかと嘆息した。り返えし読んで足らず、手ずからうつしたものだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それは現世げんせ旅姿たびすがたそのまま、わばそのうつしでございます。
自尽じじんしたるその時の心情を詩句にうつしたるものなり。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
うつされ、うつされ、うつされている。
うつす (新字新仮名) / 中井正一(著)
あるのこと、おもいがけなく、新聞社しんぶんしゃひとがきて、二人ふたりっているところをうつし、記者きしゃは、少年しょうねんに、いろいろのことをたずねてりました。
街の幸福 (新字新仮名) / 小川未明(著)
読者どくしやよ、かくのごときはみづうみ宮殿きうでんいたきざはしの一だんぎない。片扉かたとびらにして、うつたる一けいさへこれである。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おいらのまえじゃ、はだまでせて、うつさせるおまえじゃないか、相手あいてだれであろうと、ここで一時いっとき、茶のみばなしをするだけだ。心持こころもよくってやるがいいわな
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
姿は、ひどく変っているが、日あたりのよい草堂の縁に小机を向けて、何やらうつし物の筆をとっている老法師こそ、まぎれもない、養父ちちの範綱なのであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふちだけ取換とりかへて、娑婆しやばの事がうつる、ぼくこれだけ悪い事をしたなどとつていらツしやいます。
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
僕はぐん調しらべたのをちゃんとうつして予察図よさつずにして持っていたからほかの班のようにまごつかなかった。けれどもなかなかわからない。郡のも十万分一だしほんの大体しか調ばっママていない。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
新撰字鏡しんせんじきやうといふ字書じしよは、本朝のそう昌住しやうぢゆうといひし人、今より九百四十年あまりのむかし寛平昌泰くわんひやうしやうたい年間ころ作りたる文字の吟味をしたるしよ也。むかしより世の学匠がくしやうたちつたうつして重宝ちようほうせられき。
それが岩のしわ目と文字のあとをほの白く、そッくりそのまま、石摺いしずりにうつってここにあるのではないか。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どういふわけ梅廼屋うめのや塔婆たふばげたか、不審ふしんに思ひながら、矢立やたて紙入かみいれ鼻紙はながみ取出とりだして、戒名かいみやう俗名ぞくみやうみなうつしましたが、年号月日ねんがうぐわつぴ判然はつきりわかりませぬから、てら玄関げんくわんかゝつて
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
自然しぜん風景ふうけいうつすほかは、画帳がちょうことごとく、裸婦らふぞうたされているというかわようだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
どうしてこうよくいろているかとおどろかれるほどうつくしくうつされていたのであります。
どこで笛吹く (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかしながらにはそらごともまじへざればそのさまあしきもあるべけれど、あまりにたがひたれば玉山の玉にきずあらんもをしければ、かねて書通しよつうまじはりにまかせて牧之がつたなき筆にて雪の真景しんけい種々かず/\うつ
人々ひと/″\も、くては筋骨きんこつたくましく、膝節ひざぶしふしもふしくれちたる、がんまのむすめ想像さうざうせずや。らず、かたあるひ画像ぐわざうなどにて、南谿なんけいのあたりうつける木像もくざうとはたがへるならむか。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
母さまはそのひたいあまあついといって心配しんぱいなさいました。須利耶さまはうつしかけの経文きょうもんに、を合せて立ちあがられ、それから童子さまを立たせて、紅革べにがわおびむすんでやりおもてへ連れてお出になりました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「さっきくわを持った時、邪魔になるので腰から抜いて、人形箱のそばへほうッて置いたのが不覚さ。実はあの中に、ヨハン様から渡された王庁おうちょうの文のうつしがはいっているんで……」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほのかに差したあかりの前に、仲蔵まいづるやに似た歌麿の顔が、うつのように黄色く浮んだ。
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ひかりがみなぎった、外界がいかいは、いまこんな光景こうけいうつしていたが、トンネルのうち世界せかいは、また格別かくべつでありました。そこへは、永久えいきゅうひかりというものがんではきませんでした。
上下かみしも何百文なんびやくもんろんずるのぢやない、怪力くわいりきうつ優劣いうれつふのである。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なつになると、つばめがんできました。そして、そのかわいらしい姿すがた小川おがわみずおもてうつしました。またあつ日盛ひざかりごろ、旅人たびびと店頭みせさきにきてやすみました。そして、四方よもはなしなどをしました。
飴チョコの天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼は手を鳴らして、女中、帳場を呼びつけ、これを壁書きした客の年齢人相などを問いただし、そして「鄆城県人宋江作うんじょうけんのひとそうこうつくる」の署名もうつしとって、晩を待った。いや船に寝て、翌朝を待った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとえば、おびや、羽織はおりや、着物きものにしろ、刺繍ししゅうをしてできがった、はなや、ちょうや、とりは、ただひながたせたのであり、絵本えほんからうつしたものであるから、んでいて、きている姿すがたでなかった。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たて六尺あまりよこげんのいちめんにわたって、日本全土、群雄割拠ぐんゆうかっきょのありさまを、青、赤、白、黄などで、一もく瞭然りょうぜんにしめした大地図の壁絵。——さきごろ、絵所えどころ工匠こうしょうそうがかりでうつさせたものだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)