うつ)” の例文
ディーツゲンのようにえらくはないにしても、地方にいて、何の誰べぇとも知られず、生涯をささげるということはうつくしい気がした。
白い道 (新字新仮名) / 徳永直(著)
かれに映じた女の姿勢は、自然の経過を、尤もうつくしい刹那に、捕虜とりこにして動けなくした様である。かはらない所に、ながい慰藉がある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
むかしむかし大昔おおむかしいまから二千ねんまえのこと、一人ひとり金持かねもちがあって、うつくしい、気立きだてい、おかみさんをってました。
不埒ふらちならずやこそ零落おちぶれたれ許嫁いひなづけえんきれしならずまこと其心そのこゝろならうつくしく立派りつぱれてやりたしれるといへば貧乏世帶びんぼふじよたいのカンテラのあぶら
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と云つた母の顔にもうつくしい血がのぼつた。滿はその向側むかふがはの畑尾の傍へ行つてしまつた。鏡子はまた横になつてしまつた。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ほそあしのおかげではしるわ、はしるわ、よつぽどとほくまでげのびたが、やぶのかげでそのうつくしいつのめがさヽ引掛ひつかかつてとう/\猟人かりうどにつかまつたとさ。
まへさんはさかんところて、元氣げんきよくはたらいたのはよろしい、これからは、其美そのうつくしいところて、うつくしいはたらきをもるがからう。うつくしいことを。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
間違まちげえはなかろうけれども、わけえ者の噂にあんなハアうつくしい女子おなごがあるからうちけえるはいやだんべえ、婆様ばあさまの顔見るも太儀たいぎだろうなどという者もあるから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
けれど、わたくしつね確信かくしんしてます、てんには一種いつしゆ不思議ふしぎなるちからがあつて、こゝろうつくしきひとは、屡々しば/″\九死きゆうし塲合ばあひひんしても、意外いぐわい救助すくひことのあるものです。
ぬかしながら見れば見るほどうつくしきお光はいとゞおもはゆげのかたち此方こなた心中こゝろときめきいはんとしては口籠くちごもる究りのわるきをかくさんと思へば立てはこうちよりあたらしきほん種々いろ/\取り出し之を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
微苦笑させられるが、それらの地獄の名にも似ず、環境のうつくしさにはまた驚かされる。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
出征しゅっせいするあさも、かみだなのまえにすわって、このことをかえしていったのだ。今日きょう野原のはら景色けしきが、あまりうつしくえるので、ついこれからの激戦げきせんはなるのでないか、とおもったよ。
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)
れぼつたい一重瞼ひとへまぶたの、丸顔の愛くるしい娘だ。紫のあらしま縒上布よりじやうふの袖の長い単衣ひとへを着て、緋の紋縮緬もんちりめん絎帯くけおび吉弥きちやに結んだのを、内陣ないぢんからりて来た貢さんはうつくしいと思つた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
うつくしき、さいへ悲しき歓楽くわんらくにかも満つる。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うつくしかりしそのかみの
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
それが一色いつしきになつてまはる。しろい棺は奇麗な風車かざぐるま断間たえまなくうごかして、三四郎の横を通り越した。三四郎はうつくしいとむらひだと思つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
隣家となりける遲咲おそざききのはなみやこめづらしき垣根かきねゆきの、すゞしげなりしをおもいづるとともに、つき見合みあはせしはなまゆはぢてそむけしえりあしうつくしさ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
來年らいねんはこれよりもうつくしい初日はつひをがみたいものだ。』とつた言葉ことば其言葉そのことばかたおぼえてて、其精神そのせいしんあぢはうて、としとも希望きばうあらたにし
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
洋燈らんぷひかり煌々くわう/\かゞやいて、何時いつにか、武骨ぶこつなる水兵等すいへいらが、やさしいこゝろ飾立かざりたてた挿花さしばなや、壁間かべに『歡迎ウエルカム』と巧妙たくみつくられた橄欖かんらんみどりなどを、うつくしくてらしてる。
するとなかから、くもちのぼり、そのくも真中まんなかで、ぱっとったとおもうと、なかから、うつくしいとりして、こえをしてうたいながら、中空なかぞらたかいのぼりました。
下げ萬事一人の計ひなればやしき内の者此平左衞門を恐れ誰一人ことばを返す者もなきゆゑ平左衞門は我儘わがまゝ増長ぞうちやうし其上ならず年に似げなく大の好色者にてお島の容貌かほかたちうつくしきに心をかけがなすきがなお島を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
競馬の馬のたくましくうつくしき優形やさがたと異なりぬ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
うつくしきソフィヤのきみ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さうして二十ねんむかし父母ふぼが、んだいもとためかざつた、あか雛段ひなだん五人囃ごにんばやしと、模樣もやううつくしい干菓子ひぐわしと、それからあまやうから白酒しろざけおもした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わたしは六十になるがこん立派りつぱたことはない。來年らいねんはこれよりもうつくしい初日はつひをがみたいものだ。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
おいとこたへてこめかしをけはかすほどのろさ、くておはらば千歳ちとせうつくしきゆめなかすぎぬべうぞえし。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ラプンツェルは黄金きんばしたような、ながい、うつくしい、頭髪かみってました。魔女まじょこえこえると、少女むすめぐに自分じぶんんだかみほどいて、まど折釘おれくぎきつけて、四十しゃくしたまでらします。
あなたのうつくしい楊貴妃やうきひゆゑに、梅蘭芳メイランフワン
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
うつくしきソフィヤのきみ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
今夜こんやめだ」と云ひはなした儘、代助はそとた。そとはもうくらかつた。うつくしいそらほしがぽつ/\かげして行く様に見えた。心持こゝろもちかぜたもといた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わたしのやうにまはりはこと/″\心得こゝろえちがひばかりで出來上できあがつて、ひとつとして取柄とりえこまものでも、こゝろとしてをかしたつみいほどに、これ此樣このやう可愛かあいらしいうつくしい
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うつくしきアントニオを載せて
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
うつくしすねきむ
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
まへまつり姿なり大層たいそうよく似合にあつて浦山うらやましかつた、わたしをとこだとんなふうがしてたい、れのよりもえたとめられて、なんれなんぞ、おまへこそうつくしいや
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
友達ともだちおほかれ寛濶くわんくわつうらやんだ。宗助そうすけ得意とくいであつた。かれ未來みらいにじやううつくしくかれひとみらした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
きりにながるゝうつくしさ
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
小兒ちごうつくしきさまるべきを、格子かうしそとよりうかゞふに燈火ともしびぼんやりとして障子しようじうるるかげもし、お美尾みを美尾みをよびながらるに、こたへはとなりかたきこえて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「又る。平岡君によろしく」と云つて、代助はおもてた。まちを横断して小路こうぢくだると、あたりは暗くなつた。代助はうつくしいゆめを見た様に、くらつてあるいた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
友仙いうぜんおびぢりめんのおびあげも人手ひとでりずにばしこくめたる姿すがた不圖ふとたるには此樣このやう病人びやうにんともおもるまじきうつくしさ、兩親ふたおや見返みかへりて今更いまさらなみだぐみぬ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
三千代みちようつくしいせんを奇麗に重ねたあざやかな二重瞼ふたへまぶたを持つてゐる。の恰好は細長い方であるが、ひとみを据ゑてじつと物を見るときに、それが何かの具合で大変大きく見える。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
やとおもへばがな一日いちにちごろ/\としてけぶりのやうにくらしてまする、貴孃あなた相變あいかはらずのうつくしさ、奧樣おくさまにおりなされたといたときからそれでも一おがこと出來できるか
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「僕は戸外こぐわいい。あつくもさむくもない、奇麗なそらしたで、うつくしい空気を呼吸して、うつくしい芝居が見たい。透明な空気の様な、純粋で単簡な芝居が出来さうなものだ」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
親類しんるいかほうつくしきもければたしとおもねんもなく、裏屋うらや友達ともだちがもとに今宵こよひ約束やくそく御座ござれば、一まついとまとしていづ春永はるなが頂戴ちやうだい數々かず/\ねがひまする、をりからお目出度めでたき矢先やさき
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其時そのときかれうつくしいやまいろきよみづいろが、最初さいしよほど鮮明せんめいかげ自分じぶんあたま宿やどさないのを物足ものたらずおもはじめた。かれあたゝかなわかいだいて、そのほてりをさまふかみどりへなくなつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
小野をのれならねどおまちうつくしい家内かないいさみて、まちや、まちや、とからわたりぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
をりふしのにはあるきに微塵みぢんきずなきうつくしさをみとめ、れならぬ召使めしつかひにやさしきことばをかけたまふにてもなさけふかきほどられぬ、最初はじめ想像さう/″\には子細しさいらしく珠數じゆすなどを振袖ふりそでなかきかくし
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まつばかりにても見惚みとるゝやうなりとほゝめば、別莊べつさうにはあらず本宅ほんたくにておはすなりとこたふ、これはなしの糸口いとぐちとして、見惚みとたまふはまつばかりならず、うつくしき御主人ごしゆじんこうなりといふ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うつくしいまなじり良人をつとはらをもやはらげれば、可愛かあいらしい口元くちもとからお客樣きやくさまへの世辭せじる、としもねつからきなさらぬにお怜悧りこうなお内儀かみさまとるほどのひとものの、此人このひと此身このみ裏道うらみちはたら
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
れしくるまたしかに香山家かやまけものなりとは、車夫しやふ被布はつぴぬひにもれたり、十七八とえしはうつくしさのゆゑならんが、年齡としごろむすめほかにりともかず、うはさの令孃ひめれならんれなるべし
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
につらき夜半よは置炬燵おきごたつ、それはこひぞかし、吹風ふくかぜすゞしきなつゆふぐれ、ひるのあつさを風呂ふろながして、じまいの姿見すがたみ母親はゝおやづからそゝけがみつくろひて、ながらうつくしきをちて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)