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裏屋
江戸に下り余が家の(京橋南街第一衖)
対ひの
裏屋に住しに、
一日事の
序によりて余が家に来りしより常に
出入して
家僕のやうに
使などさせけるに
卑賤にそだちたる
我身なれば
初めより
此上を
見も
知らで、
世間は
裏屋に
限れるものと
定め、
我家のほかに
天地のなしと
思はゞ、はかなき
思ひに
胸も
燃えじを
まことは藤井屋なり。主人驚きて
簷端傾きたる家の一間払いて居らす。家のつくり、中庭を
囲みて四方に低き楼あり。中庭より直に楼に上るべき
梯かけたるなど西洋の
裏屋の如し。