-
トップ
>
-
別莊
読み方 | 割合 |
べつさう | 87.5% |
べつそう | 12.5% |
夕涼みには
脚の
赤き
蟹も
出で、
目の
光る
鮹も
顯る。
撫子はまだ
早し。
山百合は
香を
留めつ。
月見草は
露ながら
多くは
別莊に
圍はれたり。
松ばかりにても
見惚るゝやうなりとほゝ
笑めば、
否や
別莊にはあらず
本宅にておはすなりと
答ふ、
是を
話しの
糸口として、
見惚れ
給ふは
松ばかりならず、
美くしき
御主人公なりといふ
重ねて
十日半月さては
廿日憂き
身につらき
卯月も
過たり
五月雨ごろのしめり
勝に
軒の
忍艸は
我が
類ひの
引きては
葺かねど
池のあやめの
根ながき
思ひにかき
暮らされて
袖にも
水かさの
増さりやすらん
此處は
別莊の
人氣も
少くなく
氣に
入りの
八重を
罪つくりなれ
我ゆゑに
人二人まで
同じ
思ひにくるしむ
共いざやしら
樫の
若葉の
露かぜに
散る
夕ぐれの
散歩がてら
梨本の
娘病氣にて
別莊に
出養生とや
見舞てやらんとて
柴の
戸おとづれしにお
八重はじめて
對面したり
逢はゞ
云はんの
千言百言うさもつらさも
胸に
呑みて
恩とも
言はず
義理とも
言は