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別莊
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べつさう
夕涼みには
脚の
赤き
蟹も
出で、
目の
光る
鮹も
顯る。
撫子はまだ
早し。
山百合は
香を
留めつ。
月見草は
露ながら
多くは
別莊に
圍はれたり。
松ばかりにても
見惚るゝやうなりとほゝ
笑めば、
否や
別莊にはあらず
本宅にておはすなりと
答ふ、
是を
話しの
糸口として、
見惚れ
給ふは
松ばかりならず、
美くしき
御主人公なりといふ
一昨日の
晩宵の
口に、
其の
松のうらおもてに、ちら/\
灯が
見えたのを、
海濱の
別莊で
花火を
焚くのだといひ、
否、
狐火だともいつた。
男らしく
思ひ
切る
時あきらめてお
金さへ
出來ようならお
力はおろか
小紫でも
揚卷でも
別莊こしらへて
圍うたら
宜うござりましよう、
最うそんな
考へ
事は
止めにして
機嫌よく
御膳あがつて
下され
別莊はずつと
其の
奧の
樹深い
中に
建つて
居るのを、
私は
心づもりに
知つて
居る。
總二階十疊に
八疊の
𢌞り
縁で、
階下は
七間まで
數へて
廣い。
悉い
事は
預るが、
水上さんは、
先月三十一
日に、
鎌倉稻瀬川の
別莊に
遊んだのである。
別莊は
潰れた。
家族の
一人は
下敷に
成んなすつた。が、
無事だつたのである。
雨の
晴れた
朝である。
修善寺の
温泉宿、——
館の
家族の
一婦人と、
家内が
桂川の
一本橋向うの
花畑へ
連立つて、
次手に
同家の
控の
別莊——あき
屋である——を
見せて
貰つた、と
言つて
話した。
唄の
床柱ではないが、
別莊の
庭は、
垣根つゞきに
南天の
林と
云ひたいくらゐ、
一面輝くが
如き
紅顆を
燭して、
水晶の
火のやうださうで、
奧の
濡縁を
先に
古池が
一つ、
中に
平な
苔錆びた
石がある。
嘗て
河陽の
金谷に
別莊を
營むや、
花果、
草樹、
異類の
禽獸一としてあらざるものなし。
時に
武帝の
舅に
王鎧と
云へるものあり。
驕奢を
石崇と
相競ふ。
鎧飴を
以て
釜を
塗れば、
崇は
蝋を
以て
薪とす。