別莊べつさう)” の例文
新字:別荘
夕涼ゆふすゞみにはあしあかかにで、ひかたこあらはる。撫子なでしこはまだはやし。山百合やまゆりめつ。月見草つきみさうつゆながらおほくは別莊べつさうかこはれたり。
松翠深く蒼浪遥けき逗子より (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
まつばかりにても見惚みとるゝやうなりとほゝめば、別莊べつさうにはあらず本宅ほんたくにておはすなりとこたふ、これはなしの糸口いとぐちとして、見惚みとたまふはまつばかりならず、うつくしき御主人ごしゆじんこうなりといふ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一昨日をとつひばんよひくちに、まつのうらおもてに、ちら/\ともしびえたのを、海濱かいひん別莊べつさう花火はなびくのだといひ、いや狐火きつねびだともいつた。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
をとこらしくおもときあきらめておかねさへ出來できようならおりきはおろか小紫こむらさきでも揚卷あげまきでも別莊べつさうこしらへてかこうたらうござりましよう、うそんなかんがごとめにして機嫌きげんよく御膳ごぜんあがつてくだされ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
別莊べつさうはずつとおく樹深きぶかなかつてるのを、わたしこゝろづもりにつてる。總二階そうにかい十疊じふでふ八疊はちでふ𢌞まはえんで、階下かいか七間なゝままでかぞへてひろい。
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くはしことあづかるが、水上みなかみさんは、先月せんげつ三十一にちに、鎌倉かまくら稻瀬川いなせがは別莊べつさうあそんだのである。別莊べつさうつぶれた。家族かぞく一人いちにん下敷したじきんなすつた。が、無事ぶじだつたのである。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あめれたあさである。修善寺しゆぜんじ温泉宿をんせんやど、——くわん家族かぞく一婦人いちふじんと、家内かない桂川かつらがは一本橋いつぽんばしむかうの花畑はなばたけ連立つれだつて、次手ついで同家どうけひかへ別莊べつさう——あきである——をせてもらつた、とつてはなした。
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うた床柱とこばしらではないが、別莊べつさうにはは、垣根かきねつゞきに南天なんてんはやしひたいくらゐ、一面いちめんかゞやくがごと紅顆こうくわともして、水晶すゐしやうのやうださうで、おく濡縁ぬれえんさき古池ふるいけひとつ、なかたひら苔錆こけさびたいしがある。
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かつ河陽かやう金谷きんこく別莊べつさういとなむや、花果くわくわ草樹さうじゆ異類いるゐ禽獸きんじうひとつとしてあらざるものなし。とき武帝ぶていしうと王鎧わうがいへるものあり。驕奢けうしや石崇せきそう相競あひきそふ。がいあめもつかまれば、そうらふもつたきゞとす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)