うつ)” の例文
あるじ夫婦をあはせて焼亡しようぼうせし鰐淵わにぶちが居宅は、さるほど貫一の手にりてその跡に改築せられぬ、有形ありがたよりは小体こていに、質素を旨としたれどもつぱさきの構造をうつしてたがはざらんとつとめしに似たり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さてそのついでに調べると、小栗の譚は日本の史実を本としたものの、西暦二世紀に、チミジア国(今のアルゼリア)の人アプレイウスが書いた、『金驢篇デ・アシノアウレオ』の処々をうつし入れた跡が少なくない。
氷川なる邸内には、唐破風造からはふづくりの昔をうつせるたちと相並びて、帰朝後起せし三層の煉瓦造れんがづくりあやしきまで目慣れぬ式なるは、この殿の数寄すきにて、独逸に名ある古城の面影おもかげしのびてここにかたどれるなりとぞ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)