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虚
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うつ
ふりがな文庫
“
虚
(
うつ
)” の例文
とにかく清逸は大きな声で西山を呼んでしまった。彼は自分の
喉
(
のど
)
から老人のようにしわがれた
虚
(
うつ
)
ろな声の放たれるのを
苦々
(
にがにが
)
しく聞いた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
……なんの色もない、
虚
(
うつ
)
ろな眼であった。彼はまじまじと月心尼の顔を
見戍
(
みまも
)
っていたが、やがて寂しそうに首を振りながら云った。
春いくたび
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ここ、
彼処
(
かしこ
)
に、同じ驚愕と、同じ
虚
(
うつ
)
ろな叫びが聞え出した。すさまじい勢いでぶつけて来たこの山にはすでに人影もなかったのである。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
複雑なものが彼らの胸中に去来していたにちがいないのに、彼らはむしろ
虚
(
うつ
)
ろな表情をしていた。横から朝の陽が
射
(
さ
)
しているのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
こんなことは、みんな私にはつまらないものだつたので、私の
虚
(
うつ
)
ろな心は、小さな飢ゑた一羽の
駒鳥
(
こまどり
)
の姿に、より
生々
(
いき/\
)
と惹きつけられた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
▼ もっと見る
又、萬有のすぐれてめでたき事も
空
(
くう
)
にはあらず又かの
虚
(
うつ
)
ろ
蘆莖
(
あしぐき
)
の
戰
(
そよ
)
ぎも
空
(
くう
)
ならず、
裏海
(
りかい
)
の
濱
(
はま
)
アラルの
麓
(
ふもと
)
なる
古塚
(
ふるづか
)
の上に坐して
頌歌
(旧字旧仮名)
/
ポール・クローデル
(著)
さてうべないし上にて、その
為
(
な
)
しがたきに心づきても、
強
(
し
)
いて当時の心
虚
(
うつ
)
ろなりしをおおい隠し、耐忍してこれを実行することしばしばなり。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
二人とも奥歯に金の義歯を
篏
(
は
)
めていたのですよ。その義歯の中が
虚
(
うつ
)
ろになっていて、強い毒薬が仕込んであったのでしょう。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
技師はそう云って、もう見えはじめた事務所の灯のほうへ、なにかまだ解けきらぬ謎を追い求めるような
虚
(
うつ
)
ろな視線を、ボンヤリ投げ掛るのであった。
坑鬼
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
そして、
虚
(
うつ
)
ろな、笑いをげらげらとやってみたり、ときどき嫌いなヤンへにッと
流眄
(
ながしめ
)
を送ったりする。彼女もだんだん、正気を失いはじめてきたのだ。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
不思議な悲哀感が、私を
襲
(
おそ
)
った。私は、再び吉良兵曹長の方は見ず、
虚
(
うつ
)
ろな
眼
(
まな
)
ざしを卓の上に投げていた。騒ぎはますます激しくなって行くようであった。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
おのぶは腰が抜けたようになって、
虚
(
うつ
)
ろな眼をきょとんと見ひらいたまま、ひと口も物を言わなかった。
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
が咽喉や肺の中がぢいぢいと
虚
(
うつ
)
ろな音を立て、後頭部なぞは、他人のもののやうに無感覚になつてゐた。おまけに鼻汁ばかり流れ出て、汚ならしいつたらなかつた。
現代詩
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
この力ない
虚
(
うつ
)
ろな希望に身も心もまかせ切って、そのおかげでうっとり酔い心地になってしまった。
イオーヌィチ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
虚
(
うつ
)
ろさ、冷たさ、自由のもっている戦慄とでもいうようなものを感じる時、そのうめき、叫び、あるいはそれへの陶酔と驚嘆が、いろいろの芸術となってあらわれてくるのである。
美学入門
(新字新仮名)
/
中井正一
(著)
龍介は
虚
(
うつ
)
ろな気持で天井を見ながら「ばか」声を出してひくく言ってみた。
雪の夜
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
虚
(
うつ
)
ろな
腑
(
ふ
)
抜けのようなぼんやりした状態ながら、同時に激しく何かを
喘
(
あえ
)
ぎ求めて心がヒリヒリしているこの日頃の、どうにも始末のつかない自分の有様をその友人に訴えたところ、——友人に
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
喬之助は、春の野に蝶を追うような様子で、フラフラと
泳
(
およ
)
ぐように、前へ出て来た。パラリ、結び目の解けた手拭の
端
(
はし
)
を口にくわえて、やはり、
右手
(
めて
)
にはだらりと
抜刀
(
ぬきみ
)
を
提
(
さ
)
げている。
虚
(
うつ
)
ろな
表情
(
かお
)
だ。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
野の上の月のありかに霧かかり
虚
(
うつ
)
ろのさまの夕月夜かな
満蒙遊記:附 満蒙の歌
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
はてなく青いあの
虚
(
うつ
)
ろ
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
私は遊離した状態に在る過去を現在と対立させて、その比較の上に個性の座位を造ろうとする
虚
(
うつ
)
ろな企てには
厭
(
あ
)
き果てたのだ。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
なんの感動もない、
虚
(
うつ
)
ろな乾いた声で、……そして表情もそぶりも、同じように無内容な白じらしいものだったのである。
日本婦道記:二十三年
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
遂に生れた土地を去るという——この何かはかなげな思いが胸を暗くするばかりである。女や子供にとってはすべてが
虚
(
うつ
)
ろであった。
茫然
(
ぼうぜん
)
と居すくんでいた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
虚
(
うつ
)
ろに放たれた視線は更に遠くを捕えようとしているらしかった。胸の中に泡立ってたぎり立つものをいきなりねじ伏せると、ふいに宇治は背を向けて小屋の外に歩き出していた。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
元気な言葉だが、
虚
(
うつ
)
ろな声だった。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
虚
(
うつ
)
ろな、咎めるような口調だ。
釘抜藤吉捕物覚書:12 悲願百両
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
乏しい電灯の光の下、
木目
(
きめ
)
の荒れた卓を前にし、吉良兵曹長は軍刀を支えたまま、
虚
(
うつ
)
ろな眼を
凝然
(
ぎょうぜん
)
と壁にそそいでいた。卓の上には湯呑みが
空
(
から
)
のまま、しんと静まりかえっていた。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
何も見ていないような
虚
(
うつ
)
ろな視界に、黒々とした阿賀妻の気組みを読み取った。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
正吉は壁へ
凭
(
もた
)
れたまま
虚
(
うつ
)
ろな眼で
空
(
くう
)
を
覓
(
みつ
)
めていた、——とろんと濁った眼だった、
蒼白
(
あおじろ
)
い紙のように乾いた皮膚、げっそりとこけた頬、
艶
(
つや
)
を失った髪の毛……お紋は
慄然
(
りつぜん
)
として眼を外向けながら
お美津簪
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
男は顔を彼等の方に向けて
虚
(
うつ
)
ろなまなざしを開いていた。唇が僅か動いて乾いた声で何かを言うらしい。何を言っているか判らない。声と言うよりは
咽喉
(
のど
)
から吹いて来る風のような音であった。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
低い
虚
(
うつ
)
ろな笑い声のようなものが、聞えたと思った。私は思わずふり返った。壕を支えた
木組
(
きぐみ
)
によりかかって、背の高い吉良兵曹長の顔は、
蝋
(
ろう
)
のように血の気を失い、仮面に似た無表情であった。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
虚
常用漢字
中学
部首:⾌
11画
“虚”を含む語句
空虚
虚言
虚妄
虚空
虚構
虚偽
虚無
虚弱
虚飾
虚空蔵
虚心
太虚
虚誕
虚無的
虚無僧
虚子
虚僞
虚栄
虚舟
大虚
...