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うる
ふりがな文庫
“
霑
(
うる
)” の例文
「ああ、虹とは……。貴方は何を
仰言
(
おっしゃ
)
るのです」伸子は突然弾ね上げたように身体を起して、涙で
霑
(
うる
)
んだ美しい眼を法水に向けた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
けれどもその黒く
霑
(
うる
)
んだ瞳と、心持ち微笑を含んだ唇が明かに私のこうした妄想を裏切っている事を認めない訳に行かなかった。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
とじりりと膝を寄せて、その時、
颯
(
さっ
)
と薄桃色の
瞼
(
まぶた
)
の
霑
(
うる
)
んだ、冷たい顔が、夜の風に
戦
(
そよ
)
ぐばかり、
蓐
(
しとね
)
の
隈
(
くま
)
に
俤
(
おもかげ
)
立つのを、縁から
明取
(
あかりと
)
りの月影に透かした酒井が
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
分かるも、分からぬも、
観客
(
けんぶつ
)
は口あんごりと心も
空
(
そら
)
に見とれて居る。
平作
(
へいさく
)
は好かった。隣に座って居る彼が
組頭
(
くみがしら
)
の
恵比寿顔
(
えびすがお
)
した爺さんが眼を
霑
(
うる
)
まして見て居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
御米
(
およね
)
は
産後
(
さんご
)
の
蓐中
(
じよくちゆう
)
に
其
(
その
)
始末
(
しまつ
)
を
聞
(
き
)
いて、たゞ
輕
(
かる
)
く
首肯
(
うなづ
)
いたぎり
何
(
なん
)
にも
云
(
い
)
はなかつた。さうして、
疲勞
(
ひらう
)
に
少
(
すこ
)
し
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
んだ
眼
(
め
)
を
霑
(
うる
)
ませて、
長
(
なが
)
い
睫毛
(
まつげ
)
をしきりに
動
(
うご
)
かした。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
口ではこんな荒っぽい事を言いながらも、平次の
霑
(
うる
)
んだ眼は、ガラッ八の純情を感謝しております。
銭形平次捕物控:029 江戸阿呆宮
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
光子さんは、思はず微笑を洩しながら、
霑
(
うる
)
んだ瞳を
睜
(
みは
)
つて凝とその光を瞶めました。
蛍
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
大佐
(
たいさ
)
の
好遇
(
かうぐう
)
にて、
此處
(
こゝ
)
で、
吾等
(
われら
)
は
水兵等
(
すいへいら
)
が
運
(
はこ
)
んで
來
(
き
)
た
珈琲
(
カフヒー
)
に
咽
(
のど
)
を
霑
(
うる
)
ほうし、
漂流
(
へうりう
)
以來
(
いらい
)
大
(
おほい
)
に
渇望
(
かつぼう
)
して
居
(
を
)
つた
葉卷煙葉
(
はまきたばこ
)
も
充分
(
じゆうぶん
)
に
喫
(
す
)
ひ、また
料理方
(
れうりかた
)
の
水兵
(
すいへい
)
の
手製
(
てせい
)
の
由
(
よし
)
で、
極
(
きは
)
めて
形
(
かたち
)
は
不細工
(
ぶさいく
)
ではあるが
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
善男信士輩、
成湯
(
せいとう
)
の徳は禽獣に及びこの女将の仁は蛙を
霑
(
うる
)
おすと評判で大挙して弔いに往ったは事実一抔
啖
(
くわ
)
されたので、予が多く飼うカジカ蛙が水に半ば
泛
(
うか
)
んで死ぬるを見るに皆必ず手を合せて居る。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
彼の視覚は本当にぼんやりと
霑
(
うる
)
んで来た。
クリスマス・カロル
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
読んでゆくうちに、法水の
眼頭
(
めがしら
)
が、じっくと
霑
(
うる
)
んでいった。しばらくは声もなくじっと見つめているのを、検事は醒ますように、がんと肩をたたいた。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
そうしてその大きく
霑
(
うる
)
みを持った黒眼勝ちの眼と、鼻筋の間と、子供のように小さな紅い唇の切れ込みとのどこかに、大
奈翁
(
ナポレオン
)
の肖像画に見るような一種利かぬ気な
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
御米は産後の
蓐中
(
じょくちゅう
)
にその始末を聞いて、ただ軽く
首肯
(
うなず
)
いたぎり何にも云わなかった。そうして、疲労に少し落ち込んだ眼を
霑
(
うる
)
ませて、長い
睫毛
(
まつげ
)
をしきりに動かした。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
火傷した女児の低いうめき声と、其父の涙に
霑
(
うる
)
んだ眼は、いつまでも耳に目にくっついて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
と
口惜
(
くや
)
しく
屹
(
きっ
)
となる処を、酒井の剣幕が
烈
(
はげし
)
いので、
悄
(
しお
)
れて声が
霑
(
うる
)
んだのである。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
涙だけは二人とも
堪
(
こら
)
えたが、二人の眼差は濡れた月のやうに
霑
(
うる
)
むで居た。
喜びと悲しみの熱涙
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
恐らくあの方のうける喝采が、医薬に希望を持てない何万という人達を
霑
(
うる
)
おすことでしょう。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
その葉が大きく上にかぶさる、下に
彳
(
たたず
)
んで
熟
(
じっ
)
と見た、瞳が
霑
(
うる
)
んで
溜息
(
ためいき
)
して
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
見る間に両方の眼は
霑
(
うる
)
むで来た。涙が胸まで込み上げて来た。
月下のマラソン
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
と
吻
(
ほっ
)
と息を
吐
(
つ
)
いたと思うと、声が
霑
(
うる
)
む。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
霑
漢検1級
部首:⾬
16画
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均霑
粟田口霑笛竹