月下のマラソンげっかのマラソン
……去年の春だつた。七郎は一時逆車輪を過つて機械体操からすべり落ち、気を失つた。 ふと吾に返ると沢田が汗みづくになつて自分を背負つてゆく。紅く上気した沢田の頬に桜の花が影を落してゐた。——その儘又沢田の背中で気が遠くなつて、病院の一室に、心 …