空虚からっぽ)” の例文
たとい軽薄とまで行かないでも、こういう巫山戯ふざけ空虚からっぽうな彼の態度は、今の叔母の生活気分とまるでかけ離れたものらしく見えた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
愚痴を並べ、苦情を云っていられるうちは、貧乏の部には入らないという、そのほんとの「空虚からっぽ」が来たのである。
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
けれども私の頭の中は依然として空虚からっぽであった。彼女に関係した記憶は勿論のこと、私自身にいても何一つとして思い出した事も、発見した事もなかった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
渋谷しぶやの美術村は、昼は空虚からっぽだが、夜になるとこうやってみんな暖炉ストーブ物語を始めているようなわけだ。其処そこへ目星を打って来たとはふるっているね。考えてみれば暢気のんきな話さ。
不吉の音と学士会院の鐘 (新字新仮名) / 岩村透(著)
「何もかも取り払われて、屋根裏はもとの通り空虚からっぽな殺風景なものになってしまうのだろう。」
「それゃそうだけど能く頼めば親方だって五円位貸してくれそうなものだ。これを御覧」とお源は空虚からっぽ炭籠すみとりを見せて「炭だってこれだろう。今夜お米を買ったら幾干いくらも残りや仕ない。……」
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ところでその結果何を得たか? こいつを思うと可笑おかしくなる。その結果なんにも得なかったのだ。懺悔! 途方もねえいい言葉さ。もっとも中身は空虚からっぽだが。そこがまた恐ろしくいいところだ。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかしその中には誰もいない 全く空虚からっぽ
鳥料理 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
それでこんな空虚からっぽなのかも知れん……
鳥料理 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
空虚からっぽが彼の心にも蝕んで来た。
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
部落は文字通り空虚からっぽであった。