から)” の例文
「なにが無慈悲ぞ。女房を憐れと思うなら、しらをきるのはよすがいい。ええい面倒な、四の五をいわせず、引っからめろ」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このお浦さえ抑えていたなら、田沼様といえども憚って、左右そうなく自分を討ちもせず、からめとるようなこともあるまいと、そう思ったからであった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
召捕れとて、武士ら十人ばかり、太郎をさきにたててゆく。豊雄、かかる事をもしらでふみ見ゐたるを、武士ら押しかかりて捕ふ。こは何の罪ぞといふをも聞き入れずからめぬ。
「この奥深い所まで、入り込んでまいった不敵なやつ、逃がしては一大事でござる。この有村が引っからめてまいる所存」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるにここに不思議な事には、反徒の頭目由井正雪を駿府の旅宿でからめようとした時だけは、幕府有司のその神速振りが妙にこじれて精彩がなかった。
正雪の遺書 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……よろしい。当県の手勢もあげて、すみやかに、一味をからるようにしてやろう。宋江、すぐ計らいを取りはこべ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はい、お父様は寄り合いで天狗の宮まで参りました。白法師様をからめ取るための相談なのでございましょうよ」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ちょうど、この辺が彼をからめ捕った場所だという所で、駕から出して、行け! という手振りを示してぱなすと
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五人の湯治客が囲炉裡ばたで、片耳のない武士の話をしていると、表戸を蹴開き十数人の捕り方が混み入り「三国峠の権という盗賊この家に潜みおる、からめ取るぞ」
猿ヶ京片耳伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
血まようた平家の衆は、源氏のもの憎しの一図いちずで、およそ、源家の係累けいるいのものと聞けば、婦女子でも、引っからげて、なにかの口実をとって必ず斬りまする
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「床下に何者か忍びおり、話盗み聞きいたしおります! ご家来衆狩り出しからめとりなされ!」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
意外な大事に驚いた幕府は、即刻、六波羅へ秘使を飛ばし、宮方の討幕計画を未然に突いて、その主謀と関係者を、一網打尽にからめ捕れと命じたのだった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すぐに三十郎は馬から飛び下り、菊女を捕え刀をもぎとり、両腕をからめてしまったのである。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
恩師の息子をからげて警固してゆく彼の心には、人知れぬ悩みがあった。道中も、怏々おうおうとしてすぐれない顔いろ。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
恐らく敵国神保帯刀方の、間者が谿谷に分け入ったのをからめ捕ったに相違ない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「けれど、もし、そちたちの手で、事件の一味をからめ捕ったら、これや当然、越前守さまの過去が、白日に出ることになる。……そんな馬鹿をやってどうする」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
目的とするところなのじゃ! ……されば我々の味方なのじゃ! ……その義党の方々を、からめようとするご領主なのじゃ、また紀州の藩士ばらなのじゃ! ……一団となって戦え! 戦え!
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「——参るまいナ。だからわしがからめ捕ってやろうというのだ。人数はらん、一人でもよいが、そうさな、お通さんを加勢に頼もうか、二人で十分にことは足りる」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
場合によってはからめ捕り、検断所の役人へ渡してやろう
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そうでしょう。なにしろ夏侯楙かこうもは魏の駙馬ふばですからね。それだけに彼一名を生擒いけどれば、爾余じよの大将を百人二百人からるにもまさります。よい計はないものでしょうか」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「逃がすな逃がすなからめ取れ!」
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
からめ捕ってから気づいたのは、意外にも、それが城主柳生家厳いえとしの息子であったということです。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うむ、そうか、からめ取れ!」
五右衛門と新左 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
両手をからめあげた上、ギリギリと顔へ猿轡さるぐつわを巻いて、境内の大樹の幹へ縛りつけてしまった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
久作がからめたにせ死人の豪傑こそ、彼が求めていた浅井の猛将遠藤喜左衛門だったのである。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御法規をおそれぬ不埒ふらちな奴、しかも御老中の飼育あそばすお犬様を足蹴になどいたすからには、前例にてらしても、死罪獄門は知れたこと、かられという大騒動とはなった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この中で今、誰やら、暗闇になったのを幸いに、わらわへみだらに戯れたご家来があります。はやく燭をともして、その武将をからめてください。冠の纓の切れている者が下手人です」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あとの人数は、まだ雨露次をこれへ曳いて見えぬな。彼奴をからめて来たら、夫婦をむしろに並べて、泥を吐かしてくれる。——その間、赤子を添えて、観音堂の裏縁にでもつないでおけ」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「近ごろ、わしの恩寵おんちょうれすぎて、図に乗っていた又四郎のやつ。是が非でも引っ捕えて、窮命きゅうめい申しつけねばならん。——もし手抗てむかいなさば討ち取ってもかまわぬ。すぐからめて来い」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あれをからめよ」と手下へ云い捨てて夫人はまたも次の敵へ打ってかかっている。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼に叛気が見えたら即座にからめ捕ってしまえばよかろう——という説に帰着した。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黄泥岡こうでいこうに出没したと聞く七人の棗商人なつめあきゅうど、一人の酒売り、また梁家りょうけの裏切り者、青面獣楊志ようし。それらの悪徒を、一人のこらず、十日以内に、からって、東京とうけい押送おうそうせいとの厳達でおざるぞ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その二人は、素縄で後ろ手にからげたお通を、囚人のように、引っ立てていた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「近隣の者二名、食客二名、雇人三名ほどを、証人として、からめて来ました」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
漆間うるしま八郎右衛門の両人も、左右から力をあわせ、追いつめ追いつめ、扇形おうぎなり空濠からぼりくぼへ、敵が足ふみ外してころげ落ちたので——討つなと、野添の槍を止めて、引っからげて参ったのでござります。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それについてな、宮本村の武蔵を、どうしたら、兵を損ぜずに、かられるか、その講義をこれからわしがしようというのじゃ。これや、貴公の天職に関するな、慎んで聞かずばなるまいて。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御城下のおきてとして、不審の者は、見当り次第、からめて、問注所もんちゅうじょへ突き出す定めになっておる。明らかにせねば、不愍ふびんでも、役所へ引き渡すぞ。証立あかしだてのため、その母の手紙とかを、これへ見せい
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、二人の将を、立ちどころにからめて、その首を刎ねてしまった。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、あのお十夜の奴だけは、ここで逢ったのを幸いに、からめて代官所へでも預けてやろうと思ったのに、旦那も人が悪いや、あの時、ちょッと手を貸してくれれば、きっとうまくいったんですぜ
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
沙汰人や地侍たちで力をあわせ、からってつき出すもよろしい。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「綿竹関第一の勇将李厳りげんを、お味方の魏延ぎえんからめ捕りました」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「武蔵をからめ捕った上の処分は、この沢庵にまかすことだ」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
木戸の者、木戸の者っ。たったいま敵国の使臣斎藤下野、黒川大隅おおすみ、その余の者が、御城下の使館から逃亡いたした。——よもや通しはいたすまいな。これへ来たら、からるのだ。汝らも物の具とって、ここを
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この朝、ぞくぞくからめられて来た人間で埋まった。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、からげてみると、刑部は、舌を噛んでいた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
のがさぬようにからめ上げて屋敷へ引っ立てい
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうか。……いや、よくからめて来た」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「申したな。かられこの者をッ」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、高手小手にからめてしまった。
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それっ、からめろ!」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)