から)” の例文
「それも黙っていればいのに、お礼の序に、『しかしあれは案外からいものだね』と正直なところを言ったので、今に逸話が残っている」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
五分間かからんでワッフルが一度に四つ出来る。一つ食べてみ給え、極く淡泊な味だろう。甘くもからくも好き自由になる。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
人間の罪をひとりに引受けた孤獨の老僧と見立てるにれよ、祈念きねんつとめるにれの木、潮風はゴモラびとの涙よりからい。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
しかし、その冷たい湿っぽい感覚が、私の肺臓にずうんとしみわたりました。逃れるのはいま——私は、からっぽい両に汗を浮かべて、病を装おうと決心しました。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そは猴ども互いにしばしば毛を探り合うからだが、それにしても猴が毛を探って何か取り食うは多くは蚤でなくて、時々皮膚の細孔から出るからき排出物の細塊であると。
河は迂回うくわいして海にそそいでゐるので、そはの下では甘い水とからい水とが出合つてゐるのである。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
病気の為に信心して幸にゆれば平気で暴利をむさぼって居る者もある。信徒の労力を吸ってえて居る教師もある。然しこのせちからい世の中に、人知れず美しい心の花を咲かす者も随処ずいしょにある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
然し流石さすがに才女で、世の中のからいも酸いも味わい知っていた人であった。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それは、からい、冷たい二筋の涙であった。
海流 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
 捲きかへるこころのから
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
○味噌は上等のから味噌にて蛋白質壱割五分四厘、脂肪五分九厘四毛、含水炭素壱割一分三厘、繊維四分七厘二毛、鉱物質壱割四分、余は水分なり。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
川水牛角なきをあやしみ訳を聞いて貰い泣きしてその水からくなる、杜鵑ほととぎす来り訳を聞き悲しみの余り眼をつぶし商店に止まって哭き、店主貰い泣きして失心す、ところへ王の婢来り鬱金うこんを求めると胡椒
その外に色の濃いのとうすいのとありますが濃いのは醸造じょうぞうの時高い温度を与えたので、その代り香気が幾分か減じます。味といってもからうちに一種の甘味がなければなりません。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それから皮をいて短冊たんざくに切って鰹節かつぶし煮汁だしと醤油と味淋とで少しからい位に下煮をします。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
こうして二時間ほど煮て中の品物がんなよく煮えたと思う時お醤油したじを少し注してまた一時間ほど煮て火からおろすがお醤油はなるべくすくない位に入れないと味がからくなり過ぎて困るよ。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)