から)” の例文
そこへ行くと詩学の造詣に於て、森槐南なんぞは、日本一を通り越して、から一だから豪勢なもんさ、ああなると道庵も降参するよ——
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
からにしかいない恐ろしい獣の形とかを描く人は、勝手ほうだいに誇張したもので人を驚かせて、それは実際に遠くてもそれで通ります。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
唐制に模して位階も定め、服色も定め、年号も定め置き、からぶりたる冠衣かんいけ候とも、日本人が組織したる政府は日本政府と可申候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
からには、蜀江しよくかうとて、にしきを洗ふ所と、詩歌にも作るところあり。日本ひのもとのすのまたなどのやうに広く、いかめしう人も通はぬ大川たいせんなり。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
からの色刷りを模して版木に見当をつけることを工夫し、はじめて四度刷り五度ずりの彩色版画を作ったところが、時人こぞって賞讃し
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ところ惣領そうりやう甚六じんろくで、三男さんなんが、三代目さんだいめからやうとには、いまはじまつたことではなけれど、おやたちの迷惑めいわくが、はゞかりながら思遣おもひやられる。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
から天竺日本にあらとあらゆる阿修羅の眷族けんぞくを、一つところに封じ籠めて、夜な夜なかたきを呪うて居りまするぞ。やがてその奇特きどくを……。
平家蟹 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
地質は多分塩瀬しおぜであろう、表は上の方へ紅地に白く八重梅やえうめもんを抜き、下の方にから美人が高楼にして琴をだんじている図がある。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「何しろ荘左衛門という人は、町人のくせに学問が好きで、小唄も将棋しょうぎもやらないかわりに、四角な文字を読んで、から都々逸どどいつを作った」
芝居を見るには夫で沢山だと考へて、からめいた装束や背景を眺めてゐた。然しすぢはちつともわからなかつた。其うち幕になつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
座頭ざがしら太夫はもと船頭で、からの国へ漂流いたし、その節この玉乗りを習い覚えて帰ったとかいううわさじゃが、まさかにうそではあるまいな」
お馬のジヤンコジヤンコもおもしろいでせう。それにまた、「そりやまだわかい。若船わかぶねつて、からまでわたれ。」(紀伊)といふのもあります。
お月さまいくつ (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「たとえ、日本国中、いいえ、から天竺てんじくに身のおきどころがなくなっても、わたしは少しもいといませぬ。そなたさえ、側にいて下されば——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
もし世間の笑いものになって、ここで生きて行かれぬというなら、から天竺てんじくはてまでも、いっしょに行く気でおりますわいな
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
(中略。)出府にても何も別段之事も無之、先旧習は追々脱し候様には候へども、とかく日本とから好きにて、中々不相易あひかはらず一寸も引けは取不申候。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
それは内、国家を統一し、外、国力をから天竺てんじくにまでも示し、日本が世界の美の鎔鉱炉ようこうろであることを千幾百年の古しえ、世に示そうとされたのである。
美の日本的源泉 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
早い話が八犬伝は、手もなく水滸伝すいこでんの引き写しじゃげえせんか。が、そりゃまあ大目に見ても、いい筋がありやす。なにしろ先がからの物でげしょう。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
八幡様や太閤様の朝鮮征伐、から天竺てんじくの交通のカナメ処になって、外国をピリピリさせていた名所旧跡は、みんな博多を中心まんなかにして取囲んでいるんだ。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
異体えたいの知れないから天竺てんじくの神様でも、神様とあれば頭の一度や二度ぐらゐいつでも下げるに躊躇しない代りには、先祖代々の信心にもそれほど執着してゐない。
土手は春の草をまとうて、からにしきの枕のように柔らかだった。二人は冷たい草に素足をこころよくあてた。
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
島のなかほどのところに、岩の柱がいくつか背伸びをし、南画にあるからの山にそっくりであった。ときどき噴火があるのらしく、丸い峯の頂きに赤錆あかさびがついている。
藤九郎の島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
孝経こうきょうにはどうあるとか、心学ではこううたっているとか、からのたれそれはどうしたとか、読んだとも聞き覚えたともわからない話や、妙な歌などをむやみに並べたて
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
さるにても、自分は、からまで聞えた秀吉公の御子息から、此上なく頼まれている上に、今また将軍家から、そんな話があるなど、日本一の武士と云うのは自分の事だろう
大阪夏之陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
何咎なにとがもないこの私を、理由も仰せられず勘当とは、から天竺てんじくにもござりませぬ。勘当遊ばすなら遊ばすよう、その訳をどうぞこの私に、お話しなされてくださりませ!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
高岳たかおか親王——仏門に入られてからは、真如しんにょ法親王とよばれた方が、天竺てんじく(インド)に渡って仏教を研究されるためにから(支那)の広州の港から、船で天竺に向われ、途中
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
いやいやれは嘘ぢやらうわ。わしが今日見た地獄の機関からくりより、もつと面白いものはから天竺にも決しておぢやらぬわ。……何、秋でも冬でも牡丹の花が咲いておぢやるてや。え。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
庄「昨夜ゆうべから大分暖かになりましたから、余程南へ流されて来たにちげえねえ、何しろ新潟の河岸かしを離れてから昼夜三日目、事にったらからまで流されて来たかも知れねえなア」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
やまぶきはからめかぬ花なり。籬にしたるは、卯の花とおもむき異にして、ゆかしさ同じ。八重ざきの黄なる殊に美し。あてなる女の髪黒く面白きが、此の花をかざしにしたる、いと美はし。
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
話によるとこの竹の苗は奈良朝の初期にからの国から移植されたものらしいんだが、三百年足らずの間にどうだ、この東の国の一劃いっかくにも、このように幽麗な叢林そうりんを形成してしまったのだ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
からつきりんなそでのぺら/\した、おそろしいながものまくあげるのだからね、うなれば來年らいねんから横町よこちやうおもてのこらずおまへ手下てしただよとそやすに、してれ二せんもらふと長吉ちやうきちくみるだらう
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この願いお聞き届けなくば、われら一門、故国を後に、から天竺てんじくまでも三種の神器と共に渡るつもりにござります。さすれば我が国神代の霊宝も、ついに異国の宝となろうかも知れませぬ。
世を忘れ人を離れて父子おやこただ二人名残なごりの遊びをなす今日このごろは、せめて小供の昔にかえりて、物見遊山ものみゆさんもわれから進み、やがて消ゆべき空蝉うつせみの身には要なきから織り物も、末はいもと紀念かたみの品と
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
ふつふつたる香りにばかりあおられていると酔ったとも酔わぬとも名状もなしがたい、前世にでもいただいたから天竺てんじくのおみきの酔いがいまごろになっていて来たかのような、まことに有り難いような
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
福寿草などのからめいた盛花もりばなが、枝も豊かに飾られてあった。
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ここのうちへばかり因縁を付けに来たって仕様がない。おまえさんも国姓爺を勤める役者だ。から天竺てんじくまで渡って探して歩いたらいいでしょう
半七捕物帳:54 唐人飴 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「何しろ莊左衞門といふ人は、町人のくせに學問が好きで、小唄も將棋しやうぎもやらないかはりに、四角な文字を讀んで、から都々逸どゞいつを作つた」
唐制にして位階も定め服色も定め年号も定めおきからぶりたる冠衣かんいけ候とも日本人が組織したる政府は日本政府と可申候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
芝居を見るにはそれでたくさんだと考えて、からめいた装束しょうぞくや背景をながめていた。しかし筋はちっともわからなかった。そのうち幕になった。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こときふにして掩避おほひさくるに不及およばず諸客しよきやくこれて、(無不掩口くちをおほはざるはなし。)からでは、こんなとき無不掩口くちをおほはざるはなし。)だとえる。てうにてはうするか、未考いまだかんがへずである。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
命婦みょうぶは贈られた物を御前おまえへ並べた。これがからの幻術師が他界の楊貴妃ようきひって得て来た玉のかざしであったらと、帝はかいないこともお思いになった。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
人の掛合いや兼合いでは、京大阪へ出ようと、から天竺てんじくへ出ようと、引けは取らないお角さんだが、字学の方にかけると、気が引けてどうにもならない。
花頂山かちょうざんのいただきも、粟田山も、如意ヶ岳も、三十六峰はから織女おりめった天平錦てんぴょうにしきのように紅葉もみじが照り映えていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なにとぞ、チョビ安大明神、ところてんじくからから日本の神々さま、あっしを助けるとおぼしめして——」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「なに、天竺……? 天竺と申せばからの向こうの国じゃが、どなたにそのような知恵をつけられました」
十手てえものはからの陳先生てえ達人が本朝に伝えた南蛮渡来の術だが、オレのはヤワラの手に心学の極意も加えて、タマシイを入れたものだ。生れつきがなくちゃダメだぜ。
わたしのような、こぎゃん不幸者はから天竺てんじくまで捜したッてまたとあろうたア思われまッせん。
大加羅国は、現在の慶尚けいしやう南道に在つた国であるが、日本が接触した最初の外国であるから、日本人はカラと云ふ名をその後外国の総称に使ひ、支那大陸までからと云つたのであらう。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
からめいた冥官めうくわんたちの衣裳が、點々と黄や藍を綴つて居ります外は、どこを見ても烈々とした火焔の色で、その中をまるで卍のやうに、墨を飛ばした黒煙と金粉を煽つた火の粉とが
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
無理や無体に引擦り込まれて。タタキ込まれるキチガイ地獄じゃ。しかもよくよく調べてみますと。から天竺てんじく、西洋あたりに。ズラリ並んだ大建築だよ。チャカポコチャカポコ……
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それはから狻猊さんげいか何かの、黄金色きんだの翠色みどりだのの美しくいろえ造られたものだった。畳に置かれた白々しろじろとした紙の上に、小さな宝玩ほうがんは其の貴い輝きを煥発かんぱつした。女は其前に平伏ひれふしていた。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)