トップ
>
滓
>
かす
ふりがな文庫
“
滓
(
かす
)” の例文
吾輩が
臓腑
(
はらわた
)
のドン底の
屁
(
へ
)
ッ
滓
(
かす
)
の出るところまで
饒舌
(
しゃべ
)
り尽してしまっても、わかったのか、わからないのかマルッキリ見当が付かない。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
例えば、モリエールの作品は、読んで了った後に人生の
滓
(
かす
)
が残る。「ユーモア小説」は読後に何んにも残らなくてこそいいのである。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
腦髓は煑沸し盡し唯僅かに頭蓋の底部に
檸檬
(
れもん
)
大ほどの小さな
滓
(
かす
)
の塊が殘つてゐた。それはカリ/\になつてゐて觸れるとまだ温かつた。
無法な火葬
(旧字旧仮名)
/
小泉八雲
(著)
壁には油絵や、金縁の写真などが懸けられ、床には家具やピヤノが置いてあって、暖炉棚の下からは、燃え
滓
(
かす
)
や
煤
(
すす
)
の
臭
(
にお
)
いがぷんと来た。
空家
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
焚木
(
たきぎ
)
としてこれほどのものはなかろう。
烈々
(
れつれつ
)
として燃え
滓
(
かす
)
ひとつ残らないという。
河畔
(
かはん
)
の貧しい生活者にもこうした天与の恩恵はある。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
▼ もっと見る
日によって庭にはどうかすると、砲兵工廠から来る煙が
漲
(
みなぎ
)
り込んで、石炭
滓
(
かす
)
が寒い風に吹き寄せられて縁の板敷きに舞っていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
鼻の孔から嗅煙草の
滓
(
かす
)
が、まるで濃い珈琲の
雫
(
しず
)
くみたいに甚だ不体裁に、にょろりと覗いたことも、また部屋着の前がはだけて
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
山形県の東田川郡でも、米や
蕎麦
(
そば
)
の粉の篩の
滓
(
かす
)
がサナゴ(土の香一六巻三号)、上総の
一宮
(
いちのみや
)
辺でも豆の粉を挽いた残りの滓がサナゴである。
食料名彙
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
飲んでしまうと、茶碗の底に
滓
(
かす
)
が沢山
淀
(
よど
)
んでいる。木村は茶を飲んでしまうと、相変らずゆっくり構えて、絶間なくこつこつと
為事
(
しごと
)
をする。
あそび
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
その
滓
(
かす
)
までも絞り抜いてでもしまいそうな、おそらく現実の醜さとして、それが極端であろうと思われるものがそこにあった。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
全く思いがけないもので何だかわたくしの身体に融け入って来る
和
(
なご
)
やかなものがありながら、それはもう父の
茹
(
ゆで
)
り枯しの
滓
(
かす
)
で
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「よく噛んで、よい質は胃に
摂
(
と
)
り入れ、
滓
(
かす
)
は吐き出してしまうことだ。それを四民が心得ておりさえすれば、何を舶載しようと仔細はない」
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私とその淵との間に在るのは、たゞ、私の自尊心の殘り
滓
(
かす
)
だけでした。世間の眼にはきつと私は、恐ろしい恥辱を蒙つてゐると見えたでせう。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
というよりも、ほろびゆく江戸の
滓
(
かす
)
でそれがあったのかも知れない。私はただ忠実に、私の幼少な眼にうつった町の人を記して見るにすぎない。
旧聞日本橋:01 序文/自序
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
、
長谷川時雨
(著)
眠元朗は心で、全くそれにちがいない、おれは娘を人にわたすことができない、と、呟いて見たが、なぜかいまわしい感じが
滓
(
かす
)
のように残った。
みずうみ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「理由は
簡単
(
てみじか
)
です、あの人が大学の総長だつたからです。」
商人
(
あきんど
)
は口に入れてゐた
噛
(
しが
)
み
護謨
(
ごむ
)
の
滓
(
かす
)
をペツと床に吐き出した。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
で、申しますには「
此器
(
これ
)
はごく
清浄
(
しょうじょう
)
です。夜前あなたが
喫
(
あが
)
ったのですから」と言ってバタ
滓
(
かす
)
の茶碗の縁に付いてあるのをそのまま
侑
(
すす
)
めるのです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
そしてこの浅ましい行為によってお前は本当の人間の生活を阻害し、生命のない生活の残り
滓
(
かす
)
を、いやが上に人生の路上に
塵芥
(
じんかい
)
として積み上げるのだ。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
父さんも、大たい似たようなことを考えてはいたが、どこかにまだ
滓
(
かす
)
みたようなものがこびりついていたようだ。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
あなたの妹さんに関する物語も、すっかり
滓
(
かす
)
も残らないほどおさらいしてしまった。で、
妻
(
さい
)
はもう三日も家にくすぶっていなけりゃならなかったんです。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
それで急いで袋を縦に切り開いて見ると、はたして袋の底に
滓
(
かす
)
のようになった簔虫の
遺骸
(
いがい
)
の片々が残っていた。
簔虫と蜘蛛
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
されど此間我胸中には、猶少しの寺院教育の
滓
(
かす
)
殘り居たれば、我も何となく自ら
安
(
やすん
)
ぜざる如き思をなすことありき。我はをり/\此滓のために
戒
(
いまし
)
められき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
労働者は夜それを見つめて、一日のうちに自分の身にこびりついた
滓
(
かす
)
と土臭さからわが思いを清めるのである。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
「いや、——濟まないが寅松親分に頼まう。殘つた煎藥と、それから昨夜呑んだ煎じ
滓
(
かす
)
と鍋と、湯呑と——」
銭形平次捕物控:212 妹の扱帯
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
無暗に窓から乗り出す
所為
(
せい
)
だろうか、それとも石炭の燃え
滓
(
かす
)
という奴は特に子供の目が好きなのだろうか?
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
だし汁を取るとき、煮だした鶏骨に僅かにしがみついてゐる肉
滓
(
かす
)
に似て、それよりも無味である。恰も、誤つて汁のなかへ混入した木片を
噛
(
か
)
むやうなものであつた。
たぬき汁
(新字旧仮名)
/
佐藤垢石
(著)
終日そこで煮られていた人間の
蒸煮肉
(
シチュー
)
の最後の
滓
(
かす
)
が濾し取られている時に、マネット医師と、その娘のリューシー・マネットと、被告人の弁護の依頼者のロリー氏と
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
また、さうした人生の
滓
(
かす
)
が体と心とに一杯につまつてゐるがために、其書くものがいつも生々躍動の趣を失つて、常に抽象的になつて行くのであるといふことが出来る。
作者の言葉
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
咽
(
のど
)
が渇くと栗番小屋の側の梨畑から採って来た梨を、皮も
脱
(
む
)
かずに、
滓
(
かす
)
ぐるみ呑み込んでしまう。そしてまた地上にごろりと寝そべって木の間から漏れる雲間を眺める。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
この電気を起した残り
滓
(
かす
)
の水は、年中水位の変らぬ河となっているので、ロスアンゼルスへ水道をひいたのと同じように、イムピリアル平原にも灌漑水をひくことに成功した。
アメリカの沙漠
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
一寸
(
ちよつと
)
話題
(
わだい
)
には
成
(
な
)
らうと
思
(
おも
)
ふ、
武生
(
たけふ
)
から
其
(
そ
)
の
道程
(
みちのり
)
、
實
(
じつ
)
に
二十七里
(
にじふしちり
)
である。——
深川
(
ふかがは
)
の
俥
(
くるま
)
は
永代
(
えいたい
)
を
越
(
こ
)
さないのを
他
(
た
)
に
見得
(
みえ
)
にする……と
云
(
い
)
つたもので、
上澄
(
うはずみ
)
のいゝ
處
(
ところ
)
を
吸
(
す
)
つて
滓
(
かす
)
を
讓
(
ゆづ
)
る。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
心持はしーんとしてしまって
滓
(
かす
)
のないような工合だし、着物はすっかり新調して上げてしまってあるし、お金のことまで打ち合わせたりしてあったし、いやに準備ととのっている。
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
転身の彼が、新しい熱意と、より高い希望で、
滓
(
かす
)
のような思い出の多かった代田町一三八番地のその家を越したのは、もうギブスもとれ、痛みもすっかり去った夏のはじめだった。
風
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
灯火のしんに
滓
(
かす
)
がたまれば誰か来る。油と灯心とが入っている浅い皿は、別の皿によって支えられるのだが、滓を下方の皿に入れることが出来れば、来訪者は贈物を持って来る
*
。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
さう言つて了つて口を噤むと、何がなしに焦々した不愉快な氣持が
滓
(
かす
)
の樣に殘る。恰度何か拙い物を食つた後の樣だ。そして其の後では、もう如何な話も何時もの樣に興を引かない。
硝子窓
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
楽しみをした
滓
(
かす
)
だから何の惜気もない——といって神尾主膳を
煙
(
けむ
)
に捲きました。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そのとき人がになわせられるものは、苦難や疲れた経験や裏切られた知能と愛情など、過去の大なる重荷である——古来の生活の大
桶
(
おけ
)
である。桶の底には、
倦怠
(
けんたい
)
の
苛辣
(
からつ
)
な
滓
(
かす
)
がたまっている……。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
現実が幻滅というにがい
滓
(
かす
)
を伴わずに、私の偉大な予感に溶け込んでしまうような、そういう解放された生活のことを夢想するだけならね。水平線なんぞなくなってしまった生活のことをですね。
幻滅
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
いつも紅茶の
滓
(
かす
)
が溜っているピクニック用の湯沸器。
帙
(
ちつ
)
と離ればなれに
転
(
ころが
)
っている本の類。紙切れ。そしてそんなものを押しわけて敷かれている蒲団。喬はそんななかで
青鷺
(
あおさぎ
)
のように昼は寝ていた。
ある心の風景
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
それにしてもそれは彼自身の愚かな気持の
滓
(
かす
)
であって、事を暴露する爪の
垢
(
あか
)
ほどのききめにもならないことは、考え惑うことが子供じみているだけに、聞く人にとっては実につまらないことであった。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
煙のようになくなって、たゞ苦い苦い
憎悪
(
ぞうお
)
の
滓
(
かす
)
丈が、残っていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
午飯、
卯
(
う
)
の
花鮓
(
はなずし
)
。豆腐
滓
(
かす
)
に魚肉をすりまぜたるなりとぞ。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
脆
(
もろ
)
き廃物……薄き
滓
(
かす
)
……
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
そいつは
滓
(
かす
)
だ
ある日
(新字新仮名)
/
陀田勘助
(著)
湯葉を竹にかける時、竹につく
滓
(
かす
)
の厚く、固くなって、竹のかたのついた奴である。私が、骨屋町へ無くなると買いに行った。
死までを語る
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
駱駝
(
らくだ
)
の脚の下にむなしく砂が踏まれていると思うような日が幾日も続いた。太陽だけが日に一つずつ空に燃えて
滓
(
かす
)
になった。
百喩経
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
津島はさく子に移されて行つた不快が、まだ
滓
(
かす
)
のやうに腹に残つてゐたので、さうしたさく子の調子が、
忽
(
たちま
)
ち逆上性の神経を
苛立
(
いらだ
)
たせてしまつた。
風呂桶
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
その麹の中へ水を汲み込みそれをよく攪ぜて置き、そうしてその
上澄
(
うわずみ
)
からだんだん汲んで行くもあれば、またその
滓
(
かす
)
を絞り取って汁だけ売るのもある。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
おまけに蝋燭の
滓
(
かす
)
が一面にこびりついた、粗末ながらくた同様の銅の燭台が置いてあっても、主人をはじめ、主婦も、召使たちも、一向それを異としない。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
この特権を捨てて、そのあとに残されるものは、捨てるにさえ値しない枯れさびれた残り
滓
(
かす
)
のみではないか。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
“滓(かす)”の解説
かす(滓、糟、粕、残渣)は、原料となる液体や固体などから目的の成分を取り除いた後に残る不純物やあまりの部分。絞り残りなど。転じて、良い部分を取り去って後に残った不用の部分。劣等なもの。つまらぬもの。
(出典:Wikipedia)
滓
漢検1級
部首:⽔
13画
“滓”を含む語句
残滓
鉱滓
渣滓
燃滓
殘滓
茶滓
豆滓
油滓
胡麻滓
滓湯酒
塵滓
豆腐滓
酒滓
豆府滓
金滓
藍滓
蕎麦滓
茶滓漉
銕滓
食滓
...