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賣切
手傳などするにぞ夫婦は大に
悦び
餠類は毎日々々
賣切て歸れば今は
店にて賣より寶澤が
外にて
商ふ方が多き程になり夫婦は
宜者を
葱の
香の
小川に
流れ、とばかりにて
句にはならざりしが、あゝ、もうちつとで
思ふこといはぬは
腹ふくるゝ
業よといへば、いま
一足早かりせば、
笹の
雪が
賣切にて
腹ふくれぬ
事よといふ。
その
佃煮に
駈けつけた
時は……
先刻に
見着けた
少しばかりの
罐詰も、それも
此も
賣切れて
何にもなかつた。
山北、
山北。——
鮎の
鮓は——
賣切れ。……お
茶も。——もうない。それも
佗しかつた。