以前さき)” の例文
ロミオ なう、しかってくださるな。此度こんどをんなは、此方こちおもへば、彼方あちでもおもひ、此方こちしたへば、彼方あちでもしたふ。以前さきのはさうでかった。
わが用ゐし言葉は、ネムブロットのやからがかの成し終へ難きわざを試みしその時よりも久しき以前さきに悉く絶えにき 一二四—一二六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
矢よりもはや漕寄こぎよせた、同じわらべを押して、より幼き他のちごと、親船に寝た以前さきの船頭、三体ともに船にり。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
以前さきいきおいに似もやらで、婦人おんなは少しくしおれしてい、袖を重ねて俯向うつむきたり。おもうに博学多才なる深川夫人が慈善会を代表して、かれが暴行を戒めしに、屈服したりしものならんか。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
印の墓石はいまだ立てることは出来ないけれども、出来る時だけは欠かさないで参詣さんけいする、梓がなかった以前さきは、ただその墓に取縋とりすがることばかりがこの上もないたのしみであった。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しおはいると、さて、さすがにれずには越せないから、此処ここにも一つ、——以前さきの橋とはあわいけんとはへだたらぬに、また橋を渡してある。これはまた、わずかに板を持って来て、投げたにすぎぬ。
海の使者 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これより以前さき得三が人形室を走り出でて声する者を追いける時、室の外より得三と入違いりちがいに、鳥のごとくに飛び込む者あり。突然下枝の被を外してこれを人形に被らせつ。その身は日蔽ひおおいの影に潜みぬ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)