さき)” の例文
さきよりこの一群に、着きつ、離れつ随ひ来れる油売、実は伊留満いるまん喜三郎、油桶は持たで、青き頭巾かぶれる。叱咤せられ、袖かざしてすさる。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
さきにも述べた通り、様々な工藝の中で最も吾々の日常生活に深い交りをつものは民藝です。民藝こそは国民生活の一番偽りなき反映なのです。
美の国と民芸 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
紫衣褫奪事件とは、——さきに家康は、京都の大徳、妙心両寺に厳命して幕閣の裁可を経ずしてみだりに出世し、紫衣を用いることを堅く禁じた。(元和御法度書——元和元年)
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さきに行為の性質を論じた時にいったように、その根柢には先天的要求(意識の素因)なる者があって、意識の上には目的観念として現われ、これによりて意識の統一するにあるのである。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
然るに昨四十四年秋に至つて、周囲及び当事者間の試合復活の熱望は極点に達し、早大から数回目の挑戦に接して、漸く慶軍運動各部委員会は復活の前提として、さきに学祖福沢先生の墳墓に誓つた。
さきに城門の敗戦やぶれに桃太郎と亘合わたりあわせ
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
菊枝 何とたはけた事をいふ人ぢや。妾はさきから、まことか、真かと聞いておぢやつたのに。おとましいことぢや。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
さきにも述べた通り、近世は驚くべき雑多な美を産みました。そうして何か変ったものを求める結果、ついには極端な異常なものに美を見出そうとしました。そうしてしばしば病的なものに陥りました。
民芸の性質 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
はやれども、さき城門じやうもん
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
妹の順礼 そやつてんねや。さきからまだ一里とも来やせぬわ。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)