さき)” の例文
死骸しがいはその日終日ひねもす見当らなかったが、翌日しらしらあけの引潮ひきしおに、去年の夏、庵室あんじつの客が溺れたとおなじ鳴鶴なきつるさきの岩にあがった時は二人であった。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし、これを裏へ出れば屏風びょうぶうらとなり、遠からずして犬吠いぬぼうさきがあり、銚子の港がある。銚子の港の前面には、利根の長江がさえぎっているから、まさかそれをよこぎるほどのことはあるまい。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大日輪落ちつきはらひ伊豆のさき天城山あまぎやまへとかかりけるかも
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しばらくして、その半眼はんがんに閉じた目は、斜めに鳴鶴なきつるさきまで線を引いて、その半ばと思う点へ、ひらひらと燃え立つような、不知火しらぬいにはっきり覚めた。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夕かげはくが岬々さきざき嶋のさきとほながく見て高度かうど行くなり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)