先端さき)” の例文
杉本は顔をしかめてタオルに安香水を振り蒔き、そいつをマスクにして頭の後でキリッと結ぶとゴムの水管ホース先端さきを持って
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
噛み砕いた鉛筆の末端の様に、先端さきのほうけたステッキに、小さな風呂敷を結えつけて、それを肩にひっ担いでいた。
放浪の宿 (新字新仮名) / 里村欣三(著)
長範をば討って棄て、血刀ちがたな提げて呼吸いきつくさまする、額には振分たる後毛おくれげ先端さき少しかかれり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先端さきを筒形に卷いた紙の羽根を附けたのを入れて、人間の息で五間も十間も先へ飛ばす吹矢は、徳川時代には鐵砲や弓矢に次ぐ恐ろしい飛道具で、もと/\小鳥を捕つたり
あっけにとられた守の前に、見る見る、闇にも光る一丈程の銀色の竿さおが出来上った。竿の先端さきには、股になった金属のつのが生えている。それが指の代理を勤めようという訳だ。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もちろん、距離に比例して穴は大きく、先端さきの鋭鈍いかんにも、関係はあるがね。しかしこの機械錐ドリルでは、針先ほどの孔が当然だと云いたい。どうだ、君か、それとも女将おかみ、君か。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
欣之介のゐる離家はなれの横手にある灰汁柴あくしばの枝々の先端さきへ小さな粒々の白い花が咲き出した頃の或る日暮方、革紐かはひもで堅くゆはへた白いズックのかばんが一つ、その灰汁柴の藪蔭やぶかげに置いてあつた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
三角の尻尾の先端さきゆ濁る水のまだしたゝりて河馬は動かず
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
そして、ながえじつとその先端さきを地に著けてゐる。
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
あの岬は鳥喰崎とりくいざきと呼ばれていますが、あの先端さきの向う側が、一寸鉤形に曲っていて、そこに小さなよどみと云いますか、入江になった吹き溜りがあります。
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
禿頭の先端さきンがった、あから顔の五十男が、恐ろしく憂鬱な表情かおをしながら、盛んに木の葉を乾かした奴を薬研やげんでゴリゴリこなしていましたが、助役の註文を受けると
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)