さき)” の例文
向年より五々の暦数に及んで日域に一人の善童出生し不習に諸道に達し顕然たるべし、しかるに東西雲焼し枯木不時の花さき諸人の頭にクルスを
島原の乱雑記 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
朝のお食事を軽くすましてから、私は、焼けた薪の山の整理にとりかかっていると、この村でたった一軒の宿屋のおかみさんであるおさきさんが
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
器用に腕をみながら、五番の客が変なことを言うからおさきちゃんに代ってもらっていいことをしたという言葉を聴いて
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「居ないのかしら。……それに、おさきひとりで留守をしているという尼寺あまでらが、こんな大きなお寺なのかね? ……」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
年の内とは言いながら梅もさき鶯も鳴くかと思われる程。猫まで浮れて出て行きました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
木蔭には野生の雛罌粟ひなげし其他そのたの草花がたけ高くさき乱れて、山鳩のむれが馬蹄の音にも驚かずにりて居る。フツクと云ふ家は何となく東京の王子の扇屋あふぎや聯想れんさうさせる田舎の料理屋レスタウランである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
くもあめもものかは。辻々つじ/\まつり太鼓たいこ、わつしよい/\の諸勢もろぎほひ山車だし宛然さながら藥玉くすだままとひる。棧敷さじき欄干らんかんつらなるや、さきかゝ凌霄のうぜんくれなゐは、瀧夜叉姫たきやしやひめ襦袢じゆばんあざむき、紫陽花あぢさゐ淺葱あさぎ光圀みつくにえりまがふ。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
エヽ馬鹿ばかなとかっと見ひらき天井をにらむ眼に、このたびは花漬なけれど、やみはあやなしあやにくに梅の花のかおりは箱をれてする/\とまくらに通えば、何となくときめく心を種としてさきさきたり、桃のこび桜の色
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
霧のに深山石楠花さきつゞくその岩影は去りがてぬかも
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
いもが垣根三味線草さみせんぐさの花さき
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
見捨みすてゝじやうなしがおまへきかあはれといへば深山みやまがくれのはなこゝろさぞかしとさつしられるにもられずひとにもられずさきるが本意ほんいであらうかおなあらしさそはれてもおもひと宿やどきておもひとおもはれたらるともうらみはるまいもの谷間たにまみづ便たよりがなくは
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
乳母うばのおさきというあまが、尼になっているつもりで、今夜此寺ここへたずねて来る」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
倶利伽羅くりからを汽車で通った時、峠の駅の屋根に、車のとどろくにも驚かず、雀の日光に浴しつつ、屋根を自在に、といの宿に出入ではいりするのを見て、谷にさきのこった撫子なでしこにも、火牛かぎゅう修羅しゅらちまたを忘れた。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
環の妻のおさきだった。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)