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咲揃
円いなだらかな小山のような所を
下ると、幾万とも数知れぬ
蓮華草が
紅う燃えて
咲揃う、これにまた目覚めながら
畷を拾うと、そこは
稍広い街道に
成っていた。
木振賤からぬ
二鉢の梅の影を帯びて南縁の障子に
上り尽せる
日脚は、
袋棚に据ゑたる
福寿草の五六輪
咲揃へる
葩に輝きつつ、更に唯継の身よりは光も出づらんやうに
此の
時の
旅に、
色彩を
刻んで
忘れないのは、
武庫川を
過ぎた
生瀬の
停車場近く、
向う
上りの
徑に、じり/\と
蕊に
香を
立てて
咲揃つた
眞晝の
芍藥と、
横雲を
眞黒に、
嶺が
颯と
暗かつた