さき)” の例文
かねると、生徒せいとらは、さきあらそって廊下ろうかからそとへとかけしました。そのとき、りょう一は、先生せんせい教員室きょういんしつへいかれるあとったのです。
僕が大きくなるまで (新字新仮名) / 小川未明(著)
按摩あんまつゑちからに、かはべりの水除みづよづゝみると、つゑさき両手りやうてをかけて、ズイとこしばし、みゝそばだてゝかんがえて様子やうす、——とふ。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、つかれてきたはねにバサバサとちからめて、ひつかうとするけれど、ラランのやつはさつさとさきびながら、いたもので
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
川口かはぐちの、あしのたくさんえてゐる、そのあしさきが、みんなとれてゐる。これは、たれつたのかとまをしますと、それは、わたしです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
しかしそれも今日こんにちはもう歴史である。これからさきはどう変って行くか、私たちはまた一つの新しい経験を積まなければならぬのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
原口さんは無論ゐる。一番さきて、世話をいたり、愛嬌を振りいたり、仏蘭西式のひげつまんで見たり、万事いそがしさうである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しな天秤てんびんおろした。おしなたけみじか天秤てんびんさきえだこしらへたちひさなかぎをぶらさげてそれで手桶てをけけてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
これよりさき生田葵山書肆しょし大学館と相知る。主人岩崎氏を説いて文学雑誌『活文壇かつぶんだん』を発行せしめ、井上唖々と共に編輯へんしゅうのことをつかさどりぬ。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
しかたがないので、またたぬきはずんずんさきってあるいていきました。やがてもう一つこうの山まで行くと、たぬきはふりかえって
かちかち山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
さきつ年、久秀が室町の御館おやかたおそうて、将軍義輝公を弑逆しいぎゃくし奉った折なども、坂上主膳の働きは、傍若ぼうじゃく無人ないくさぶりと云われております。
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同時に、昔に変る墨染姿の成親を見出した時は、いつか目のさきがぼうっとかすんで、成親の姿もはっきり目に映らぬほどであった。
なんと、飴屋あめやさんの上手じやうずふえくこと。飴屋あめやさんはぼうさききつけたあめとうさんにもつてれまして、それからひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
郵便局長いうびんきよくちやうのミハイル、アウエリヤヌヰチは、かれところて、かれはなしいてはゐるが、さきのやうにれは眞實まつたくですとはもうはぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
細君は怒つて先に部屋へはひつて仕舞しまふ。隣の部屋からさきの夫人のマドレエヌが手燭てしよくを執つてあらはれ一人残つたモリエエルを慰める。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そして木部の全身全霊をつめさきおもいの果てまで自分のものにしなければ、死んでも死ねない様子が見えたので、母もとうとうを折った。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
なん人面白ひとおもしろくもねえ、さきへ出よう/\。「金兵衛きんべゑどんおまいこれから焼場やきばつてくのにひとりぢやア困るだらうからおれ片棒かたぼうかついでやらうか。 ...
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
たずねて村役人むらやくにんいえへいくと、あらわれたのは、はなさきちかかるように眼鏡めがねをかけた老人ろうじんでしたので、盗人ぬすびとたちはまず安心あんしんしました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
やせまつろうふたた春重はるしげかおもどったとき春重はるしげはおもむろに、ふところから何物なにものかを取出とりだしてまつろうはなさきにひけらかした。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
前年さきのとし江戸にありし時右の事をさき山東翁さんとうをうにかたりしに、をういはく世路せいろなだ総滝そたきよりも危からん、世はあしもとを見てわたるべきにやとてわらへり。
此のさき生活のあてもなくなりさうになつてゐることを思ふと、死んでしまはうかと思ふより、ほかに仕方もないことであつた。
亡弟 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
或夜、莊公は渾良夫こんりやうふに向つて、さきの衞侯てふが出奔に際し累代の國の寶器をすつかり持去つたことを語り、如何にして取戻すべきかを計つた。
盈虚 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
ところが人形には、うす着物きものの下にくぎがいっぱい、とがったさきを外にけてつまっているのです。いくら大蛇おろちでもたまりません。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
うちふるひつゝわが口にくちづけしぬ、ガレオットなりけりふみも作者も、かの日我等またそのさきを讀まざりき 一三六—一三八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
それでどうてつふたつのうち、いづれかゞ使用しようされることになりましたが、はたしてどちらがさき使用しようされたかについてはいまなほ議論ぎろんがあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
殊にこの返事にもあるように、さきは一途に人形を見に来たと思って、直ぐその手柄話になるであろう。そうしたらいよいよ出鼻をくじかれる。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これよりさき保は高等師範学校にることを願って置いたが、その採用試験が二十二日から始まるので、独り先に東京に帰った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
兵士が笑って、銃剣じゅうけんさきで蛇をつっかけて、堤外ていがいほうり出した。無事にこの関所せきしょも越して、彼は母と姉と嘻々ききとして堤を歩んだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その畜生ちくしやうおとされるとは、なにかの因縁いんえんちがひございません。それは石橋いしばしすこさきに、なが端綱はづないたままみちばたの青芒あをすすきつてりました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そうさきッ潜りをするから困るしずかきゝたまえな、持物の無いのは誰が見ても曲者が手掛りを無くする為に隠した事だから追剥の証拠には成らぬが
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
赤鉢卷隊あかはちまきたい全力ぜんりよく山頂さんてうむかつてそゝぎ、山全體やまぜんたいとりくづすといふいきほひでつてうちに、くはさきにガチリとおとしてなにあたつた。
いま身分みぶんおもしたところなんとなりまする、さき賣物買物うりものかひものかねさへ出來できたらむかしのやうに可愛かわひがつてもれませう、おもてとほつててもれる
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しこうしてその策する所を観れば、曰く、「今の戦法は、これをさきんずるに海戦を以てし、これを終るに陸戦を以てすべし」と。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
しかも、その大河は、これまで読書会ではほとんど沈黙を守りつづけて来ており、さきに口をきったことなど、全くなかった人なのである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そう思ってゆくてをみると、白い道が夕もやの中へきえて、そのさきそらには二つ三つ、きいろい星が光りだしているばかり。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
『さう、眞箇ほんとうに!』おそれて尻尾しツぽさきまでもふるへてゐたねずみさけびました。』わたし斯麽こんなことはなしたが最期さいごわたしの一家族かぞくのこらずねこ仇敵かたきおもふ。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
そんな時は、お島は店の若いもののような仮声こわいろをつかって、さきの処と名を突留めようと骨を折ったが、そのかいがなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
夢かとばかり驚きながら、たすけ參らせて一間ひとませうじ、身ははるかに席を隔てて拜伏はいふくしぬ。思ひ懸けぬ對面に左右とかうの言葉もなく、さきだつものは涙なり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
……乳母おんばさききゃれ。ひめにようつたへたもれ、家内中かないぢゅうはや就褥ねかしめさと被言おしゃれ、なげきにつかれたればむるはぢゃうぢゃ。ロミオは今直いますぐまゐらるゝ。
ここに教へ覺したまふ状、つぶさにさきの日の如くありて、「およそこの國は、汝命いましみことの御腹にます御子の知らさむ國なり」
さきにゆく菊枝どのいのう。菊枝どのいのう……はれ、聞えぬげな。(つまづくが如く、二足三足下手の方に歩みよりて。)
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
(ホ)灌木帶かんぼくたい偃松帶はひまつたい)。 えぞまつやとゞまつの針葉樹林しんようじゆりんてそのさきうつると、きゆうひかりつよく、あたりはぱっとあかるくなつたようながします。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
指揮刀しきたうさや銀色ぎんいろやみなかひらめかしてゐる小隊長せうたいちやう大島少尉おほしませうゐさへよろけながらあるいてゐるのが、五六さきえた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
民友子さきつ頃「俗間の歌謡」と題する一文を作りて、平民社界に行はるゝ音楽の調子の低くしてけんなるを説きぬ。
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
二三軒雑誌を素見ひやかして、中央會堂の少しさきから本郷座の方に曲ツた。何んといふことはなかツたがウソ/\と本郷座の廣ツ場に入ツて見た。閉場中だ。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「もし母さんが、僕を可愛かわいくって食べちまうっていうんだったら、きっとさきに、はなぱしらかじりつくだろう」
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
ヨーロツパでもハンガリーなどではすなはちマギアールぞく東洋民族とうやうみんぞくであるから、苗字めうじさきにし、あとにする。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
これよりさき前原伊助、神崎与五郎かんざきよごろうの両人は、内蔵助の命を帯びて、すでにその年の四月中江戸に下っていた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
そして、うれしそうにニールスにとびついて、くちばしで頭のてっぺんからつまさきまで、なでまわしました。
りくはうると、いつしかふねみなと目近まぢかすゝんで、桑港さうかう町々まち/\はついはなさきえる。我等われらとまるべきフェアモント・ホテルはたかをかうへつてる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
小田原をだはらからさきれい人車鐵道じんしやてつだうぼくは一ときはや湯原ゆがはらきたいのできな小田原をだはら半日はんにちおくるほどのたのしみすてて、電車でんしやからりて晝飯ちうじきをはるや人車じんしやつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)