前方さき)” の例文
それでは魔物まもの不承知ふしようちぢや。前方さきちつとも無理むりはねえ、るもらぬもの……出来でき不出来ふでき最初せえしよから、お前様めえさまたましひにあるでねえか。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私は元気づいて前方さきを馳ってゆくシロを悲しそうに見た。「あれだけが生きている。あれがみな知っている。」と思った。「あれがもし話ができたら、よく私を慰めてくれるに違いない。」
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
『先生!』と、五六間前方さきから女児等こどもらが呼ぶ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
成程、おっしゃりました名のとおり、あなた相の山までいらっしゃいましたが、この前方さきへおいでなさりましても、い宿はござりません。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おゝ、自然しぜんてきたいして、みづから、罵倒ばたうするやうな木像もくざうでは、前方さき約束やくそくげんのも無理むりはない……駄物だもの駄物だもの駄物だもの
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おそろしく鐵拐てつか怒鳴どなつて、フトわたし向合むきあつて、……かほて……雙方さうはう莞爾につこりした。同好どうかうよ、と前方さきおもへば、知己ちきなるかな、とひたかつた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふうちに、フトの(おなごり)とつたのがつて、これだと前方さき言葉通ことばどほり、うやらなにかがおなごりにりさうだ、とおもつてだまつた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「おう、そうか、久しぶりと聞けば、前方さきでもすぐには返すまいし、戸口からも帰られまい、ゆっくりなせえ、並木の茶店で小休みをしながら待とうよ。」
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わっしもさ、思ってるんで。……どうもね、ただこう、迷児と呼んだんじゃ、前方さきで誰の事だか見当が附くめえてね、迷児と呼ばれて、はい、手前でござい、と顔を
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いや、これは可怪おかしいぞ。一人ひとりばかりないのなら、をんなうかしたのだらうが、みせばあさんもなくなつた、とすると……前方さきさらはれたのぢやなくつて、自分じぶんつままれたものらしい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
呼ばれたうちへ入ったらしい。二人とも、ずっと前方さきで居なくなった。そうか。ああ、盲目の箱屋は居ねえのか。アまたえたぜ……影がさす、笛の音に影がさす、按摩の笛が降るようだ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
前方さきに行って御覧じゃりまし、川原に立っておりますが、三十人、五十人、橋を通行ゆききのお方から、おあしつぶてを投げて頂いて、手ン手に長棹ながざおさきへ網を張りましたので、宙で受け留めまするが
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
前方さきへ行って目をまわしっけ、」
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)