前刻さき)” の例文
跡方も無い嘘はけぬ。……爺さんは実に、前刻さきにお孝にもその由を話したが……平時いつもは、縁日廻りをするにも、お千世が左褄を取るこの河岸あたりははばかっていたのである。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
柳町の裏長屋で……魚頭も鱗もない、黄肌鮪きはだに弱った事は、——前刻さきに言った通りです。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
万一、前刻さきに御堂の縁で、唇を寄せたらば、恥辱にきてはいられまい。——
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
前刻さきには御令妹であったかに、ああ、本職は記憶するですな。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)