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彼方
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むこう
ふりがな文庫
“
彼方
(
むこう
)” の例文
傍
(
わき
)
の袋戸棚と板床の隅に
附着
(
くッつ
)
けて、桐の
中古
(
ちゅうぶる
)
の本箱が
三箇
(
みっつ
)
、どれも揃って、
彼方
(
むこう
)
向きに、
蓋
(
ふた
)
の方をぴたりと壁に
押着
(
おッつ
)
けたんです。……
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
『まだ酔っていらっしゃる。そんな説教を長々としているものだから、
彼方
(
むこう
)
から何か参りました。はやく
飲
(
あ
)
がっておしまいなさい』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
赤々として熱そうな、
日入
(
いりひ
)
の影が
彼方
(
むこう
)
の松林に照りつけると、蜩の声は深山の
渓間
(
たにま
)
で鳴くのである。もはや帰るべき時は
来
(
きた
)
った。
森の妖姫
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
だが、何と猿廻しの素早いことか、こんもり盛り上っている
山査子
(
さんざし
)
の
叢
(
むら
)
の、丘のように高い裾を巡って、もう
彼方
(
むこう
)
へ走っていた。
仇討姉妹笠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
河
彼方
(
むこう
)
にある渡船場の人を呼ぶには、よほど大きな声を出さなければならなかった、それに手塩川はこの辺に来てかなり河幅を増していた。
惨事のあと
(新字新仮名)
/
素木しづ
(著)
▼ もっと見る
若「
彼方
(
むこう
)
も面目なくって間が悪いから、
慌
(
あわ
)
てゝお飾松の
蔭
(
かげ
)
へ隠れたのだが、
若
(
も
)
しお前の方が板で彼方が腮ならばお前が謝らなければなるまい」
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
中
(
なか
)
で一ばん
大
(
おお
)
きな
彼方
(
むこう
)
の
巌山
(
いわやま
)
の
裾
(
すそ
)
に、
一
(
ひと
)
つの
洞窟
(
ほらあな
)
らしいものがあり、これに
新
(
あた
)
らしい
注連縄
(
しめなわ
)
が
張
(
は
)
りめぐらしてあるのでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
お父さんに至っては子供の時の修学旅行以外一切東京を離れたことがないから箱根から
彼方
(
むこう
)
には
生蕃
(
せいばん
)
がいると心得ている。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
小諸は降らない日でも、越後の方から上って来る汽車の屋根の白いのを見ると、ア
彼方
(
むこう
)
は降ってるナと思うこともある。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「国乱れて乱臣出ず、なかと言うてな」と老人は妙な古言を一つ引いてから、「
箱根
(
はこね
)
から
彼方
(
むこう
)
の化物が、大かたこっちへ
移
(
す
)
みかえたものじゃろうて」
助五郎余罪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
「では、わしは
彼方
(
むこう
)
のお座敷でまだお相手をせねばなりませぬゆえ、ゆかせて頂きます。雪之丞どの、御息女さまは、ようくおたのみいたしましたぞ」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
私は「うう」と、ただ答えたが、その人形や塗り物の菓子器の
彼方
(
むこう
)
にいろいろな男の影が見えるような気がした。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
彼方
(
むこう
)
でも僕等の様な怠け者の連中は駄目な奴等だと
軽蔑
(
けいべつ
)
して居たろうと思うが、
此方
(
こちら
)
でも
亦
(
また
)
試験の点
許
(
ばか
)
り取りたがって居る様な連中は共に談ずるに足らずと観じて
落第
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼方
(
むこう
)
側を向いて、吊革につかまって立っている女の後姿に、私の眼は釘付けにされてしまった。
秘密
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
そして
彼方
(
むこう
)
の林檎の樹のところで全く見えなくなったとき、ジャンは再び刈り方をつづけた。
麦畑
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
前の庭の
彼方
(
むこう
)
を区切って居る低い堤には外側の方がひどく白くなり立木の皆がそうである。
農村
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
薄闇い狭いぬけろじの
車止
(
くるまどめ
)
の横木を
俛
(
くゞ
)
って、
彼方
(
むこう
)
へ出ると、琴平社の中門の通りである。
二少女
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
図の上半部を成している
江
(
え
)
の
彼方
(
むこう
)
には
翠色
(
すいしょく
)
悦ぶべき遠山が見えている、その手前には丘陵が起伏している、その間に
層塔
(
そうとう
)
もあれば
高閤
(
こうこう
)
もあり、黒ずんだ
欝樹
(
うつじゅ
)
が
蔽
(
おお
)
うた
岨
(
そば
)
もあれば
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
振り向くと、めくら
縞
(
じま
)
長袢纒
(
ながばんてん
)
の
頸
(
くび
)
に豆絞りを結んだ男が、とっとと
彼方
(
むこう
)
へ駈けて行く。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
突然、硝子窓の
彼方
(
むこう
)
に固い兵隊靴の足音がした。藤沢は算盤に手を置いたまま足音の方へ視線をむけた。半分ほど開いている硝子窓の
彼方
(
むこう
)
を、誰かが
此方
(
こちら
)
へむけて活溌に歩いて来た。
熊の出る開墾地
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
盲目が提灯を持っては物笑いと
思召
(
おぼしめ
)
すでございましょうが、何の意味もあるのじゃございません、わたくしどものために提灯をつけて歩くのではございません、
彼方
(
むこう
)
からいらっしゃる方が
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「昨日、来たのは、
彼方
(
むこう
)
だね。」と自分は今見ていた方を指して聞いた。
土淵村にての日記
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
「なにをいうかと思えば、愚にもつかぬ
吐
(
ほ
)
ざき
言
(
ごと
)
。だが、少しおもしろい、その独りよがりを
醒
(
さ
)
ましてやろう。来いっ。
彼方
(
むこう
)
へ立とう」
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人に怨まれる覚えはないが、はて何者と
透
(
すか
)
して見たら、藪の
彼方
(
むこう
)
にも人影が、十人ほどごそごそ動いている。私はそこで考えた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
私
(
わたくし
)
がある
日
(
ひ
)
海岸
(
かいがん
)
で
遊
(
あそ
)
んで
居
(
お
)
りますと、
指導役
(
しどうやく
)
のお
爺
(
じい
)
さんが
例
(
れい
)
の
長
(
なが
)
い
杖
(
つえ
)
を
突
(
つ
)
きながら
彼方
(
むこう
)
からトボトボと
歩
(
ある
)
いて
来
(
こ
)
られました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
……坊ちゃん、今橋を渡ったでしょう? あれが
黄瀬川
(
きせがわ
)
で、頼朝と義経が対面したところがこのすぐ
彼方
(
むこう
)
に残っています。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
本箱は、やや意を強うするに足ると思うと、その
彼方
(
むこう
)
向けの
不開
(
あかず
)
の蓋で、またしても眉を
顰
(
ひそ
)
めずにはいられませんのに、押並べて小机があった。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前後十二年というものは、海の
彼方
(
むこう
)
で送った。御承知の通り、外国へ行って来るとか、戦地でも踏んで来るとかすれば、大概な人は放縦な生活に慣れて来る。
船
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「いま、
彼方
(
むこう
)
の
田圃道
(
たんぼみち
)
を
歩
(
ある
)
いてくると、ひきがえるが、かまきりをのもうとしていた。」と、
話
(
はな
)
されました。
宿題
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
けれ共、驚きのために低い叫びをあげて私の居た裏口の方へかけて来、少しの間うじうじした後、すぐ間近に居た私の足に、土を飛ばせながら畑地を
彼方
(
むこう
)
にこいで行って仕舞った。
農村
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
それでも黙って上がって行くのは厚かましいようで、二、三度大きな声をかけると、やがて階段を下りて来る足音がして、外から
開
(
あ
)
かぬように、ぴたりと
閉
(
し
)
めた奥の
潜戸
(
くぐり
)
の
彼方
(
むこう
)
で
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
煙りのような真っ直ぐな白い火の棒が五本、続けざまに
彼方
(
むこう
)
の船に立つのを見た。
運命のSOS
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
何うかして
欺
(
だま
)
し
遂
(
おお
)
せて遁れようと言いくるめて居ります
中
(
うち
)
に、
度々
(
たび/\
)
参ると、
彼方
(
むこう
)
でも親切に致しますも惚れて居りますから、何事もお梅の云う通りに
行届
(
ゆきとゞ
)
き、亭主は窮して居りますから
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その
彼方
(
むこう
)
に古ぼけた勾配の急な
茅屋
(
かやや
)
が二軒三軒と飛び飛びに物悲しく見えた。
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
『違いない! ——。この辺はもう永代橋に近いな、本所迄はずいぶんある。——
彼方
(
むこう
)
のぽっと明るく見える空は、堺町の芝居小屋か』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その堂々たる武者押しを討手の勢はあっけに取られてただ
呆然
(
ぼうぜん
)
と見ていたが、急に伝騎を走らせて
彼方
(
むこう
)
の様子を
窺
(
うかが
)
わせた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「女学校でもなんて
酷
(
ひど
)
いわね。けれども箱根から
彼方
(
むこう
)
は知らないんですから楽みですわ。早く沼津に着きたいものね」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「そんなことうそよ、だましたって
知
(
し
)
っているわ。」と、くるりと
彼方
(
むこう
)
を
向
(
む
)
いて、
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
していきました。げたについている
鈴
(
すず
)
の
音
(
おと
)
が、リンリンと
幸吉
(
こうきち
)
の
耳
(
みみ
)
にきこえました。
花の咲く前
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
すると背後で、扉を
敲
(
たた
)
く音がした。とっさに、佃が来た知らせかと思い、彼女は困却した。十一時頃から彼らは、ハドソン河を
彼方
(
むこう
)
に渡って、ながい散歩をしようと約束していた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「
彼方
(
むこう
)
から、
誰方
(
どなた
)
かお
来
(
いで
)
なさりゃしませんか。貴女がお帰りだ、と知れましたら。」
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鷲峰山下の村に通う街道は、そこに架した長い板橋を
彼方
(
むこう
)
に渡ってゆくのである。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
その涙の
疼
(
うず
)
きが、唐突に、伊織の手や足を動かし始めた。伊織の耳には、ゆうべの岩戸
神楽
(
かぐら
)
が、雲の
彼方
(
むこう
)
で聞えているのである。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あの場所の景色と
異
(
ちが
)
うところは、あそこでは、塚と林との
彼方
(
むこう
)
が、広々と
展開
(
ひら
)
けた野原だったのに、ここでは、土塀が、
灰白
(
はいじろ
)
く横に延びているだけであった。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そのために、湖の様に、澄んで広々と、
彼方
(
むこう
)
の青や紫の山々の裾までひろがって居る様にはてしなかった池も、にわかに取り澄まして、近づき難い、可愛げのない様子になって仕舞った。
農村
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
彼方
(
むこう
)
の新粉屋が、ものの遠いように霞むにつけても、家路
遥
(
はる
)
かな思いがある。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
やはり
彼方
(
むこう
)
向きになって黙って坐っていた。
老婆
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
市の山は百間松の直ぐ
彼方
(
むこう
)
だ。
村の成功者
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「じゃあ、この野郎を、
彼方
(
むこう
)
へしょッ引いて行こう。こいつに
水垢離
(
みずごり
)
とらせて、踏まれた
曲尺
(
まがりがね
)
に手をつかせて謝らせなくっちゃならねえ」
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その桜並木の遙か
彼方
(
むこう
)
の、斜面をなしている丘の上の、諏訪神社の辺りでは、火祭りの
松明
(
たいまつ
)
の火が、数百も列をなし、
蜒
(
うね
)
り、渦巻き、揉みに揉んでいるのが
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
砂丘つづきの草を踏んでと、学生が見ていると、
立
(
たち
)
どまっていた
二女
(
ふたり
)
が、ホホホと笑うと思うと、船の胴を
舷
(
ふなべり
)
から真二つに切って、市松の帯も消えず、浪模様の
裾
(
もすそ
)
をそのままに
彼方
(
むこう
)
へ抜けた。
露萩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“彼方”の意味
《名詞》
いずれも離れた場所の意
かなた
あちら
あっち
あなた
(出典:Wiktionary)
“彼方”の解説
『彼方』(かなた、Là-Bas)は、フランスの作家、J・K・ユイスマンスによる長編小説。
日本語版は田辺貞之助訳によるもの(創元推理文庫、改版2002年)が刊行されている。
(出典:Wikipedia)
彼
常用漢字
中学
部首:⼻
8画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
“彼方”で始まる語句
彼方此方
彼方是方
彼方側
彼方向
彼方岸
彼方様
彼方詰
彼方此處