対面むこう)” の例文
旧字:對面
「なかなか冷えるね」と、西宮は小声に言いながら後向きになり、せなか欄干てすりにもたせ変えた時、二上にあがり新内をうたうのが対面むこうの座敷から聞えた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
お丹突然いきなり、「畜生——」と一喝して長羅宇ながらうの煙管を押取おっとり、火鉢の対面むこうに割膝して坐りたる鉄の額を砕けよと一つつ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
生き磔刑はりつけより死んだ後塩漬の上磔刑になるような目にあってはならぬ、初めは我もこれほどに深くも思い寄らなんだが、汝が我の対面むこうにたったその意気張りから
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)