那地あちら)” の例文
若い登山家として知られてゐるK氏が、急に用事が出来て信州へ往つたからといつて、那地あちらの深い山から折つて帰つた山独活やまうどを四五本とどけてくれた。
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
森村商事会社の取締役村井保固やすかた氏は、なが/\米国へ渡つてゐて、那地あちらで会社の地位を据ゑたのは、全くこの人一人の骨折だと言はれてゐる男である。
日本の画家ゑかきがかうした目端の利く、忠実な女房をざらに持つてゐるのはまことに結構な事だが、支那では女の出来が日本ほど思はしくないので那地あちら画家ゑかき女房かないの他に今一つ豆猿を飼つてゐる。
趣味の教養の低い米国の紳士仲間では、この冒険小説党が少くない。長く那地あちらの医師協会の会長を勤めてゐたバウガン氏なども、忙がしいなかに閑を見つけると、冒険小説を手に取る事にしてゐる。