彼地あちら)” の例文
けれどチベットの方が余程よいと言って彼地あちらからわざわざ取り寄せる位ですから、チベット人にはこれが最も適当した食物であります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
彼地あちらの若い衆は顔を出して皆後方うしろへ冠ります、なるたけ顔を見せるように致しますから、髷の先と月代さかやきとが出て居ります。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
やがて親戚や近所の人達が、あつまって来て、彼地あちらでいう夜伽よとぎ東京とうきょうでいえば通夜つやであるが、それがある晩のことはじまった。
子供の霊 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
(A crew of Coxswains.)とぼく達は彼地あちらの新聞に、一言で、かたづけられていたものです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
何しろ、北海道へ渡つて漸々やうやう四ヶ月、内地(と彼地あちらではいふ。)から家族を呼寄せてうちを持つた許りの事で、土地ところに深い親みは無し、私も困つて了つた。
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
彼地あちらに行っても面白くないから、それで、またしても戻って来たのだが、斯うしていても、あの年齢を取った、血気ちのけのない、悧巧そうな顔が、明白ありありと眼に見える。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「ですが、大層お話が持てましたじゃありませんか。彼地あちらの文学のお話ででもございましたんですか。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼地あちらの出来だと、同じ品で値段がざつと十割かたも張る事を御辛抱なさらなければなりません。」
「な、こういう次第だからとよく申して、同勢をすぐり、貴様には気の毒だが、その夜にでも彼地あちらをたって江戸へ急行してもらいたい。礼は後日のぞみ放題ほうだいにとらせる」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼地あちらへお立ちになる頃は、憎みも余程少くはなっていましたが、未だそれでも残っておりました。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼地あちらの大音楽家も、ジプシーから教えられたものがあるそうでございます……とはいえジプシーは、救世主を殺した罪の種族でございますから、これを見ることは許されても
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「そうでした。上れればよかったんですが、彼地あちらでも歓迎準備をして、花火など揚げていましたので気の毒しました。宿もとってありますので、三班だけ行って貰いました訳で。ええ。」
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
当人のはなしれば彼地あちらでは経済学を修めて随分上出来の方で有ったと云う事で、帰朝後も経済学で立派に押廻わされるところでは有るが、少々仔細しさい有ッて当分の内(七八年来の当分の内で)
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
今は亡き彼地あちらの陪審官デニス・ペトローヸッチは、遠くから彼の姿を見かけると、⦅御覧なさい、御覧なさい、そら、あすこへ製粉場こなひきばの風車が歩いて来ますぜ!⦆と、きまつてさう言つたものぢや。
ええ、生まれたのは彼地あちらです。でも、小学校に入る年頃になると直ぐに、母方の祖父の意見で、母と一緒に日本へ呼び戻されて、それからずっと母の実家で育ちました。——父だけは、何と云っても此方こちらへ帰ることを
或る母の話 (新字新仮名) / 渡辺温(著)
って東へ窓を開け、之をざまと云います。夏季なつ蚊燻かいぶしを致します。此の蚊燻の事を、彼地あちらではくすべと申します。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「御免遊ばせよ、宿はながく巴里パリーに居ましたので、つい彼地あちらの癖がつきましてね。」
その女は眉目びもくの辺が引き締っていて、口元などもしばしば彼地あちらの女にあるようにゆるんだ形をしておらず、色の白い、夏になると、それが一層白くなって、じっとり汗ばんだ皮膚の色が
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
全體彼地あちらでは汐風が吹くせゐか木が皆小さくて稀に二三株有つても色も褪せて居るやうだから、摘草などをこそすれつい/\花を見る事は先づすくないのである、と言つて花時に出ても來ないし
お花見雑感 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼地あちらもお暑かったんですよ」 
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
矢張女も手拭を冠って居ります。彼地あちらでは女が、誠に済みませんが手拭も冠りませんで御挨拶を致します、と云う処を見れば手拭を冠るのが礼になって居る事と見えます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ヘツケル! ヘツケル教授といへば名高い学者だ。それに就いて一つお頼みがあるんだが、もしか彼地あちらで教授にお会ひだつたら、記念のために何でもよろしい、あの人の手蹟が貰つていたゞけまいか知ら。」