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彼方
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あちら
ふりがな文庫
“
彼方
(
あちら
)” の例文
「如何です、お差支えなかったら
彼方
(
あちら
)
でお茶でも差上げたいと存じますが、ちょっと十五分ばかりお附合いになって下さいませんか」
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
垣根の
楓
(
かえで
)
が芽を
萌
(
ふ
)
く頃だ。
彼方
(
あちら
)
の往来で——杉林の下の薄暗い中で子供
等
(
ら
)
が隠れ事をしている。きゃっきゃっという声が重い頭に響く。
黄色い晩
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
丘は起伏して、ずっと
彼方
(
あちら
)
の山にまで連なっていた。丘には処々
草叢
(
くさむら
)
があり、灌木の群があり、小石を一箇所へ寄せ集めた
堆
(
うずたか
)
があった。
雪のシベリア
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
「私は女軽業師、幸い斯うして、
彼方
(
あちら
)
から
此方
(
こちら
)
へ、藤蔓が引渡して御座いますから、それを伝って行けば何んでも無い事で御座います」
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
「こんなに荒れると、本当に自動車はお危なうございますわ。一層こんな晩は、
彼方
(
あちら
)
でお宿りになるとおよろしいのでございますが。」
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
大阪であつても、私の郷里であつても、
彼方
(
あちら
)
の地方の人は、万人共通に何事かの場合に着る着物の質の標準と云ふものが決まつて居ます。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「
彼方
(
あちら
)
でも堅人と仰有る。此方でも堅人と仰有る。お母さん、これは案外目っけものですよ。
性
(
しょう
)
の知れない秀才よりも安心です」
嫁取婿取
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
何か此の
方
(
かた
)
が
内々
(
ない/\
)
の用談があってお
出
(
い
)
でになったのだから、
皆
(
みん
)
な
彼方
(
あちら
)
へ
往
(
い
)
って、
此方
(
こっち
)
へ来ないようにするがいゝ、お連れがあるようですね
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
彼方
(
あちら
)
の方で、来ないか、と言ってくれる人が有りましてネ……まあ二三年、私も
稽古
(
けいこ
)
のつもりで、彼方の株式仲間へ入って見ます
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
トお勢を
尻目
(
しりめ
)
にかけてからみ文句で
宛
(
あて
)
る。お勢はまた始まッたという
顔色
(
かおつき
)
をして
彼方
(
あちら
)
を向てしまう、文三は余儀なさそうにエヘヘ笑いをする。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
又
彼方
(
あちら
)
から来れば
捏
(
こね
)
くる奴が控えて居る。何でも六、七人
手勢
(
てぜい
)
を
揃
(
そろ
)
えて
拈込
(
ねじこん
)
で、理屈を述べることは筆にも口にも
隙
(
すき
)
はない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
しごきの
縮緬
(
ちりめん
)
裂いて
襷
(
たすき
)
凛々敷
(
りゝしく
)
あやどり、ぞろりとしたる
裳
(
もすそ
)
面倒と、クルリ
端折
(
はしを
)
つてお花の水仕事、兼吉の母は
彼方
(
あちら
)
向いて
竈
(
へつつひ
)
の下せゝりつゝあり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「さあ唯今
些
(
ちよつ
)
と手が放せませんので、御殿の方に居りますから、どうか
彼方
(
あちら
)
へお出なすつて。
直
(
ぢき
)
其処
(
そこ
)
ですよ。婢に案内を為せます。あの
豊
(
とよ
)
や!」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「羽柴どの。いま
彼方
(
あちら
)
で、あなたと親しげに語っていた僧は、安国寺
恵瓊
(
えけい
)
とか申す人相をよく
観
(
み
)
るひとではありませんか」
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「これから手前にあるものは、みんな僕のものさ。それに
彼方
(
あちら
)
がわの、あの青く見えている森と、森の向うにあるものも、みんな僕のものだよ。」
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
彼方
(
あちら
)
へお連れ申し上げて下され……お二方さま、何やら私はこの席が急に厭わしゅうなりました。我ままついでに此の席を、直ぐに移して下さりませ
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
羽前西村山郡
左沢
(
あてらざわ
)
町は、『出羽風土略記』によれば、
五百川
(
いもがわ
)
左岸の地であるがゆえに左の字を宛て、これをアテラというのは
彼方
(
あちら
)
の義であるという。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
といふやうに刹那々々に氣が
彼方
(
あちら
)
へ行つたり
此方
(
こちら
)
へ來たりする、氣は靜かに一處へ注定する譯には行かぬのである。
努力論
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
これは
彼方
(
あちら
)
へ行ってから、銘々判読するとして、ここで申上げて置き度いのは、その中に『
夏至
(
げし
)
の日の
正午
(
しょううま
)
の
刻
(
こく
)
』
古城の真昼
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
入口
(
いりくち
)
の
彼方
(
あちら
)
は
長
(
なが
)
い
縁側
(
えんがは
)
で三
人
(
にん
)
も
小女
(
こむすめ
)
が
坐
(
すわ
)
つて
居
(
ゐ
)
て
其
(
その
)
一人
(
ひとり
)
は
此方
(
こちら
)
を
向
(
む
)
き
今
(
いま
)
しも十七八の
姉樣
(
ねえさん
)
に
髮
(
かみ
)
を
結
(
ゆ
)
つて
貰
(
もら
)
ふ
最中
(
さいちゆう
)
。
湯ヶ原ゆき
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
なんでも
彼方
(
あちら
)
の習慣通りにやられては
堪
(
たま
)
らない。ぼくが会って、あなたのことも、
明瞭
(
めいりょう
)
に、あやまらせて置きます
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
琵琶湖の岸を
彼方
(
あちら
)
此方
(
こちら
)
見めぐるうち、両願寺と言ったか長等寺と言ったか、一つの寺に『源兵衛の髑髏』なるものがあって、説明者が殉教の因縁を語った。
取返し物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
だからこの場合には、均衡点の
彼方
(
あちら
)
において、商品の需要はその供給より大であって、これは価格の騰貴を生ぜしめる。換言すれば、均衡点を離れしめる。
純粋経済学要論:01 上巻
(新字新仮名)
/
マリー・エスプリ・レオン・ワルラス
(著)
「へえ。いろ/\珍しい者がありました。二三百は
異
(
ちが
)
つたのを集めて蔭干しにして取つといたのぢやけど
彼方
(
あちら
)
の學校を止めた時に皆んな燒いて來ました。」
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
彼
(
かれ
)
は
普通
(
ふつう
)
の
場合
(
ばあひ
)
の
樣
(
やう
)
に
病人
(
びやうにん
)
の
脉
(
みやく
)
を
取
(
と
)
つて、
長
(
なが
)
い
間
(
あひだ
)
自分
(
じぶん
)
の
時計
(
とけい
)
を
見詰
(
みつ
)
めてゐた。それから
黒
(
くろ
)
い
聽診器
(
ちやうしんき
)
を
心臟
(
しんざう
)
の
上
(
うへ
)
に
當
(
あ
)
てた。それを
丁寧
(
ていねい
)
に
彼方
(
あちら
)
此方
(
こちら
)
と
動
(
うご
)
かした。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
其の時自分は父の顏を見い/\、壺を引き寄せて、少しばかり手鹽に取り分けたのを喰べてゐたが、父は厭な/\顏をして、お駒に
彼方
(
あちら
)
へ行けと眼配せをした。
父の婚礼
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
「森の家へ行くことになつてゐるから——
彼方
(
あちら
)
で皆なが待つてゐるから——
彼処
(
あそこ
)
で待つてゐる者だけが僕の友達であり、親類なんてには何の用もないから——」
南風譜
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
『何だか、混雑してをりますのねえ。
彼方
(
あちら
)
に長らくをりましては、何かにつけて不便で困りますの……』
くづれた土手
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
些
(
ち
)
と
彼方
(
あちら
)
へもお顔をと言われるにも、気がさして、われからすすむともなく廊下を押されて、怪談の席へ
連
(
つらな
)
った。人は
居余
(
いあま
)
るのだから、
端近
(
はしぢか
)
を求むるにたよりは
可
(
よ
)
い。
露萩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お
内儀
(
かみ
)
さんが大きなお尻だけ見せて、
彼方
(
あちら
)
向いて事もあらうに座敷の中でパツと紺
蛇目
(
じやのめ
)
傘を拡げる。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「その名は、まだ不幸にして指摘する時機には達しておりません。しかし、その男の出現には、れっきとした証拠があがっているのです。
夫人
(
おくさん
)
、実は
彼方
(
あちら
)
からなんですよ」
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
長く
彼方
(
あちら
)
にいるつもりであったから、その中には、私に取って何よりも大切な
書籍
(
ほん
)
もあった。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
彼方
(
あちら
)
の人数の真中に囲まれたデップリした頭領らしい男が、最後に笠を取って打振りました。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
これが
妾
(
めかけ
)
手
(
て
)
かけに
出
(
だ
)
したのではなし
正當
(
しようたう
)
にも
正當
(
しようとう
)
にも
百
(
ひやく
)
まんだら
頼
(
たの
)
みによこして
貰
(
もら
)
つて
行
(
い
)
つた
嫁
(
よめ
)
の
親
(
おや
)
、
大威張
(
おほゐばり
)
に
出這入
(
ではいり
)
しても
差
(
さし
)
つかへは
無
(
な
)
けれど、
彼方
(
あちら
)
が
立派
(
りつぱ
)
にやつて
居
(
ゐ
)
るに
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「日の移り」という言葉は、文字通りに解すると、
此方
(
こちら
)
から
彼方
(
あちら
)
へ移動するもののように思われるが、映ずるという意味の「うつる」場合にも、昔はこの字を使っている例がある。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
彼方
(
あちら
)
へ往く
度
(
たんび
)
に札びら切って、大尽風をふかしているお爺さんが、
鉱山
(
やま
)
が売れたら、その女を
落籍
(
ひか
)
して東京へつれていくといっているから、それを踏台にして、東京へ出ましょうかって。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
郵便は一日に一度午後の八時頃に配達して来るので彼は散歩から帰って来ると来ているのが常であった。彼は狭い村を
彼方
(
あちら
)
に一休み
此方
(
こちら
)
に一休みして、なるべく時間のかゝる様にして
周
(
まわ
)
った。
恭三の父
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
騎士は剣で手当りしだいに左右の敵を切りまくる役目だ。僧正達でさへもやつきになつて戦ふ。そして城は軍隊で其の側面を護られながら、
彼方
(
あちら
)
へ行つたり
此方
(
こちら
)
へ行つたりして、移りまはる。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
みのるは
彼方
(
あちら
)
を向いて、自分も着物を着代へながら然う云つた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
『コラ、
彼方
(
あちら
)
へ行け。』と、校長は聞きかねて細君を叱る。
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
それを
彼方
(
あちら
)
此方
(
こちら
)
へ
曲
(
ま
)
げなければなりませんでした。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
彼方
(
あちら
)
は男たちであった。
此方
(
こちら
)
は女たちであった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
一体
彼方
(
あちら
)
は返すつもりで居るんでしょうか。
お久美さんと其の周囲
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
活け
下手
(
べた
)
の椿に
彼方
(
あちら
)
向かれけり
蓼太
(
りょうた
)
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
もう
彼方
(
あちら
)
をとんでゐた
燕
(新字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
「こんなに荒れると、本当に自動車はお危のうございますわ。一層こんな晩は、
彼方
(
あちら
)
でお
宿
(
とま
)
りになるとおよろしいのでございますが。」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
運を天にまかして船の漂うまゝに
彼方
(
あちら
)
へ揺られ、
此方
(
こちら
)
へ流されて居ります内に、東の方がぼんやりと糸を引いたように明るくなりました。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
夜遅くまで仕事をやって、もう寝ようと思って戸の口を出るとその気味の悪い赤い提燈が三つ、
彼方
(
あちら
)
の野原を歩いているのが見えたという。
北の冬
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
それでなくとも自分は
彼方
(
あちら
)
に居た六ケ月の間、心の中で毎日子に
跪
(
ひざまづ
)
いて罪を詫びない日はなかつたのであるからと思つて居た。
帰つてから
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
その時Uさんの話にも、阿父も
彼方
(
あちら
)
で教員してるそうです。まあ食うだけのことには困らん……それにしても、あんなに家を
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
“彼方”の意味
《名詞》
いずれも離れた場所の意
かなた
あちら
あっち
あなた
(出典:Wiktionary)
“彼方”の解説
『彼方』(かなた、Là-Bas)は、フランスの作家、J・K・ユイスマンスによる長編小説。
日本語版は田辺貞之助訳によるもの(創元推理文庫、改版2002年)が刊行されている。
(出典:Wikipedia)
彼
常用漢字
中学
部首:⼻
8画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
“彼方”で始まる語句
彼方此方
彼方是方
彼方側
彼方向
彼方岸
彼方様
彼方詰
彼方此處