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彼処
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かしこ
ふりがな文庫
“
彼処
(
かしこ
)” の例文
旧字:
彼處
「昨日ノ朝、妙ナ船ニ会イマシタ、三本
帆檣
(
マスト
)
ノ二千
噸
(
トン
)
バカリノ奴デス。船内ニハ誰モ居ナイ様子デ……
何処
(
どこ
)
も
彼処
(
かしこ
)
モ血ダラケデシタ」
流血船西へ行く
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「あないに何処も
彼処
(
かしこ
)
も白おしたら晴れがましおしてなあ。………あんさんとこの
奥様
(
おくさん
)
みたい
綺麗
(
きれ
)
おしたらよろしおすけど。………」
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
普請
(
ふしん
)
は上出来で、
何処
(
どこ
)
も
彼処
(
かしこ
)
も感心した中に特に壁の塗りの出来栄えが目に止まった。そこで男は知人に其の塗り方を訊いてみた。
愚かな男の話
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
とは思ったが、
歴々
(
ありあり
)
彼処
(
かしこ
)
に、何の異状なく
彳
(
たたず
)
んだのが見えるから、
憂慮
(
きづかう
)
にも及ぶまい。念のために声を懸けて呼ぼうにも、この
真昼間
(
まっぴるま
)
。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「なぜ姫路を捨てて来た。今や激戦の最中であろう。
彼処
(
かしこ
)
を破られてはここも危急にせまる。そち達の死場所はここでない筈だが」
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
彼処
(
かしこ
)
にて恋人の
文
(
ふみ
)
得
(
う
)
る人もあるべしなど、あやにくなることの思はれ
候
(
さふら
)
て、ふと涙
零
(
こぼ
)
し
候
(
さふらふ
)
など、いかにもいかにも不覚なる
私
(
わたくし
)
に
候
(
さふらふ
)
。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
われは、それより力無く起き上り、本堂下の
窖
(
あなぐら
)
に入りて、男女の屍体を数段に斬り刻み、裏山の雑木林の
彼処
(
かしこ
)
此処
(
こゝ
)
に埋め終りつ。
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼処
(
かしこ
)
に一つといふ風にバラツクが建てられてあつて、中には貧しいとは言ひながら、草色に塗つたペンキの家などもいくつか見かけました。
一少女
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
件
(
くだん
)
の『必携』十頁に、ある卑人その家名に誇ってわが父の像
彼処
(
かしこ
)
に立てられたというので念入れて尋ぬると、タイン侯乗車の像が立てられ
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
一体、
彼
(
か
)
の𤢖なるものが何匹居るのか知らぬが、
若
(
も
)
し大勢が
其処
(
そこ
)
や
彼処
(
かしこ
)
の穴から現われて出て、自分一人を一度に襲って来たら
到底
(
とても
)
敵
(
かな
)
わぬ。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
人の師となるにおいて、大なる短所を有するに係らず、その伝道心に到りては、この山を
彼処
(
かしこ
)
に移す程の勢力ありしなり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
夙
(
はや
)
く『釈日本紀』の私註以前から、我々の根国思想は一辺に偏し、
彼処
(
かしこ
)
を黄泉国よみの国と同じとする解釈は、最近の復古時代までも続いていた。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
逃げて
罷
(
まか
)
るなりとの給ふに、あはれ
浅間敷
(
あさまし
)
かりけることかな、それは纐纈城なり、
彼処
(
かしこ
)
に行きぬる人の帰ることなし。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
片目にて神の国に入るは、両目ありてゲヘナに投げ入れらるるよりも勝るなり。「
彼処
(
かしこ
)
にてはその
蛆
(
うじ
)
つきず、火も消えぬなり」。(九の四三—四八)
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
陪乗したるは
清洒
(
せいしや
)
なる当世風の年少紳士、木立の間に
逍遙
(
せうえう
)
する一個の人影を認むるや
指
(
ゆびさ
)
しつつ声をヒソめ「閣下、
彼処
(
かしこ
)
を革命が歩るいて居りまする」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
私たちの尊敬する学校の先生たちが勿論私たちにいろんなことをおさとしになる程何処も
彼処
(
かしこ
)
もとゝのつた人だとは信じはしませんけれどもまさかに
嘘言と云ふことに就いての追想
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
どんな
話
(
はなし
)
をするのであろうか、
彼処
(
かしこ
)
へ
行
(
い
)
っても
処方書
(
しょほうがき
)
を
示
(
しめ
)
さぬでは
無
(
な
)
いかと、
彼方
(
あっち
)
でも、
此方
(
こっち
)
でも、
彼
(
かれ
)
が
近頃
(
ちかごろ
)
の
奇
(
き
)
なる
挙動
(
きょどう
)
の
評判
(
ひょうばん
)
で
持切
(
もちき
)
っている
始末
(
しまつ
)
。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
晴れた日曜の午後の青山墓地は、其処の墓石の辺にも、
彼処
(
かしこ
)
の生籬の裡にも、お墓詣りの人影が、チラホラ見えた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
「怎麼に黄金丸、
彼処
(
かしこ
)
を見ずや。松の幹に攀らんとして、
頻
(
しき
)
りにあせる一匹の猿あり。もし彼の黒衣にてはあらぬか」ト、
指
(
さ
)
し示せば黄金丸は眺めやりて
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
救いを求める声が
此処
(
ここ
)
彼処
(
かしこ
)
に聞こえるので、さては津浪かと村に入って見ると、部落はほとんど全滅、巡査の妻と二人の愛児は共に無残の最期を遂げていた。
地震なまず
(新字新仮名)
/
武者金吉
(著)
ふと山王台の森に
烏
(
からす
)
の群れ集まるのを見て、
暫
(
しばら
)
く
彼処
(
かしこ
)
のベンチに
倚
(
よ
)
って静かに工夫しようと
日吉橋
(
ひよしばし
)
を渡った。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
一日の
雑沓
(
ざっとう
)
と暑熱に疲れきったような池の
畔
(
はた
)
では、
建聯
(
たてつらな
)
った売店がどこも
彼処
(
かしこ
)
も店を仕舞いかけているところであったが、それでもまだ
人足
(
ひとあし
)
は絶えなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
路傍
(
みちばた
)
には同じように屋台店が並んでいるが、ここでは酔漢の三々五々隊をなして歩むこともなく、
彼処
(
かしこ
)
では珍しからぬ血まみれ
喧嘩
(
げんか
)
もここでは殆ど見られない。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
旧約全書ヨブ記第三章第十七節に「
彼処
(
かしこ
)
にては悪しき者虐遇を息め、倦み憊れたる者
安息
(
やすみ
)
を得。」とある。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
宮の
骸
(
むくろ
)
の
横
(
よこた
)
はりし処も、又は
己
(
おのれ
)
の
追来
(
おひき
)
し筋も、
彼処
(
かしこ
)
よ、
此処
(
ここ
)
よと、
陰
(
ひそか
)
に一々
指
(
ゆびさ
)
しては、
限無
(
かぎりな
)
く
駭
(
おどろ
)
けるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
彼処
(
かしこ
)
に房のついた長剣がある。あれは国家主義者の正義であらう。わたしはさう云ふ武器を見ながら、幾多の戦ひを想像し、をのづから
心悸
(
しんき
)
の高まることがある。
侏儒の言葉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「人が殺すところの者を神は
蘇
(
よみがえ
)
らしめたもう。同胞に追われたる者は父なる神を見い出す。祈れよ、信ぜよ、
生命
(
いのち
)
のうちにはいれよ。父なる神は
彼処
(
かしこ
)
にいます。」
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ベルタンさんは老いぼれた料理人兼小使を一人使って、がらんとした、
稍
(
やや
)
大きい家に住んでいるのだから、どこも
彼処
(
かしこ
)
も
埃
(
ほこり
)
だらけで、白昼に
鼠
(
ねずみ
)
が駈け廻っている。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
また彼が言出すかと思うと、
何処
(
どこ
)
も
彼処
(
かしこ
)
も後家さんばかりに成っちゃった——なんて。私は怒ってやった
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
避難すべき人は宵のうちから避難し尽したはずであるのに、なお逃げおくれた者があると見えて、
彼処
(
かしこ
)
の屋根の上や
此処
(
ここ
)
の木の枝で、悲鳴の声が連続して起ります。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
其の間に此処に一つ、
彼処
(
かしこ
)
に二つ、
掌
(
てのひら
)
に載る程の白帆が走るともなく霞の奥にかくれ行く其の景色は、
如何様
(
どんな
)
にゆかしくお光の心に覚えたであろう。それ夏が来る。
漁師の娘
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
古井の諸氏は
松卯
(
まつう
)
、
妾
(
しょう
)
は
原平
(
はらへい
)
に宿泊し、その他の諸氏も
各〻
(
おのおの
)
旅宿を定め、数日間は
此処
(
ここ
)
の招待、
彼処
(
かしこ
)
の宴会と日夜を分たざりしが、郷里の歓迎上都合もある事とて
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
彼処
(
かしこ
)
に入る身の
生涯
(
せうがい
)
やめられぬ得分ありと知られて、来るも来るも此処らの町に細かしき
貰
(
もら
)
ひを心に止めず、裾に
海草
(
みるめ
)
のいかがはしき乞食さへ
門
(
かど
)
には立たず
行過
(
ゆきすぎ
)
るぞかし
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「爰も」という以上、何箇所だかわからぬけれども、とにかく複数であることは疑を容れぬ。
彼処
(
かしこ
)
でも柚味噌の匂を嗅ぎ、ここでも柚味噌の匂を嗅ぐという意味かと思われる。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
あの辺は何処も
彼処
(
かしこ
)
もすつかり雨だよ。何故つて、あの辺は雲に包まれてゐるからさ。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
観海寺
(
かんかいじ
)
は
彼処
(
かしこ
)
、商船会社の支店は
其処
(
そこ
)
、とボーイが指さしているうちに桟橋に着く。
別府温泉
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
しかも駒に跨がりて、
彼処
(
かしこ
)
に佇む日の限り、汝にもまた天国の
安息
(
やすらひ
)
なきを心せよ!
ディカーニカ近郷夜話 後篇:03 怖ろしき復讐
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
違棚
(
ちがいだな
)
の上の手箱を開けて、探すと金がない。斬るのはうまく行ったが、斬ったらあの手箱からと考えていたのが外れたから、
彼処
(
かしこ
)
か
此処
(
ここ
)
かと探すが、こうなると気がせく。薄気味も悪い。
相馬の仇討
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
人のいうなる死は
爰
(
ここ
)
に、人のいうなる生は
彼処
(
かしこ
)
に、しかも壮と厳と、美と麗と、人が自らせばめた社会の思いおよばぬものは、わが立つ所ならずして、いずれにあるのだろう、七時すぎ
雪の武石峠
(新字新仮名)
/
別所梅之助
(著)
サブライムとは形の判断にあらずして、想の領分なり、即ち前に云ひたる池をめぐりてよもすがらせる如き人の、一躍して自然の懐裡に入りたる後に、
彼処
(
かしこ
)
にて見出すべき朋友を言ふなり。
人生に相渉るとは何の謂ぞ
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
彼処
(
かしこ
)
に到り
此処
(
ここ
)
を
訪
(
と
)
い、
業
(
ぎょう
)
にあり
就
(
つ
)
かんと欲する時、我貧なるが故に彼より要求さるる条件多くして我の受くべき報酬は
少
(
すくな
)
く、我は
売人
(
うりて
)
にして彼は
買人
(
かいて
)
なれば
直段
(
ねだん
)
を定むるは全く彼にあり
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
それが今はもう石油が出なくなったので、人々は
此方
(
こちら
)
の小屋を見捨てて、
彼処
(
かしこ
)
に移ってしまったのだろう。この桶も、もう
箍
(
たが
)
が腐って、石油を
容
(
い
)
れる役には立たないので
捨
(
すて
)
てあるものと見える。
暗い空
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
私はその紙を
悉
(
ことごと
)
く焼き捨てて
居
(
お
)
りましたが、こうなると、いつ何時妹の秘密が世間へ知れてしまうかもしれませんから、私たちは
彼処
(
かしこ
)
に五日
此処
(
ここ
)
に四日と転宅ばかりして歩いたので御座います。
呪われの家
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
吾々の集めた品物に注意する人々は、
此処
(
ここ
)
に
彼処
(
かしこ
)
にふえた。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
彼処
(
かしこ
)
に笑めるは一人の不可解なる精霊の所有者である
人面凝視
(新字新仮名)
/
今野大力
(著)
「何処も
彼処
(
かしこ
)
も申分ございません」
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
われ、芸術を
彼処
(
かしこ
)
に伴ひ
行
(
ゆ
)
かん
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
此処
(
ここ
)
と
彼処
(
かしこ
)
と 所は 異れ
在りし日の歌:亡き児文也の霊に捧ぐ
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
何処
(
どこ
)
も
彼処
(
かしこ
)
も臭くする!
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
その市の姫十二人、御殿の正面に
揖
(
ゆう
)
して
出
(
い
)
づれば、神官、威儀正しく
彼処
(
かしこ
)
にあり。
土器
(
かわらけ
)
の
神酒
(
みき
)
、結び昆布。やがて
檜扇
(
ひおうぎ
)
を授けらる。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼
常用漢字
中学
部首:⼻
8画
処
常用漢字
小6
部首:⼏
5画
“彼処”で始まる語句
彼処此処
彼処等
彼処辺
彼処比処