“さえ”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
43.6%
29.8%
12.8%
小枝3.2%
2.1%
道祖2.1%
2.1%
1.1%
小江1.1%
左枝1.1%
1.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
彼女をさえぎろうとするお延の出鼻をおさえつけるような熱した語気で、自分の云いたい事だけ云ってしまわなければ気がすまなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
このかすかな梅の匂につれて、さえ返る心の底へしみ透って来る寂しさは、この云いようのない寂しさは、一体どこから来るのであろう。
或日の大石内蔵助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
こんな話に時の移るのを忘れているうちに、庭にさえずる小禽ことりの声も止んで、冬の日影はほど薄くなった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
土堤どての枯草、こごりつき白くきびしく、両側もろがは立枯並木たちがれなみき、いよいよに白くさびしく、雪空の薄墨色にこまごまと梢明こずゑあかり、下空したぞら小枝さえのほそ枝立ちつづき、見れども飽かず、入り交り網目して透く。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
下心したごころ。——天下てんか諸人しよにん阿呆あはうばかりぢや。さえ不才ふさえもわかることではござらぬ。」
孔雀 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
奥州名取郡おうしゅうなとりのこおり笠島かさじま道祖さえは、都の加茂河原かもがわらの西、一条の北のほとりに住ませられる、出雲路いずもじ道祖さえ御娘おんむすめじゃ。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
なあ、俺も不浄が稼業しょうべえでね、根掘り葉掘り嫌なことを言い出すかも知れねえが、気にさえねえでおくんなせえよ。乙にかくしたり絡んだりされるてえと事あ面倒だ。一つ直に談合しようじゃごわせんか。
九八 路の傍に山の神、田の神、さえの神の名を彫りたる石を立つるは常のことなり。また早池峯山・六角牛山の名を刻したる石は、遠野郷にもあれど、それよりも浜にことに多し。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
もし小江さえの葦蟹を貰ったら辛塩を塗り臼でついて塩にして永く貯えの珍味とする。こういう才覚が母によって仕込まれた。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「なるほど、事情を知らん君は、そう思うだろうがね。いまの男を、君は誰だと思う。知っておるじゃろう——つい四、五年まえ、主任検事級で鳴らした左枝さえ八郎という方を……」
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
何か斯う、独占出来得べきものを、人にさえぎられて居ると云ったような心持がはっきり感じられた。