“とざ”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
63.3%
25.4%
3.8%
戸閉2.3%
2.0%
0.6%
0.3%
封鎖0.3%
0.3%
0.3%
窻閉0.3%
0.3%
閉塞0.3%
閉鎖0.3%
0.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
二重にとざされた戸の外には風の音もしないので、汽車が汽笛を鳴らして過ぎる時だけ、実世間の消息が通うように思われるのである。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
午すこし過ぎた頃になると、空は見る間に灰色の雲がとざしてしまった。やがて雪が降りはじめた。日の暮れるころから、風が少し出た。
土淵村にての日記 (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
これまではたとえ同志であろうと、拙者大事をとりまして、その軍用金の所在については、口をとざしておりましたが、もう申してもよろしゅうござろう。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
見るからに静かそうな、一戸の寒亭が戸閉とざしてある。古びた戸額とがくの文字を仰ぐと、船板に白緑青びゃくろくしょう、題して「錦霜軒きんそうけん」としるしてある。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新しい墓の前には、燃え尽きた線香の灰が残つてゐるだけであつた。供へた花が、凋れてゐるだけであつた。美奈子の心を、寂しい失望が一面にとざしてしまつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
朱荷曲池しゆかきよくちのあと、緑萍りよくへう蒼苔さうたいふかくとざして、寒蛩かんきよう喞々そく/\たり、螢流けいりう二三點にさんてん
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
またいわく小屋に小馬を入れ戸をとざして内に横扃よこさし外に懸金かけがねをさし置くにいつも小馬が戸外に出居るを不思議と主人がうかがうに小馬まず自らさしを抜き嘶くと
この騾の智慧非凡だったから今少し打ちやり置いたらかくて開いた門戸をとざして夜の明けぬ間にうまやかえるくらいの芸当は苦もなく出来たはずだが、制禁厳重となりてその事に及ばなんだ云々と。
まったくこの谿谷は、冬中雪に封鎖とざされているものらしかった。
眼を開く (新字新仮名) / 夢野久作(著)
はや雲深くとざされ、西穂高が間々まま影を現わすより、蒲田がまた谷へ下りかけた事と知れ、折り返して頂上にで、東北へと尾根伝いに下る。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
その両眼はとざされていた。彼女は祈っているのであった。眼の縁を陰影かげ隈取くまどっていた。陰影を一層濃くしているのは、眼瞼まぶたからはみ出した睫毛まつげであった。唇が半分開いていた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
晩春おそはる窻閉とざ片側街かたかはまち
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
空しく結氷にとざされて南海シドニーの郊外に、涙を呑んで故国よりの吉報を待っておる探検隊一行の心中は、実に気の毒に堪えぬではないか
園部の家でなおときどき戸を開閉あけたてする音がするばかり、世間一体は非常に静かになった。静かというよりは空気が重く沈んで、すべての物を閉塞とざしてしまったように深更しんこうの感じが強い。
新万葉物語 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
捕われ人たちのいる部屋部屋の窓と、その扉とを閉鎖とざしていた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
されどいかがしてこれを五一せいし得ん。只いへごとに五二暮をかぎりて堅くとざしてあれば、近曾このごろ国中くになかへも聞えて、人の往来いききさへなくなり侍るなり。