とざ)” の例文
平次ににらまれて、ガラッ八は危うく口をとざしました。放っておいたら——こいつア大笑いだ——とでも言ったことでしょう。
これまではたとえ同志であろうと、拙者大事をとりまして、その軍用金の所在については、口をとざしておりましたが、もう申してもよろしゅうござろう。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こうして肩を並べて行くところ、落人おちゅうどめいた芝居気に与惣次はいい心持にしんみりしてしまったが、掃部かもんへ用達しに行った帰途だとのほか、女は口をとざして語らなかった。
かつて雪子の父と山林の境界で裁判沙汰さいばんざたになるまで争つたのだから。でも固く口をとざしてゐた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
われ/\の国の文学はいはひ詞以前は、口をとざして語らざるしゞまのあり様に這入る。此が猿楽其他の「ベシミの面」の由来である。其が一旦開口すると、止めどなく人に逆ふ饒舌の形が現れた。
しばらく押問答しましたが、この一事に触れると、喜平は田螺たにしのように口をとざして、一言も密告者を明かそうとしません。
白洲しらすに出ても大之進は口をとざして語らなかった。
平次に睨まれて、ガラツ八は危ふく口をとざしました。放つて置いたら——こいつア大笑ひだ——とでも言つたことでせう。
平次はそれへさそひをかけましたが、一度とざされた娘の唇は、容易に開きさうもありません。
娘は何やら物言いた気ですが、何に脅えたか、また口をとざしてしまいました。
娘は何やら物言ひた氣ですが、何に脅えたか、又口をとざしてしまひました。
彦太郎はプツリと話をきつて、頑固ぐわんこらしく口をとざすのです。
平次の聲は辛辣に岩松の口をとざしました。
平次の声は辛辣しんらつに岩松の口をとざしました。