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とざ
ふりがな文庫
“
閉
(
とざ
)” の例文
久
(
ひさ
)
しぶりで、
恁
(
か
)
うして
火
(
ひ
)
を
置
(
お
)
かせたまゝ、
氣
(
き
)
に
入
(
い
)
りの
小間使
(
こまづかひ
)
さへ
遠
(
とほ
)
ざけて、ハタと
扉
(
ひらき
)
を
閉
(
とざ
)
した
音
(
おと
)
が、
谺
(
こだま
)
するまで
響
(
ひゞ
)
いたのであつた。
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
午すこし過ぎた頃になると、空は見る間に灰色の雲が
閉
(
とざ
)
してしまった。やがて雪が降りはじめた。日の暮れるころから、風が少し出た。
土淵村にての日記
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
と云うのは、
現場
(
げんじょう
)
が
扉
(
ドア
)
と鍵で
閉
(
とざ
)
されていたにもかかわらず、艇内をくまなく探しても、八住を刺した凶器が発見されなかったのである。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
前に評釈した「
飛弾山
(
ひだやま
)
の
質屋
(
しちや
)
閉
(
とざ
)
しぬ
夜半
(
よわ
)
の冬」と同想であり、
荒寥
(
こうりょう
)
とした寂しさの中に、或る人恋しさの郷愁を感じさせる俳句である。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
二階は全部
何時
(
いつ
)
も借手がなく、雨戸は
閉
(
とざ
)
されがちであった。時たま、造花屋で大物の造花を
拵
(
こしら
)
える時に雨戸が開くくらいだった。
三階の家
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
▼ もっと見る
きょうまでの二十年間、胸をさびしく
閉
(
とざ
)
していた孤独の
扉
(
と
)
を、ふいに叩かれた驚きと歓びには、幾分の狼狽さえ交じっていた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
茂吉の「わが
体
(
からだ
)
机に押しつくるごとくにしてみだれ
心
(
ごころ
)
をしづめつつ
居
(
を
)
り」「
息
(
いき
)
づまるばかりに
怒
(
いか
)
りしわがこころしづまり行けと部屋を
閉
(
とざ
)
しつ」
茂吉の一面
(新字新仮名)
/
宇野浩二
(著)
向嶋のみならず、新宿、
角筈
(
つのはず
)
、
池上
(
いけがみ
)
、
小向井
(
こむかい
)
などにあった梅園も皆
閉
(
とざ
)
され、その中には
瓦斯
(
ガス
)
タンクになっていた処もあった。
葛飾土産
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
二三日
憂欝
(
いううつ
)
な考へに
閉
(
とざ
)
され乍ら、何時八五郎に脅かされるかも分らない心持で、此の報告を待つて居た平次だつたのです。
銭形平次捕物控:150 槍の折れ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
新子が、黙って聴いているので美和子もさすがに、気がさしたのか、ちょっとの間
口
(
くち
)
を
閉
(
とざ
)
していたが、やがてしんみりと
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
入口の看守はさみしげに座り、ユヅリハの葉柄の赤きが暮れんとして、
閉
(
とざ
)
さぬくぐりの間よりかなたの街の薄ら明をさしのぞき……さしのぞく……
春の暗示
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
日がな一日
侘
(
わび
)
しい単調な物音が自分の部屋の障子に響いて来たり、果しもないような
寂寞
(
せきばく
)
に
閉
(
とざ
)
される思いをしたりして、しばらくもう人も
訪
(
たず
)
ねず
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
されど長蔵はなお不思議とも思わず、その戸の
隙
(
すき
)
に手を差し入れて中を探らんとせしに、中の
障子
(
しょうじ
)
は
正
(
まさ
)
しく
閉
(
とざ
)
してあり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
優雅な
和
(
なご
)
やかな、しかし、やはりうち
閉
(
とざ
)
された重くるしさを感じます。日本の春の桜は人の
眉
(
まゆ
)
より上にみな咲きます。
病房にたわむ花
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
大火山の噴煙のような入道雲がもくもくと大空目がけて渦を
捲
(
ま
)
いて昇る。そして帝都は
遂
(
つい
)
に四方から起った大火災によって黒煙に
閉
(
とざ
)
されてしまった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
といつて、
例
(
れい
)
の
車
(
くるま
)
をさし
寄
(
よ
)
せると、
不思議
(
ふしぎ
)
にも
堅
(
かた
)
く
閉
(
とざ
)
した
格子
(
こうし
)
も
土藏
(
どぞう
)
も
自然
(
しぜん
)
と
開
(
あ
)
いて、
姫
(
ひめ
)
の
體
(
からだ
)
はする/\と
出
(
で
)
ました。
竹取物語
(旧字旧仮名)
/
和田万吉
(著)
知らぬ間に川上の名義で借入れられた
莫大
(
ばくだい
)
な借金が残っているばかり、約束になっているといった劇場へいって見れば
釘附
(
くぎづ
)
けになって
閉
(
とざ
)
されている。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
年中
(
ねんじゆう
)
雪
(
ゆき
)
に
閉
(
とざ
)
されてゐた
山頂
(
さんちよう
)
に
夏
(
なつ
)
が
來
(
き
)
て、
雪
(
ゆき
)
が
溶
(
と
)
けると、すぐその
下
(
した
)
には
可憐
(
かれん
)
な
草
(
くさ
)
が
目
(
め
)
も
覺
(
さ
)
めるばかりに
咲
(
さ
)
き
出
(
い
)
でます。
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
その日はある高貴なお方の御来場を
仰
(
あお
)
ぐというので、午後二時から、各陳列場の入口を
閉
(
とざ
)
し、一般観衆は
暫
(
しばら
)
くの間、余興場の立並ぶ
一廓
(
いっかく
)
へと追い出された。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
其外
(
そのほか
)
の百
姓家
(
しやうや
)
とても
數
(
かぞ
)
える
計
(
ばか
)
り、
物
(
もの
)
を
商
(
あきな
)
ふ
家
(
いへ
)
も
準
(
じゆん
)
じて
幾軒
(
いくけん
)
もない
寂寞
(
せきばく
)
たる
溪間
(
たにま
)
! この
溪間
(
たにま
)
が
雨雲
(
あまぐも
)
に
閉
(
とざ
)
されて
見
(
み
)
る
物
(
もの
)
悉
(
こと/″\
)
く
光
(
ひかり
)
を
失
(
うしな
)
ふた
時
(
とき
)
の
光景
(
くわうけい
)
を
想像
(
さう/″\
)
し
給
(
たま
)
へ。
湯ヶ原より
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
だんだんに夏らしい色を帯び出して来た美しい空が、私にだけ、突然物悲しく
閉
(
とざ
)
されてしまったように見えた。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
俥は
直
(
じき
)
に大通の真中へ出ていった。そこに石造の門口を
閉
(
とざ
)
した旅館があったり、大きな
用水桶
(
ようすいおけ
)
をひかえた銀行や、半鐘を備えつけた警察署があったりした。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
黄い埃塵が
北国
(
ほくこく
)
の冬の吹雪のやうに堅く
閉
(
とざ
)
したホテルの硝子窓の内までザラザラと吹き込んで来るのを見た。
犬
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
そこで、いったん怒りが鎮まれば聞き置かるべきことも、いっさい耳を
閉
(
とざ
)
され、お詫びがかなうべきこともかなわない形勢に悪化したのは是非もありません。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一年間の大半は雪に
閉
(
とざ
)
されている寒帯地方、また温帯地方にあっても一年中
殆
(
ほとん
)
ど同じような時候の続く北米カリフォルニア州の如きものもあるのでありますが
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
そして内側から
扉
(
ドア
)
を
閉
(
とざ
)
しておくのですよ。階上へ行つたらソフィイを起すのですよ、明日時間におくれないやうに起してくれるようにと頼むことにかこつけて。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
翌朝になると
早速
(
さっそく
)
裏木戸や
所々
(
ところどころ
)
と人の入った様な
形跡
(
あと
)
を尋ねてみたが、
何
(
いず
)
れも皆固く
閉
(
とざ
)
されていたのでその
迹方
(
あとかた
)
もない、彼自ら実は少し薄気味悪くなり出したが
暗夜の白髪
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
卯平
(
うへい
)
は
庭
(
には
)
に
立
(
た
)
つた
儘
(
まゝ
)
、
空虚
(
から
)
になつてさうして
雨戸
(
あまど
)
が
閉
(
とざ
)
してある
勘次
(
かんじ
)
の
家
(
いへ
)
を
凝然
(
ぢつ
)
と
見
(
み
)
た。
家
(
いへ
)
は
窶
(
やつ
)
れて
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
支那人の給仕人が丸太作りの灰色の窓を
閉
(
とざ
)
すと、客のない閑散とした部屋々々は
妾
(
わたし
)
達と胡月の
女将
(
おかみ
)
である四十前後の小柄な日本婦人花子とが
囲炉裏
(
いろり
)
をかこんでいた。
バルザックの寝巻姿
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
直射光線が
気疎
(
けうと
)
い回折光線にうつろいはじめる。彼らの影も私の脛の影も不思議な鮮やかさを帯びて来る。そして私は
褞袍
(
どてら
)
をまとって
硝子
(
ガラス
)
窓を
閉
(
とざ
)
しかかるのであった。
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
地球の極地に近い地方において
土葬
(
どそう
)
または氷に
閉
(
とざ
)
されて葬られている死体を掘りだし、これら死人の身体を適当に縫合わして、電撃生返り手術を
施
(
ほどこ
)
してみることである。
三十年後の世界
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
今朝
(
けさ
)
早く、今一度参ります心組で、手袋をはめながら窓を
閉
(
とざ
)
し、電燈を消して廊下に出ましたところ、最前案内を頼みましたボーイが立ち聴き致しておりましたらしく
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
塩崎の家にしても小さいながら朱塗の門を
閉
(
とざ
)
して、梧桐や
蓮
(
はす
)
の茂つた、まるで日時計のやうにひつそりした中庭を持つてゐるのだ。中庭があると云つて別に
贅沢
(
ぜいたく
)
ぢやない。
南京六月祭
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
それをありのままに「蒸しうもの歌
並
(
ならびに
)
反歌」と書き添えて、それなりに控帳を
閉
(
とざ
)
して、
擲
(
な
)
げ
棄
(
す
)
てるようにして、側の方へ
押
(
お
)
し
遣
(
や
)
った。そしてちと長たらしいなと
呟
(
つぶや
)
いている。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
冷吉は、右の目は
閉
(
とざ
)
してあるまゝで、左の目だけ開けて起き直つてゐるのだけれど、もとより、例の水の底のやうに茫つとした
灯
(
あかり
)
がもや/\する外には何にも見えないのであつた。
赤い鳥
(旧字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
初めて自分の分身として
光
(
ひかる
)
を見た時の満足にも劣らない満足さを感じるのですが、やはりあの時のやうに目を
開
(
あ
)
いて居ない、
真紅
(
まつか
)
な唇は柔かく
閉
(
とざ
)
されて鼻の側面が
少女
(
をとめ
)
のやうである
遺書
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
源吉は、胃の中のものが、
咽喉元
(
のどもと
)
にこみ上って、クラクラッと
眩暈
(
めまい
)
を感ずると、
周囲
(
あたり
)
が、急に黒いもやもやしたものに
閉
(
とざ
)
され、後頭部に、いきなり、
叩
(
たた
)
き
前倒
(
のめ
)
されたような、激痛を受けた。
鉄路
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
窓の皆
閉
(
とざ
)
さるる苦しさ、港なる日は船室にあるにもあられぬために
候
(
さふらふ
)
。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
誰だってああした苦しみの最中には、急にあきらめがつきやしないからな。だが盲になって不断の闇に
閉
(
とざ
)
されると、眠っている人のように、却って物事がはっきりと見えて来て、気が静まるものだよ。
暗中の接吻
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
急がしい あま足は 四方の 山々を
閉
(
とざ
)
す
泡鳴五部作:01 発展
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
閉
(
とざ
)
された幼稚園の鉄の門の下には
心の姿の研究
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
貫一ははたと
閉
(
とざ
)
して急ぎ返りつ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
町木戸の
閉
(
とざ
)
される合図だ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
久しぶりで、
恁
(
こ
)
うして火を置かせたまゝ、気に入りの小間使さへ遠ざけて、ハタと
扉
(
ひらき
)
を
閉
(
とざ
)
した音が、
谺
(
こだま
)
するまで響いたのであつた。
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
時折、あの前を通りまして、それとなく声をかけてみまするが、いつも、御家来金吾様と共に、戸を
閉
(
とざ
)
した
限
(
き
)
りでございます。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
紅葉
(
こうよう
)
小波
(
さざなみ
)
の門人ら折々宴会を催したるところなり。
鰻屋
(
うなぎや
)
の
大和田
(
おおわだ
)
また箱を入れたりしが陸軍の
計吏
(
けいり
)
と芸者の無理心中ありしより店を
閉
(
とざ
)
したり。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
菊坂の六軒長屋は、わけの解らぬ不安に
閉
(
とざ
)
されたまゝ、町役人の監視の下に、お六の
葬
(
とむら
)
ひの仕度を急いで居りました。
銭形平次捕物控:120 六軒長屋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
働き盛りの男子は皆
畠
(
はたけ
)
や牧場を去り、馬は徴発され、小屋も
空
(
むな
)
しくなり、陶器の工場も
閉
(
とざ
)
され、商家も多く休み
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
冬中
閉
(
とざ
)
されてあった
煤
(
すす
)
けた部屋の
隅々
(
すみずみ
)
まで、
東風
(
こち
)
が吹流れて、町に
陽炎
(
かげろう
)
の立つような日が、
幾日
(
いくか
)
となく続いた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
あす教会を
閉
(
とざ
)
して、すぐ松本へ立つとか云う事で、神父は私と話をしながらも、ときどき荷拵えをしている小使のところへ何か云いつけに立って行ったりした。
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
“閉”の意味
《名詞》
(とず) 暦注の十二直の一つ。堤を築くことなどに吉、柱立て、婚姻、鍼灸などに凶という日。
(出典:Wiktionary)
閉
常用漢字
小6
部首:⾨
11画
“閉”を含む語句
閉塞
閉籠
幽閉
閉口
開閉
閉場
閉切
戸閉
閉込
閉鎖
開閉器
密閉
閉出
閉伊川
閉店
上閉伊郡
密閉室
大閉口
閉扉
本開閉器
...