“とじ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:トジ
語句割合
刀自27.8%
19.4%
徒爾18.1%
途次8.3%
5.6%
徒事4.2%
戸閉4.2%
杜氏2.8%
老女2.8%
兎耳1.4%
屠児1.4%
戸締1.4%
閉場1.4%
1.4%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
当時、京都には、妓王、妓女ぎじょと呼ばれる、白拍子しらびょうしの、ひときわ衆に抜きん出た姉妹があった。その母も刀自とじと呼ばれ、昔、白拍子であった。
その僧は、柾木家から、寺へ、焼いてくれと持って来た由来書ゆらいがきを序文に書きたして、単なるとじものを一層書物らしくしてしまった。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
粽の種類を列挙するのは、風俗誌の領分に属するにしても、各地に固有の粽が存在する以上、俳人の観察がそこに及ぶのも徒爾とじではあるまい。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
ことに高い方のM百貨店は、僕の先祖代々ろくんだ北越百万石の領主が、東照神君とうしょうしんくん御霊みたま詣での途次とじ、お供先が往来の真ン中で、とびの者と喧嘩になった為めに
青バスの女 (新字新仮名) / 辰野九紫(著)
顔に顔をもたせてゆるくとじたまいたる眼の睫毛まつげかぞうるばかり、すやすやと寝入りていたまいぬ。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これ無用の徒事とじたるのみに非ず、複雑なる北斎の作品に関する複雑なる評論をして更に一層の繁雑をきたさしむるのきらいあればなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「好きなこともよう出来ず、さりとて政事まつりごとからは戸閉とじめを喰い、せめて歌でもむか、書でも書くか。そこよりほかに力の出し場がないなどということが……アハハハハ、のう坊主、あろかいな」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひとり古風な腹鼓はらづつみのみにあらず、汽車が開通すれば汽車の音、小学校のできた当座は学校の騒ぎ、酒屋が建てば杜氏とじの歌の声などを、真夜中に再現させて我々の耳を驚かしています。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
かよはせぶみをおこすだけがせめてもの手段で、其さへ無事に、姫の手に届いて披見せられるやら、自信を持つことが出来なかつた。事実、大抵、女部屋の老女とじたちが引つたくつて、渡させなかつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
その枝は不二と愛鷹あしたかとを振り分けて、ことに愛鷹の両尖点りやうせんてん(右なるは主峰越前嶽にして位牌ゐはいヶ嶽は左のこぶならむ)は、をどつて梢に兎耳とじを立てたり
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
積弊の存するは、彼らが便益の存する所。彼らに向って改革の味方たらんことを望むは、屠児とじに向って悉く献身的の天人たらんことを望むなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
戸締とじめをしつかりすることさへも、うつかりしてゐたのでせうか?
それは太夫元がふと恐しい密謀を洩れ聞いたので、前途のある玉之助のために、実入みいりのよい興行を閉場とじてしまったのであった。
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
宗吉はかくてまた明神の御手洗みたらしに、更に、氷にとじらるる思いして、悚然ぞっと寒気を感じたのである。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)