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遮
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さえ
ふりがな文庫
“
遮
(
さえ
)” の例文
起
(
た
)
ちかける葉子は彼の体に寄って来た。別れのキスでもしようとするように。庸三はあわてて両手でそれを
遮
(
さえ
)
ぎりながら身をひいた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼女を
遮
(
さえ
)
ぎろうとするお延の出鼻を
抑
(
おさ
)
えつけるような熱した語気で、自分の云いたい事だけ云ってしまわなければ気がすまなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
家の内部は
結
(
ゆ
)
いめぐらした竹垣に
遮
(
さえ
)
ぎられて見えない。高い屋根ばかりが、初夏の濃緑な南国の空を
画
(
かぎ
)
っている。左手に海が光って見える。
屋上の狂人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その瞬間、彼は彼のところからは木の枝に
遮
(
さえ
)
ぎられて見えない小径の上を二台の自転車が走って来て、そのロッジの前に停まるのを聞いた。
ルウベンスの偽画
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「ちょっとお待ち下さい」玄一郎は相手の言葉を
遮
(
さえ
)
ぎった、「……お話を伺うまえにおひき合せ申したい者がございますから」
山だち問答
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
あなたのお母様ばかりでなく、全世界の母親は自分の娘が戦争を誘発するような女流軍事飛行家になるのを
遮
(
さえ
)
ぎるでしょう。
母と娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
予審判事は、原田老教授の言葉を中途で
遮
(
さえ
)
ぎって、たしなめるように、それでいて、厳然たる命令的な語調で言った。
予審調書
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
博士は大隅の
覚醒
(
かくせい
)
に、なんの愕きの色もあらわさなかった。そして
躊躇
(
ちゅうちょ
)
するところもなく、オメガ光線を
遮
(
さえ
)
ぎってあるシャッターの
釦
(
ぼたん
)
に手をかけた。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
どうも変さな、何でも
伏臥
(
うつぶし
)
になって居るらしいのだがな、眼に
遮
(
さえ
)
ぎるものと云っては、唯
掌大
(
しょうだい
)
の地面ばかり。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
あなたに対するお手数料はまずそれだけに
極
(
き
)
めておきまして、何はさておき、
国友
(
くにとも
)
商会の願書を途中で
遮
(
さえ
)
ぎって、一時も早く私の方のを官へ差し出すが上分別
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
始めは繋り合う木の葉に
遮
(
さえ
)
ぎられているが、次第次第に烈しく落ちて、枝がぬれ、幹がぬれ、草がぬれ、自分らの
纏
(
まと
)
っている
糸径
(
いとだて
)
がぬれ、果ては衣服にも
沁
(
し
)
み
透
(
とお
)
る。
木曽御嶽の両面
(新字新仮名)
/
吉江喬松
(著)
障子はいっぱい
開
(
あ
)
いているし、十兵衛の声は大きいのである。紅梅だの
連翹
(
れんぎょう
)
だの、庭木はそこを
遮
(
さえ
)
ぎっているが、又十郎の部屋からは、手に取るような
一間
(
ひとま
)
だった。
柳生月影抄
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
俊乗がやがて堕落することは眼にみえて居りましたが、わたくしにはそれを
遮
(
さえ
)
ぎる力がありません。
半七捕物帳:66 地蔵は踊る
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その時、向うの丘の上を、一
疋
(
ぴき
)
の大きな白い鳥が、日を
遮
(
さえ
)
ぎって飛びたちました。
タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
此処
(
ここ
)
から槍までは、主系の連峰を
辿
(
たど
)
るのだ、即ち信・飛の国界、処々に石を積み重ねた測点、林木の目を
遮
(
さえ
)
ぎるものはなく、見渡す限り、
※※
(
らいら
)
たる岩石、晴天には槍がよく見えるから
穂高岳槍ヶ岳縦走記
(新字新仮名)
/
鵜殿正雄
(著)
幽かに
天塩
(
テシオ
)
の国の山々を見ることが出来た、西の方は
礼文島
(
レブンとう
)
を
鮮
(
あざや
)
かに見ることが出来て、その外にはいわゆる日本海で何にも眼に
遮
(
さえ
)
ぎるものはなく、ただ時々雲の動くのを見るばかりである
利尻山とその植物
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
建込
(
たてこ
)
んだ表通りの人家に
遮
(
さえ
)
ぎられて、すぐ
真向
(
まむかい
)
に立っている
彼
(
か
)
の高い本願寺の屋根さえ、
何処
(
どこ
)
にあるのか分らぬような静なこの
辺
(
へん
)
の裏通には、正しい人たちの決して案内知らぬ
横町
(
よこちょう
)
が幾筋もある。
銀座
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
鷲尾が云うと、相手はこけた
頬骨
(
ほおぼね
)
を
尖
(
とが
)
らせて
遮
(
さえ
)
ぎるように
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
遮
(
さえ
)
ぎるようにして邦夷は問いかえした。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
お俊はあわてて
遮
(
さえ
)
ぎった。
童話
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
神戸牧師は
遮
(
さえ
)
切った。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
安之助はよく宗さんにも話して見ようと答えると、小六はたちまちそれを
遮
(
さえ
)
ぎって、兄はとうてい相談になってくれる人じゃない。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
暑さを
遮
(
さえ
)
ぎる大きな松の
樹
(
き
)
が
疎
(
まば
)
らに
聳
(
そび
)
え立っていた。幼い時の楽しい思い出話に
倦
(
う
)
まない葉子にとって、そこがどんなにか懐かしい場所であった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
お笛がそこまで云うと、長吉はせせら笑ってなにか口を出そうとした、お笛はそれを
遮
(
さえ
)
ぎるようにこう云った。
明暗嫁問答
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
しかしその氷倉だという異様な
恰好
(
かっこう
)
をした藁小屋に
遮
(
さえ
)
ぎられて、その家らしいものの一部分すら見えないところを見ると、
恐
(
おそ
)
らく小さな
掘立
(
ほったて
)
小屋かなんかに
違
(
ちが
)
いなかった。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
どうしてこれを、
遮
(
さえ
)
ぎられよう。あッというますらありはしない。
茫々
(
ぼうぼう
)
たる
牧
(
まき
)
の平原を、東へ、ただ見る四騎、八頭の駒は、もう星の夜の
彗星
(
すいせい
)
のごとく遠く小さくなっていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
青年が、何かを答えようとしたとき、女は
突如
(
いきなり
)
彼を
遮
(
さえ
)
ぎった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「仏名を唱えよ。そは
遮
(
さえ
)
られぬ光なればなり」
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そは
遮
(
さえ
)
ぎられたる風の静なる
顫動
(
せんどう
)
向嶋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
梅子は何にも云わずに、額に八の字を寄せて、笑いながら手を振り振り、代助の言葉を
遮
(
さえ
)
ぎった。そうして、向うからこう云った。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
葉子は口笛を吹きながら、のそりのそりと砂浜を歩いていたが、ふと振り返ると、マッチをつけかねていた庸三に寄り添って、
袖
(
そで
)
で風を
遮
(
さえ
)
ぎった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
吉村の母はどう思ってかにわかに
遮
(
さえ
)
ぎった。
日本婦道記:萱笠
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
なお 琵琶を抱きて 半ば
面
(
おもて
)
を
遮
(
さえ
)
ぎる
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼らは
遮
(
さえ
)
ぎる事なしに、その輝やきの説明を、彼女の言葉から聴こうとした。彼らの予期と同時に、その言葉はお秀の口を
衝
(
つ
)
いて出た。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
図書助が低い抑えたような声で
遮
(
さえ
)
ぎった。
半之助祝言
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
窓は
三
(
みっ
)
つ
共
(
とも
)
明け放ってあった。室が三階で前に目を
遮
(
さえ
)
ぎるものがないから、空は近くに見えた。その中に
燦
(
きら
)
めく星も遠慮なく光を増して来た。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ちょっと待てよ」と啓三が
遮
(
さえ
)
ぎった
ばちあたり
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
僕はやがてちょっと町へ出て来るという
口実
(
いいまえ
)
の
下
(
もと
)
に、午後の暑い日を
洋傘
(
こうもり
)
で
遮
(
さえ
)
ぎりながら別荘の附近を順序なく
徘徊
(
はいかい
)
した。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ここまで来たお秀は急に後を
継
(
つ
)
ぎ
足
(
た
)
した。二人の
中
(
うち
)
の一人が自分を
遮
(
さえ
)
ぎりはしまいかと恐れでもするような様子を見せて。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
右手は
屋
(
や
)
の
棟
(
むね
)
で
遮
(
さえ
)
ぎられて、見えぬけれども、地勢から察すると、だらだら
下
(
お
)
りに風呂場の方へ落ちているに相違ない。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それから一時間すると、大地を染める太陽が、
遮
(
さえ
)
ぎるもののない
蒼空
(
あおぞら
)
に
憚
(
はばか
)
りなく
上
(
のぼ
)
った。御米はまだすやすや寝ていた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
第三学年にもこの講義の稿を続くべかりしを種々の事情に
遮
(
さえ
)
ぎられて果さず、
已
(
すで
)
に講述せる部分の意に満たぬ所、足らざる所を書き直さんとしてまた果さず
『文学論』序
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
今余が面前に
娉婷
(
ひょうてい
)
と現われたる姿には、一塵もこの
俗埃
(
ぞくあい
)
の眼に
遮
(
さえ
)
ぎるものを帯びておらぬ。常の人の
纏
(
まと
)
える
衣装
(
いしょう
)
を脱ぎ捨てたる
様
(
さま
)
と云えばすでに
人界
(
にんがい
)
に
堕在
(
だざい
)
する。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
夜中郵便
(
やちゅうゆうびん
)
と書いて
板塀
(
いたべい
)
に穴があいているところを見ると夜は
締
(
しま
)
りをするらしい。正面に
芝生
(
しばふ
)
を
土饅頭
(
どまんじゅう
)
に盛り上げて
市
(
いち
)
を
遮
(
さえ
)
ぎる
翠
(
みどり
)
を
傘
(
からかさ
)
と張る松を
格
(
かた
)
のごとく植える。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そうしてとうていまた元の路へ引き返す勇気を
有
(
も
)
たなかった。彼は前を
眺
(
なが
)
めた。前には堅固な扉がいつまでも展望を
遮
(
さえ
)
ぎっていた。彼は門を通る人ではなかった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
やがて二人の影が
高粱
(
こうりょう
)
に
遮
(
さえ
)
ぎられて、どっちへ向いて行くかちょっと分らなくなった。
先刻
(
さっき
)
からそこいらを
徘徊
(
はいかい
)
していた背の高い支那人もまた高粱の
裡
(
うち
)
に姿を隠した。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
細長い男は返事もせずに、帽子を脱いで、胸のあたりを
煽
(
あお
)
いでいる。
日頃
(
ひごろ
)
からなる
廂
(
ひさし
)
に
遮
(
さえ
)
ぎられて、菜の花を染め出す春の強き日を受けぬ広き
額
(
ひたい
)
だけは目立って
蒼白
(
あおしろ
)
い。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「そりゃ
私
(
わたくし
)
のことだから少しは道楽もしますが……」と云いかけた。父はすぐそれを
遮
(
さえ
)
ぎった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
右よりし左よりして、行く人を両手に
遮
(
さえ
)
ぎる杉の根は、土を
穿
(
うが
)
ち石を裂いて深く地磐に食い入るのみか、余る力に、
跳
(
は
)
ね返して暗き道を、二寸の高さに段々と横切っている。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
是公は何か用事があったと見えて、国沢君と二人で
停車場
(
ステーション
)
の構内を横切って妙な方角へ向いて歩いて行った。やがて二人の影は物に
遮
(
さえ
)
ぎられて、汽車の窓から見えなくなった。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
遮
常用漢字
中学
部首:⾡
14画
“遮”を含む語句
遮莫
遮断
盧遮那仏
遮二無二
遮切
盧遮那
廬遮那
遮蔽
遮那王
遮斷
廬遮那仏
大毘盧遮那加持経
無遮
遮光
遮而
阿毘遮魯迦
電路遮断器
遮欄
遮水管
遮絶
...