トップ
>
冴
>
ざ
ふりがな文庫
“
冴
(
ざ
)” の例文
思いなしかその死んで凍えてしまった小十郎の顔はまるで生きてるときのように
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えして何か笑っているようにさえ見えたのだ。
なめとこ山の熊
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
いつも髪を耳隠しに結った、色の白い、目の
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えしたちょっと
唇
(
くちびる
)
に癖のある、——まあ活動写真にすれば
栗島澄子
(
くりしますみこ
)
の
役所
(
やくどころ
)
なのです。
或恋愛小説
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
幸
(
さいわい
)
にその日は十一時頃からからりと晴れて、垣に
雀
(
すずめ
)
の鳴く
小春日和
(
こはるびより
)
になった。宗助が帰った時、御米は
例
(
いつも
)
より
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えしい顔色をして
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
買いものの好きなお銀は、出たついでにいろいろなものをこまごまと
擁
(
かか
)
えて、別の通りから
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えした顔をして家へ帰って来ていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
一身の浮き沈みを
放下
(
ほうか
)
して、そのような
眼
(
まなこ
)
であらためて世の様を眺めわたしますと、何かこう暗い
塗籠
(
ぬりごめ
)
から表へ出た時のように
眼
(
まなこ
)
が
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えとして
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
▼ もっと見る
眸
(
ひとみ
)
が却っていつもより綺麗だ。
覗
(
のぞ
)
いて視ると、庭の木の芽が本当の木の芽よりずっと光って
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えと映っている。と言っても京子は納得し切らない。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
妻ノ耳ノ肉モ裏側カラ見ルト
冴
(
さ
)
エ
冴
(
ざ
)
エト白クテ美シイ。アタリノ空気マデガ
清冽
(
せいれつ
)
ニ
透
(
す
)
キ
徹
(
とお
)
ッテイルヨウニ見エル。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
とても疲れていて、さっきまでは眠くっていまにも倒れそうであったのに、さて電燈を消してしまうと、よくあるやつだが、急に目が
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えとしてきた。
旅の絵
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
その日のように
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えとした眼と、物も言わない
口唇
(
くちびる
)
とは、延びよう延びようとして延びられない彼女の
内部
(
なか
)
の
生命
(
いのち
)
の
可傷
(
いたま
)
しさを語るかのようでもあった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
が、冷澄な空気の底に
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えとした一塊の
彩
(
いろど
)
りは、何故かいつもじっと
凝視
(
みつ
)
めずにはいられなかった。
冬の日
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
「至極賛成ですなア、主義でないと言うことは至極賛成ですなア、世の中の主義って言う奴ほど愚なものはない」と岡本はその
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えした眼光を座上に放った。
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
明るく
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えとした顔つきや、楽しそうな起ち居のようすが、
毎
(
つね
)
とは際立って美しくみえる、伊兵衛はちょっと
眩
(
まぶ
)
しそうな表情で、暫らくさえの姿を見まもっていた。
彩虹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
こおろぎが隣の部屋のすみでかすれがすれに声を立てていた。わずかなしかも浅い睡眠には過ぎなかったけれども葉子の頭は暁
前
(
まえ
)
の冷えを感じて
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えと澄んでいた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
碧空に高く
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えと輝く雪の光にあこがれて、羽を挿した帽を冠った人や、
氷斧
(
アイスアックス
)
を担いだ人や、または白衣宝冠の人たちが、年々の夏、何千人または何万人となく入り込むのは
上高地風景保護論
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
涼しい解決? そうじゃない。無風。カットグラス。白骨。そんな工合いの
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えした解決だ。いや、そうじゃない。どんな形容詞もない、ただの、『解決』だ。そんな小説はたしかにある。
ダス・ゲマイネ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
にわかに
起
(
おこ
)
ってそうしてこのしんみりした雪の日、人の心を吸い入れるような尺八の
音色
(
ねいろ
)
に引かれて静かにしていると、その尺八は我が家のすぐ窓下に来て、
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えした音色をほしいままにして
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その顔には何か
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えしたものがあった。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
客が帰ってしまうと、
瀟洒
(
しょうしゃ
)
な浴衣に薄鼠の
兵児帯
(
へこおび
)
をぐるぐる
捲
(
ま
)
きにして主が降りて来たが、何となく顔が
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えしていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
一身の浮き沈みを
放下
(
ほうか
)
して、そのやうな
眼
(
まなこ
)
であらためて世の様を眺めわたしますと、何かかう暗い
塗籠
(
ぬりごめ
)
から表へ出た時のやうに
眼
(
まなこ
)
が
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えとして
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
たとえば哀音に
充
(
み
)
ちた
三味線
(
しゃみせん
)
を聞く時のような、
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えとした、透き
徹
(
とお
)
った清水のように澄み渡った悲しみが、何処からともなく心の奥に吹き込まれて来るのである。
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その日お城から帰った直輝は、妻の顔色が見ちがえるように
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えとしているのにおどろいた。
日本婦道記:梅咲きぬ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
今まで薄暗いところで見た娘の
貌
(
かお
)
のくぼみやゆがみはすっかり
均
(
な
)
らされ、いつもの
爛漫
(
らんまん
)
とした大柄の娘の眼が涙を
拭
(
ふ
)
いたあとだけに、
尚更
(
なおさら
)
、
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えとしてしおらしい。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
何時晴れるともなく彼女の低気圧も晴れて行った後で、あれほど岸本の心を
刺戟
(
しげき
)
した彼女の憂鬱が
何処
(
どこ
)
にその
痕迹
(
こんせき
)
を
留
(
とど
)
めているかと思われるほど、その日は
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えとした眼付をしていた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
しかし彼女の顔色は何も気づかぬように
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えしていた。
春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
風が通ればさえ
冴
(
ざ
)
え鳴らし
『春と修羅』
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
深山に
情人
(
いろ
)
と誤解された弟と一緒に、初めて笹村の家へ来た当時のお銀——その時の
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えした女の目の印象は、まだ笹村の
頭脳
(
あたま
)
に
沁
(
し
)
み込んでいたが
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
なんに遣うのだと
訊
(
き
)
くと、にこっと笑う、憎げというものの少しもない、明るく
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えとした顔で、こっちの眼を真正面に見ながらにこっと笑う、この笑い顔を見せられると
明暗嫁問答
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
空には雲のきれぎれが絶えず流れているらしく、折々日が
翳
(
かげ
)
ってはぱっと照ることがあったが、そう云う時の室内の白壁の明るさは、何か頭の中までが
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えと透き
徹
(
とお
)
るように思えた。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼女の濃くなった髪の毛にも、彼女の
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えとした
眸
(
ひとみ
)
にも。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
高信は重荷を下したように、
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えとした顔で云った。
入婿十万両
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
冴
漢検準1級
部首:⼎
7画
“冴”を含む語句
冴々
冴渡
冴返
冴切
音冴