しづ)” の例文
しづかなるここらの里も、雛祭ちかづきぬらし。御形ごぎやう咲き蓬萠えたり。古りぬれど雛もかざれり。山もあり川もありけり。こもり啼く子ろも居るらし。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
恍惚うつとりとなるしづけさ。——聖母像マドンナはゐない。架上の基督クリストだけが、弱々しげに咳き込む。⦅けふは、あなた、クリスマス・イヴなんですよ⦆紅茶のスプンの「ちん」と鳴る音。——
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
あしのちかづくと、またこの長汀ちやうていかぜさわやかに吹通ふきとほして、人影ひとかげのないものしづかさ。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
朝鳥あさとりこゑおもしろく鳴きわたれば、かさねて一三七金剛経こんがうきやうくわん供養くやうしたてまつり、山をくだりていほりに帰り、しづかに終夜よもすがらのことどもを思ひ出づるに、平治の乱よりはじめて、人々の消息
どの部屋もの光景ありさまが隅々まであり/\と見えた。広間の、夏はふさいである炉の蓋の上に小猫が眠つて居るのまで見えた。此のしづかな空つぽの家を、奥の間の仏壇が留守して居る様に思はれた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
しづかなるここらの里も、雛祭ちかづきぬらし。御形ごぎやう咲き蓬萌えたり。古りぬれど雛もかざれり。山もあり川もありけり。こもり啼く子ろも居るらし。
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さびしい庭だ、しづかな庭、古めかしい日本の庭、風雅な庭、それでも極りきつた、強ひて取澄した庭、幽かな庭。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
父と母さが合はず、さびしくましき。若きより悲しかりにき。今老いて、七十路過ぎて、さらさらに何の事なし。頼りなく頼りますかも、まさびしくしづけかるかも。
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
父と母さが合はず、さびしくましき。若きより悲しかりにき。今老いて、七十路過ぎて、さらさらに何の事なし。頼りなく頼りますかも、まさびしくしづけかるかも。
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
雲白くうかべる峡の日屯ひだむろ空間そらあひの中、こまごまと飛べる羽虫も、よく見れば一つ一つに命あり、舞ひ立ち光る。しづかなり、ただ安らなり。まだ深き日のあたりなる。
雲白くうかべる峡の日屯ひたむろ空間そらあひうち、こまごまと飛べる羽虫も、よく見れば一つ一つに、命あり、舞ひ立ち光る。しづかなり、ただ安らなり。まだ深き日のあたりなる。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
つくづくと眺めてあれば、しづかなる入江のさまや、苫舟にのぼる煙も風ければぐに一すぢほそぼそとしばしのぼれり。広重のその絵の煙、目に見れば浮世なりけり。
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
つくづくと眺めてあれば、しづかなる入江のさまや、苫舟にのぼる煙も、風けばぐに一すぢ、ほそぼそとしばしのぼれり。広重のその絵の煙、目に見れば浮世なりけり。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
硝子透き、窻掛を透き、斜めあかるみぎりは冬もなほいつくしく見ゆ、たより無き影としもなし、柔かく親しかりけり。薄玻璃の影もゆらげり。妻とゐる二階の書斎、ひる過ぎはただしづかなり。
しづかなるいほりやと観て仰ぐ眼にまろまろとよしあかる枇杷の実 庭に小亭あり
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
柔かな物悲しい赤と乾酪ヂーズ色の丘陵のうねりがしづかな日光の反射に浮き出してゐる隣に、二つの円い緑の丘陵が大和絵さながらの色調で竝んで、その一つの小高みに閑雅な古典的の堂宇が隠顕する。
白帝城 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しづかなるいほりやと觀て仰ぐ眼にまろまろとよしあかる枇杷の實庭に小亭あり
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
秋ふかむ夕日明りや枯小竹かれざさに雀羽ばたくこのしづけさを (一一〇頁)
文庫版『雀の卵』覚書 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うち見にもなにかしづけき秋ぐさのよきととのひや日ざしあびつつ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
このごときしづけき林泉しまの日あたりはただに眺めて坐りてをあらむ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しづかなる城とおもふをあはれなり日でりはげしく合歓ねむぞほめける
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ひたむきにしづけかりけり日の方や向日葵ひまはりしんけつくしたる
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
ひたむきにしづけかりけり日の方や向日葵ひまはりしんけつくしたる
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しづけさや雀飛び去る小枝さえのゆれ揺れてとまらねまた一羽来つ
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
四方の雲ひたにしづけくなりにけり山峡ふかく瀬のたぎち見ゆ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しづけさは春の蚊をすら羽ぶき澄む浅間の鷹のごとも聴き居つ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
野の窪の牧場にかがむ牛のむれしづかさすぎてかかはりもなし
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
杉の根の縁白笹に燃ゆるのこのしづけさよたまらふ見れば
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ねもごろに老木の楊絮つけておのづから離し立ちのしづけさ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しづかなる響のよさや独楽ひとつ廻り澄みつつたゞしく据わる
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
駈け駒はきほひ空飛べしづかなる駈けのとまりはひたととまりぬ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しづけくておほき機構の刷り出づる百円紙幣さつうつしけなくに
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
春浅くしづかなるに、うち羽ぶき、しじに呼ばひぬ。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しづけきを人は戦ふ夏けて模擬地雷火を爆発せしむ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かくのごとしづかなる日ざしありやと。
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かかる日のしづけさも世にはあるなり。
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
鴨はけてる、しづかな眼を。
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
とどろきぬ、しづけき春に。
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しづけさや、くろくる
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
しづけさよ、三宝寺池
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しづけさや、くろくる
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しづけさよ、興安嶺
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)