トップ
>
閑
>
ひま
ふりがな文庫
“
閑
(
ひま
)” の例文
旅行をする折にも手が
硬
(
こは
)
ばると
可
(
い
)
けないからといつて、ピアノを汽車のなかに担ぎ込んで、
閑
(
ひま
)
さへあれば
鍵盤
(
キイ
)
を打つてゐる人である。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
第七 人間山は
閑
(
ひま
)
のときには、朕の労役者の手助をして、公園その他帝室用建物の外壁に大きな石を運搬するのを手伝わねばならぬ。
ガリバー旅行記
(新字新仮名)
/
ジョナサン・スウィフト
(著)
『あいつめ、浪人以来、
閑
(
ひま
)
に体を持ち
扱
(
あつか
)
って、この夏は、法帖を出して、毎日
夏書
(
げがき
)
をして居るのでござるよ、手習いをな。はははは』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夕食前の
閑
(
ひま
)
つぶしに読んでいた小説を、太鼓腹の上に伏せて、片手で美事な禿げ頭をツルリと撫で上げながら、大きな
欠伸
(
あくび
)
を一つした。
霊感!
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
唯これだけならば別にお話の種にもならないのですが、その晩は宿屋も
閑
(
ひま
)
だったと見えて、女中ふたりが座敷へ来て酒の酌をする。
半七捕物帳:68 二人女房
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
女給達は、
閑
(
ひま
)
なもので、四五人も私達のそばに来てゐた。そして、てんでに流行歌を、外は風や雨なので、大きい声で唄つてゐた。
亡弟
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
文学志望で
夙
(
はや
)
くから私の家に出入していた。沼南が外遊してからは書生の雑用が
閑
(
ひま
)
になったからといって、殊にシゲシゲと遊びに来た。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
仰付
(
おほせつけ
)
られけるにぞ徳太郎君をも
江戸見物
(
えどけんぶつ
)
の爲に
同道
(
どうだう
)
なし麹町なる
上屋敷
(
かみやしき
)
に
住着
(
すみつけ
)
たり徳太郎君は役儀もなければ
平生
(
ふだん
)
閑
(
ひま
)
に任せ
草履取
(
ざうりとり
)
一人を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
別にこれという意味はなかったのだけれど、
恰度
(
ちょうど
)
その方向が、帰り
路
(
みち
)
になっていたせいもあり、又、彼の「
閑
(
ひま
)
」がそうさせたのだ。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
傳「そうです、変な言葉の奴ばかりいますから
貴方
(
あなた
)
のような方に逢うと気丈夫でげす、
閑
(
ひま
)
で遊んで居りますから
何時
(
いつ
)
でも参ります」
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「今日こそは今日こそは、と、婆さんと二人で、そなたの
閑
(
ひま
)
をねろうていたのよ、今こそその折をつかまえたと云うものじゃ——」
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
そのうち
閑
(
ひま
)
を得てすっかり書きなおそうといく度か考えたことがある。しかしそういう閑を見いださないうちに著者はまた東京へ帰った。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
「僕は大丈夫だ、ほんとうに嫌ひだ、あゝいふ処は。周子も何もない。全く嫌ひなんだ。馬鹿な……チエツ! そんな
閑
(
ひま
)
があるもんか。」
熱海へ
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
要するに真剣にはたらいたあとの一服が一番うまいということになるらしい。
閑
(
ひま
)
で退屈してのむ煙草の味はやはり空虚なような気がする。
喫煙四十年
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
商売の方がすっかり
閑
(
ひま
)
になって来た壮太郎は、また
市
(
まち
)
の方へ出て行って、遊人仲間の群へ入って、勝負事に頭を浸している日が多かった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
もし
今後
(
こんご
)
中央公論
(
ちゅうおうこうろん
)
の
編輯
(
へんしゅう
)
を
誰
(
たれ
)
かに
譲
(
ゆず
)
って
閑
(
ひま
)
な
時
(
とき
)
が
来
(
く
)
るとしたら、それらの
追憶録
(
ついおくろく
)
を
書
(
か
)
かれると
非常
(
ひじょう
)
に
面白
(
おもしろ
)
いと
思
(
おも
)
っていました。
夏目先生と滝田さん
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
夜は一時か二時に寝、朝は朝で女中よりも先に起き出る幾は、昼間の
閑
(
ひま
)
な時刻にはごろりと居間の暗い片隅で横になり、直ぐに
鼾
(
いびき
)
を立てた。
鳥羽家の子供
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
半蔵はそれを機会に、往復数日のわずかな
閑
(
ひま
)
を見つけて、医薬の神として知られた御嶽の神の前に自分を持って行こうとした。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それから藁葺きの屋根が小山のやうに高い
母家
(
おもや
)
とに取り圍まれたこの眞四角な廣場が、百姓の
閑
(
ひま
)
な此頃はガランとしてゐた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
意味なんか聞く
閑
(
ひま
)
もなし、答える閑もなし、調べるのは大馬鹿となってるんだから
至極
(
しごく
)
簡単でかつ全く実際的なものである。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
こつちの方は悪くいつても二日か三日の
閑
(
ひま
)
をつぶしただけの損で、なに、それだつて、くだらぬ寄席で
欠伸
(
あくび
)
するよりましなぐらゐのものである。
盗まれた手紙の話
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
とにかくに是に
由
(
よ
)
って、且つ糯米の利用によって、
粢
(
しとぎ
)
で物の姿を作る必要は半減した。従うてまた手杵と
舂女
(
つきめ
)
とはまったく
閑
(
ひま
)
になったのである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
閑
(
ひま
)
な連中で、意志もなく、目的もなく、存在の理由をも有せず、勉強の机を恐れ、自分一人になるのを恐れ、
肱掛椅子
(
ひじかけいす
)
にいつまでもすわり込み
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
この人も良い人であったけれども小普請
入
(
いり
)
になって、小普請になってみれば
閑
(
ひま
)
なものですから、御用は殆どないので、
釣
(
つり
)
を楽みにしておりました。
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
閑
(
ひま
)
にまかせて自分の一代記を書いてみているところだ、今は先祖の巻を書き終えて、次は父の巻にうつろうとしているところだ、第三冊が母の巻
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一首の意は、今日は御所に仕え申す人達も、お
閑
(
ひま
)
であろうか、梅花を
揷頭
(
かざし
)
にして、此処の野に集っていられる、というので、
長閑
(
のどか
)
な光景の歌である。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
閑
(
ひま
)
ある身なれば、宮は月々
生家
(
さと
)
なる両親を見舞ひ、母も同じほど
訪
(
と
)
ひ音づるるをば、
此上無
(
こよな
)
き隠居の保養と為るなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
私はこの塀を見て実に
喫驚
(
びっくり
)
した。もちろん前にも見ない事はないけれどもその日は殊に閑暇で心も自から
閑
(
ひま
)
でしたからそういう事にもよく気が付く。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
それはこの頃のように段々忙しくなって来ては、どうにも油絵など描いている
閑
(
ひま
)
はなくなってしまったからである。
南画を描く話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
水仙の鉢を置いてそれを見て楽しむというのも
畢竟
(
ひっきょう
)
閑
(
ひま
)
があっての上の事で、多忙となるとなかなかそういう悠長なことに時間をつぶしている
隙
(
ひま
)
がない
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
前に言ったとおり、彼女はかつて
祈祷
(
きとう
)
の何たるやを知らず、またかつて教会堂に足をふみ入れたこともなかった。「どうしてそんな
閑
(
ひま
)
があるものか、」
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
丁度父が
閑
(
ひま
)
になって独りでいました時、私が小走りに庭を通りますと、『お前は詩経を学んだか。』と申します。
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
と松本さんも
机
(
デスク
)
から頭を
擡
(
もた
)
げなければならない。うっかりしていると叱られる。社長は尚お
閑
(
ひま
)
を見て昔話をする。
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
私は身仕度をして立ちあがる、駅長殿ものそのそあとから山を下りる、発車は午後二時四十分、それまで
閑
(
ひま
)
そうな駅長室に、煙草をふかしながら座りこむ。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
この頃は
閑
(
ひま
)
だからと、早速がりを食って
奴
(
やっこ
)
さん
行処
(
ゆきどころ
)
なし、飲んだ揚句なり、その晩はとうとうお宮の縁の下に寝ましたッさ。この真似もまた宜しくねえてね。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それは彼の女の物思ひであつた。彼の女は今歩きながら考へ
耽
(
ふけ
)
つて居る、暑さを身に感じる
閑
(
ひま
)
もないほど。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
「すっかりお見それして居りましたの……こんどお
閑
(
ひま
)
でしたら、宅へもお遊びにいらしって下さいませ」
聖家族
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
これが手紙やなにかを書きますと、そう考える余裕や
閑
(
ひま
)
がないので、すらすらと大概の人は書きます。
習書要訣:――美の認識について――
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
閑
(
ひま
)
な警官が二三人そこへ来て笑いながらいろいろと昨夜の話しをして聞かせた。それによると、何でもまだ十時をちょっと過ぎたばかりぐらいの時刻だったそうだ。
六月
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
荻生君はちょうど郵便局が
閑
(
ひま
)
なので、同僚にあとを頼んでやってきて、庭に
生
(
は
)
えた草などをむしった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
ことに、大した
落度
(
おちど
)
がない限り、世襲の禄を保証されて食うに困らない役人などは、自然、
閑
(
ひま
)
に任せて、愚にもつかないことで他人を
弄
(
ろう
)
し楽しもうというようになる。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「なあにね、今日は
不漁
(
しけ
)
で店が
閑
(
ひま
)
だから、こんな時でなけりゃゆっくり用足しにも出られないって」
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
船の頂辺のボオト・デッキから、船底のCデッキまで、ぼくは
閑
(
ひま
)
さえあると、くるくる廻り歩き、あなたの姿を追って、一目遠くからでも見れば、満足だったのです。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
若手のうちでは、語り手とされていて、師匠から、「
春昇
(
しゅんしょう
)
」という芸名まで貰っていた。戸畑にいるときも、若松に移ってからも、
閑
(
ひま
)
さえあれば、稽古を怠らなかった。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
『娘共の料理では、大したこともあるまい。明日は、からだが
閑
(
ひま
)
だから一番僕が手をかけて、このすっぽんを割烹して進ぜよう。お腹をすかせて置いて、やってきませんか』
すっぽん
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
その日はほんとに
閑
(
ひま
)
だった。まだ足が続いてる馴染のお客で、やって来そうな人もなかった。
溺るるもの
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
「いやいや、わしは、そんな心の
閑
(
ひま
)
はない——場所柄も何も、言っていられぬ破目なのじゃ」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
好きな
匂
(
にほひ
)
の高い
煙草
(
たばこ
)
も仕事の間に飲んだ時と、
外出
(
そとで
)
の帰りに買つて来て、する事のない
閑
(
ひま
)
さに飲むのとは味が違ふ。新しい習慣に従ふことを久しい間の惰性が
姑
(
しばら
)
く拒むらしい。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
鎖国で
閑
(
ひま
)
多かりしゆえにもあるべけれど、要は到る処神社古くより存立し、
斎忌
(
ものいみ
)
の制厳重にして、幼少より崇神の念を頭から足の先まで浸潤せることもっともその力多かりしなり。
神社合祀に関する意見
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
昼も夜もどんどん往来して
休
(
やす
)
むときがありません。ただ
閑
(
ひま
)
人が定まった生業ももたずに暮らしていたならば、
泰山
(
たいざん
)
のようなたくさんのものもたちまち食いつくしてしまうでしょう。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
“閑”の意味
《名詞》
(ひま)やるべきことがなく、時間を持て余していること。
(出典:Wiktionary)
閑
常用漢字
中学
部首:⾨
12画
“閑”を含む語句
長閑
閑寂
閑話休題
等閑
森閑
一閑張
閑静
閑人
閑古鳥
閑散
閑居
閑々
小閑
閑話
静閑
空閑
閑暇
閑却
閑雅
閑日月
...