しん)” の例文
冬向は一切浴客よっかくはありませんで、野猪しし、狼、猿のたぐいさぎしん雁九郎かりくろうなどと云う珍客に明け渡して、旅籠屋は泊の町へ引上げるくらい。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
思はゞお花殿に力をそへかたき吾助を討取べしと其許心付れしならば其由悴に告て給るべし又此金子はわづかながらお花殿へしんじ申度とて金二百兩の包を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
したがつて、今度のじつ力主の名人せい度は、たとへいく分えげつないかんじはあつても、たしかに棋界きかいしん歩といふべきであらう。何も勝負せうふだ、たゝかひだ。
「ならばこの吐雲斎を、獄から出せ。胸にはなお、いくらでも秘策がある。両探題の蔭の軍師となってしんぜようわ。獄を開けろ、出してくれい」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
讀んでいた時には見なさるがいい。なかなかええもんだぜえ。厭いたら何時でもほかのものと代へてしんぜる。
続生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
だいなやますやまひまぼろしでございます。たゞ清淨しやうじやうみづこの受糧器じゆりやうきに一ぱいあればよろしい。まじなひなほしてしんぜます。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
二、一天作てんさくの五、二しんが一しん、ええと三、一、三十の一……加賀屋親子の行方不明、佐賀町河岸での人殺し、そこへ迎えに出た加賀屋の提燈……これには連絡がなければならない。
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
えきを立ててしんぜましょうかな、奉納試合の御運勢を見て進ぜましょうかな」
……おゝ、チッバルト、足下おぬし其處そこにゐるか、みたまゝで? まだ嫩若うらわか足下おぬし眞二まッぷたつにしたそのおなで、たうかたき切殺きりころしてしんぜるが、せめてもの追善つゐぜんぢゃ。從兄いとこどの、ゆるしてくれい。
河を渡り地をえらみ、士馬を休息せしめ、げきて動くべきなりと。燕王曰く、兵の事はしんありて退たい無し。勝形成りて而してまた北に渡らば、将士解体せざらんや、公等の見る所は、拘攣こうれんするのみと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「さあ、どう教えてしんぜたものかね?」と、女主人が言った。
あぶらつてしんじよ。(肥前)
お月さまいくつ (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
本石町の小西と淺沼あさぬま、今川小しんどう——それらがとう時のゆう名なみせだつたが、とにかく東けうにも寫眞器屋しやしんきやなどはまだかぞへるほどしかなかつたやうにおもふ。
「おもわず時を過ごしたぞ。介どの。これから一人で麓へ出てはあぶない。正成が連れてしんぜよう。こう参れ」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こまつたことには、わしはらからの工夫くふうでねえでの、くまいやうにくと、五位鷺ごゐさぎうごかぬ。ほり真中まんなかすを合点がつてんむきには、幾度いくどこさへてせてしんぜる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
即座に其方そちの縄目を解き、我々の同士の一人として、わしの持っている独楽へ現われて来る隠語を、早速見せてもしんぜるし、二つの独楽をつき合わせ、互いの隠語をつなぎ合わせ
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あなたは台州たいしうへおいでなさることにおなりなすつたさうでございますね。それに頭痛づつうなやんでおいでなさるとまをすことでございます。わたくしはそれをなほしてしんぜようとおもつてまゐりました。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
おれならがきにせられた足下おぬしぢゃ! わしいまめてしんぜよう名譽めいよはかに。
つくしてしんぜんと申にぞ彦三郎は大によろこびしが江戸不案内の事故如何してよろしからんか何分にもたのむとあれば助十はかんがへ彦兵衞殿の居られた家主いへぬし八右衞門殿は此邊このへんにての口利くちきゝゆゑ是へ行て相談さうだんあるべしと云を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
……わたしもさいわい、地蔵愛じぞうあい遍歴者へんれきしゃ、およばぬながらも同行どうぎょうになって、ともどもさがしてしんぜましょうから
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、方なく小西、淺沼あさぬましんどうあたりから寫眞器しやしんきの目ろくりよせたりして、いはば高の花のいゝ寫眞器しやしんきの挿説明せつめいなどをむことによつて、持を慰さめてゐた。
たび疲労つかれらつしやらうか、なんなら、今夜こんやわし小家こややすんで、明日あすばんにも、とふたが、それにはおよばぬ……しや、それ真実しんじつなら、片時へんしはや苦艱くかんすくふてしんぜたい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ほしいと云るゝおもむき御道理もつとも千萬しかし此金は去冬きよふゆ夜廻りのせつ我等拾ひ町内ちやうないより御訴へ申上置し所落主おとしぬしきゆゑ今日我等へ下されしなれば親公おやごの爲と有ばしんぜ申べし町所家主名前は何と云るゝときけば彼の者然ればなり町所名前などを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「が。せっかくお越しの佐々木殿へは、身に代って、心からなおもてなしをしてしんぜよ。重々な失礼はひらにおゆるしを仰いでと……まずは御意ぎょいにござりましてな」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、三四年前に半年あまり一しよはぎじゆんだんの高弟(?)となつておほいに切琢磨たくましたのだが、二人とも一こう力がしん歩しない所までてゐるのだから、いさゝ好敵こうてきぎるきらひもある。
彼処あすこさ東京の人だからね。このあいだ一件いっけんもので大騒ぎをしたでがす。行って見てしんぜますべい。うに、はい、何処どっかずらかったも知んねえけれど、台所の衆とは心安こころやすうするでがすから
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それも能登が取次いでしんぜる。ともあれ、黒木の御所へ通すことはできん。お帰んなさい」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すかりとれるぞ。のこらずすべい。兵粮へうらうはこぶだでの! 宿やどへもほこらへもかへらねえで、此処こゝ確乎しつかり胡座あぐらけさ。下腹したはらへうむとちかられるだ。雨露あめつゆしのぐなら、私等わしら小屋こやがけをしてしんぜる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
みずから名のっていうその人とは、滄州横海郡おうかいぐんの名族、遠き大周皇帝の嫡流ちゃくりゅうの子孫、姓はさい、名はしん、あだ名を小旋風しょうせんぷう。すなわち小旋風の柴進さいしんとは私であると、まず言って
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おきなさるな、くまい。……いま火元ひもとしんぜる。」
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「よろしい。おへんはここを出てはならぬ。その代り、お辺は罪なき者としてしんぜる」
「おしんまをせ。」
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「できることなら、ご相談に乗ってしんぜようじゃございませんか。見ればどなたもお若い方、およばずながらわたしの方が、年をとっているだけに、いくらかそのこうがないこともございません」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうだ。さっそく、若御料わかごりょうをこれへ呼んでしんぜよう。……そのあいだ、まず一こんまいるがよい。これは鶴ヶ岡の神酒みき、きのう、全軍の将士へ勝ち祝いとしてけたものよ。まず一杯ひとつまいれ」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お手なみは先刻承知。追っつけてしんじょう。追っつけてしんじょう」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しん生極楽しょうごくらく
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)