寂寞しん)” の例文
ちょいと吹留ふきやむと、今は寂寞しんとして、その声が止まって、ぼッと腰障子へ暖う春の日は当るが、軒を伝う猫もらず、雀の影もささぬ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と得意の一節寂寞しんとする。——酔えばあおくなる雪のおもてに、月がさすように電燈の影が沈むや。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……はるかこゑえると、戸外おもてよひくちだのに、もう寂寞しんとして、時々とき/″\びゆうとかぜさわぐ。なんだか、どうも、さつきから部屋へやがこもる。玄關境げんくわんざかひのふすまをけたが、矢張やつぱいきがこもる。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とんさんの厚意こういだし、こゑいたら聞分きゝわけて、一枚いちまいづゝでもつけようとおもふと、れてもククともかない。パチヤリとみづおともさせなければ、ばんはまた寂寞しんとしてかぜさへかない。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
寂寞しんとなると、わらいばかりが
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)