しん)” の例文
あの人は悧口者で、藝者上がりでもしんに堅いところがありました。尤も彌之助さんはお富さんに夢中で、變な眼付をして見詰めて居たり、手紙を
怪談を話す時には、いつもランプのしんを暗くし、幽暗ゆうあんな怪談気分にした部屋へやの中で、夫人の前に端坐たんざして耳をすました。
長いあいだのそうした職業から鍛えられた、どこかしんに鋼鉄のような堅固なところをもっているからのことで、不良少女団長時代の可憐かれんな性情は今でも残っていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
いているはなしんなかから、みつおうと、おおきな、くろいはちがはななかへはいった。かれは、そのはちをいじめてやろうと、あゆって、ふいに四ほうから花弁はなびらじてしまった。
ときたびに、色彩いろきざんでわすれないのは、武庫川むこがはぎた生瀬なませ停車場ていしやぢやうちかく、むかあがりのこみちに、じり/\としんにほひてて咲揃さきそろつた眞晝まひる芍藥しやくやくと、横雲よこぐも眞黒まつくろに、みねさつくらかつた
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それでもし虻が花のしんの上にしがみついてそのままに落下すると、虫のために全体の重心がいくらか移動しその結果はいくらかでも上記の反転作用を減ずるようになるであろうと想像される。
思い出草 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
しじはじく椿のしんの粉のひかりそとの嵐には動くらし
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
さっさとのぼりのかげへ見えなくおなんなすったんですが、がつきました、まだしんの加減もしません処へ、変だ、変だ、取殺される、幽霊だ、ばけものだ、と帽子なんか、仰向けに、あなた……
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
朝目のさめた銀子の牡丹は、頭脳あたましんがしんしん痛んだ。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
しじはじく椿のしんの粉のひかりそとの嵐には動くらし
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「寢ないのが、二た晩續いてしんが疲れましたよ」
あしのしんの黄に燃えて
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)