しん)” の例文
王法にしんなし、諸将はただよく職分に尽せ。いま魏の曹操は、朝権を奪って、その罪のはなはだしさ、かの董卓とうたくにもこえるものがある。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「耳の形のふくよかなことは。これは水耳すいじと申します。木耳もくじにしなければなりますまい。六しんを失い財帛ざいはく不足孤苦無援の木耳にね」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
中にも彼が仕途は水野美濃守の因夤いんいんによりしにかかわらず、彼は大義しんを滅すの理にり、彼をすらしりぞけたりき。寵臣去りて群小の肝胆寒し。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
公之をうれへ、田中不二麿ふじまろ、丹羽淳太郎等と議して、大義しんほろぼすの令を下す、實に已むことを得ざるのきよに出づ。一藩の方向はうかう以て定れり。
燕王の師を興すや、君側の小人をはらわんとするを名として、其のもくして以て事を構えしんを破り、天下を誤るとなせる者は、斉黄練方せいこうれんほうの四人なりき。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
といふのは、せう代に両しんわかれた一人つ子の青木さんは、わづかなその遺産ゐさんでどうにか修学しうがくだけはましたものの、全く無財産むざいさんの上だつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「大義しんめっすとでもいうか、徳川家のために、仮令たとい、本物であろうとも、贋者にせものとして処置しなければならぬ」
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
(四二)あるひいはく、(四三)天道てんだうしんく、つね善人ぜんにんくみすと。伯夷はくい叔齊しゆくせいごときは、善人ぜんにんものか。じんおこなひいさぎようし、かくごとくにして餓死がしせり。
縁談の儀は旧好をぎ、しんを厚うし候ことにて、双方よかれと存じ候事に候えども、当人種々娘ごころを案じめぐらせし上にもこれあり候か、了簡りょうけん違いつかまつり
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
知らざれ共我が亡後なきあとめぐあはば其方力になりてくれよと遺言ゆゐごんして終りてより實にしんはなきよりとは斯如かくのごときならん夫後そのご傳吉は人にたのまれ江戸表へ飛脚ひきやくに來たり途中とちう鴻巣宿こうのすじゆく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
本来、社会生々せいせいもとは夫婦にあり。夫婦のりんみだれずして、親子のしんあり、兄弟姉妹の友愛あり。すなわち人間の家(ホーム)を成すものにして、これを私徳の美という。
読倫理教科書 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
やむなく大義しんを亡ぼすの伝で、何くわぬ顔で行く。普通ならば電話に及ばずと約束して置く。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
我見がけん『日本橋』は、まだもっと書きつづけるつもりでおりますが、この集には、近親のものが重に書かれたため、したがって挿入した写真など、しんに厚ききらいがありますが
粋様の系統をたづぬれば、平安朝の風雅之れが遠祖なり。語を換へて言へば、日本固有の美術心より自然的屈曲を経てこゝに至りしなり、しかして其尤も近きしんは、戯曲と遊廓とにてありしなり。
それはまあ日ごろ敬愛する両氏のことでもあるしするから、時代の差ばかりにしても差支さしつかへはない。が、大義の存する所、しんを滅するを顧みなければ、かならずしもさうばかりは云はれぬやうである。
解嘲 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
佳節ますますしん。遥カニ兄弟けいていキニ処。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
なんといってもしんは泣き寄りで、まさかにすげなくも追い返すまい。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大事のまえにはしんを滅する覚悟がなければならない。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
けれど君と故劉表とは同宗のしん、その国の不幸に乗って、領地を横奪するがごとき不信は、余人は知らず、わが仁君玄徳にはよくなさりません
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しんあまねくし衆を和するも、つねここおいてし、わざわいを造りはいをおこすも、つねここに於てす、其あくに懲り、以て善にはしり、其儀をつつしむをたっとぶ、といえり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
(二〇)かみおこなへばすなは(二一)しんかたし。(二二)らざればくにすなは滅亡めつばう
大義、しんを滅す、とは、この事じゃ。小太——無駄死むだじに、犬死をしてはならんぞ。幸、七瀬が入り込んだとあれば、また、いかなる手段にて、敵をくじく策略が生れて参るかも知れぬ。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
血にすすり、しんを魂に結んでいた仲ではないか。もし一方に傷でも負わせたら、泉下の父は、どのように嘆くことか
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大王と天子と、義はすなわち君臣たり、しんは則ち骨肉たるも、なお離れへだたりたもう、三十万の異姓の士、など必ずしも終身困迫して殿下の為に死し申すべきや。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ゆゑしゆあいせらるればすなはあたりてしんくはへ、しゆにくまるればすなは(一一〇)つみあたりてくはふ。ゆゑ諫説かんぜいは、(一一一)愛憎あいぞうしゆさつしてしかのちこれかざるからざるなり。
「否とよ将軍、すでにお忘れありしか。むかし少年の日、あなたが我に教えた語には、大義たいぎしんめっすとあったではないか。——それっ諸将。あの白髪首しらがくびを争い奪れっ。恩賞は望みのままぞ!」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)