しん)” の例文
うだらう。日本橋にほんばし砂糖問屋さたうどんや令孃れいぢやうが、圓髷まるまげつて、あなたや……あぢしんぎれと、夜行やかうさけをしへたのである。糠鰊こぬかにしんがうまいものか。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おこのがはらったのはずみが、ふとかたからすべったのであろう。たもとはなしたその途端とたんに、しん七はいやというほど、おこのにほほたれていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「どうしたの? しんちゃん。」と、おかねは、かさねて、たずねました。けれど、新吉しんきちは、さびしそうなかおつきをして、だまっていました。
都会はぜいたくだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
しこうしてその旧、必ずしも良なるに非ず、そのしん、必ずしも悪しきに非ず。ただいたずらに目下の私に煩悶するのみ。けだしそのゆえは何ぞや。
学者安心論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
斯ういふ化粧品をしんきに輸入しましたと態々わざ/\買つて来る。今度は何処そこに音楽会がありますと上等の切符を持つて来る。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
千利久は茶器の新旧可否を鑑定して分限者ぶげんしゃになった男だが、親疎異同しんそいどうによって、贋物にせもの真物ほんものしんと言い張って、よく人を欺いたということである。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「浅井の臣、前波まえなみしんろうッ。織田殿にこそ、この槍を見参にと参ったるに、邪魔だてする小面憎こづらにくわっぱめ。何奴なにやつだ」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
沖繩の農村でも同じ日をミイグショウ、すなわちまた新後生にいごしょうの日といって、しんぼとけのために燈籠とうろうを上げた。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
國際法上こくさいほふじやうからつても「地球上ちきゆうじやうに、あらた發見はつけんされたるしまは、その發見者はつけんしやぞくする國家こつか支配しはいく」との原則げんそくで、當然たうぜん大日本帝國だいにつぽんていこくしん領地りようちとなるべきところである。
「そうらしい。これは、もう六年くらいは経っています。ばらしんあたりでは、一本一円以上は取るね。」
善蔵を思う (新字新仮名) / 太宰治(著)
白粉おしろいべつたりとつけてくちびる人喰ひとくいぬごとく、かくてはべにやらしきものなり、おりきばれたるは中肉ちうにく背恰好せいかつかうすらりつとしてあらがみ大嶋田おほしまだしんわらのさわやかさ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
十年余り前に靜と鏡子が渋谷でしん世帯を持つた頃に逢つたり逢はない昔馴染なぢみ小原をはらも来て居た。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
へえー芝居しばゐにありさうですな、河竹かはたけしん七さんでも書きさうな狂言きやうげんだ、亀裂ひゞあかぎれかくさうめに亭主ていしゆくま膏薬売かうやくうり、イヤもう何処どこかたにお目にかゝるか知れません。
かように化物共がわれもわれもとてらしんきそって、ついにはつばめの尾にかたどった畸形きけいまで出現したが、退いてその由来を案ずると、何も無理矢理に、出鱈目でたらめに、偶然に
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先生のみか世人よのひとおどろかすもやすかるべしと、門外もんぐわい躊躇ちうちよしてつひにらず、みちひきかへて百花園くわゑんへとおもむきぬ、しん梅屋敷うめやしき花園くわゑんは梅のさかりなり、御大祭日ごたいさいびなれば群集ぐんしふ其筈そのはずことながら
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
何を申しましても私が生れましたのが阿古屋の琴責めの人形が出来ました年のしん師走しわすも押し詰まった日で御座いましたのに、それから一箇月半ほど経った新の二月の中旬を過ぎますと
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかしぼくたちはちいさい子供こどもはつれてゆくわけにはいかなかった。そこで松男君まつおくん提案ていあんで、しんねん以下いかものはしんたのむねからむらかえり、しんねん以上いじょうものが、まちまでついてゆくことにきまった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
戯談じょうだんじゃない。しんがそういうことを吹聴ふいちょうしたんでしょう。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「下女のおしんでございますが、でもその前に私が——」
……いわく…………しん………………しんまたしん
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
のみこみ私しことは此家このや盜賊たうぞく這入はひらん爲に只今屋根へのぼりしなり見遁みのがしたまへと申ければ彼男は微笑ほゝゑみナニ盜賊に這入らんとする者が其樣にふるへては所詮しよせんぬすむ事出來ずさてひんせまりし出來心のしんまい盜人どろばうかと云ふに喜八仰せのとほり何を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「いいえ。らぬことはございますまい。先程さきほどかけなさるときおびんとやらおっしゃったのを、しん七は、たしかにこのみみきました」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「だめだな、しんちゃんは、そんなのてなくてどうするのだい。ぼくなら、きっと、たたきころしてやったのに。」
はととりんご (新字新仮名) / 小川未明(著)
明けて文治ぶんじ二年の一月末には、静も母も、鎌倉幕府の罪人として、安達あだちしんろう清経きよつねやしきに預けられていた。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
履物はきものがどうも不思議ふしぎで、我々われ/\紗綾縮緬さやちりめん羽二重はぶたいを着ますのは心恥こゝろはづかしい事で、すでしん五百だいにもりますとほり「木綿もめん男子をのこのやうにおくゆかしく見え」とじつ恐入おそれいります、何卒どうぞ此方こちらへ/\。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
しんたのむねで、十五にんばかりのちいさいものがうしろにのこった。ところが、そこでちょっとしたあらそいがこった。しんねんだから、かえらねばならないはずの比良夫君ひらおくんが、かえろうとしなかったからだ。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
名物めいぶつ一つかげをして二はな紺屋こうや乙娘おとむすめいま千束町せんぞくまちしんつた御神燈ごじんとうほのめかして、小吉こきちばるゝ公園こうえん尤物まれもの根生ねをひはおな此處こゝ土成つちなりし、あけくれのうはさにも御出世ごしゆつせといふはをんなかぎりて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しんめえだ」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
暖簾のれんしたにうずくまって、まげ刷毛先はけさきを、ちょいとゆびおさえたまま、ぺこりとあたまをさげたのは、女房にょうぼうのおこのではなくて、男衆おとこしゅうしん七だった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「そうさ、小田おだくんは、それはうまいから。」と、しんちゃんはなにをおもいだしたのか、感心かんしんをしています。
片目のごあいさつ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「かわいらしいね。」と、しんちゃんや、としちゃんが、ねこのまえにしゃがんで、あたまをなでてやりました。
僕たちは愛するけれど (新字新仮名) / 小川未明(著)
しんちゃんは、そんなとばかりあそんでいるのでしょう。」と、おかあさんがおっしゃいました。
片目のごあいさつ (新字新仮名) / 小川未明(著)
しんちゃんはそんなことにはこたえないで、さっとものさしをひきぬいてふりまわしていました。
片目のごあいさつ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「まだ、きみと、やったことがないね。だが、しんちゃんをかすと、かわいそうだからな。」
はととりんご (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぼくのうちでは、おかあさんが、ねこをきらいだよ。」と、しんちゃんは、こたえました。
僕たちは愛するけれど (新字新仮名) / 小川未明(著)
しんちゃんは、うちしてゆきました。ごはんにかつおぶしをかけて、おさらにれてってきました。一ぴきは、ちいさなあたまってべました。一ぴきは、はこのすみでふるえていました。
僕たちは愛するけれど (新字新仮名) / 小川未明(著)
「どうしたの? しんちゃん。なぜ、くの……。」と、たずねました。
都会はぜいたくだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
しんちゃん、あぶないからよそうや。」と、正二しょうじがいいました。
はととりんご (新字新仮名) / 小川未明(著)