しん)” の例文
暫時しばらく、三人は無言になつた。天も地もしんとして、声が無かつた。急に是の星夜の寂寞せきばくを破つて、父の呼ぶ声が丑松の耳の底に響いたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
丑松は唯単独ひとりになつた。急に本堂の内部なかしんとして、種々さま/″\の意味ありげな装飾が一層無言のなかに沈んだやうに見える。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
何もかも今は夜の空気に包まれて、沈まり返つて、闇に隠れて居るやうに見える。それは少許すこしも風の無い、しんとした晩で、寒威さむさは骨に透徹しみとほるかのやう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)