しん)” の例文
梨のしんを絞りしつゆも、木槿の花を煮こみし粥も、が口ならばうまかるべし。姉上にはいかならむ。その姉上と、大方はわれここに来て、この垣をへだててまみえぬ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……いま言ったように、しんのところにはっきりしないところがあって、殺されるまではわかっているが、どんな方法で殺られるかわからねえから防ぎがつかないのだ。
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
しんしんまで冷たくさせて
敗れて帰る俺達 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
母上のたまいたる梨の、しんばかりになりしを地に棄てしを見て、彼処かしこの継母眉をひそめ、その重宝なるもの投ぐることかは、りおろして汁をこそ飲むべけれと、老実まめだちてわれに言えりしことあり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
思いも寄らぬ蜜柑みかんの皮、梨のしんの、雨落あまおち鉢前はちまえに飛ぶのは数々しばしばである。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)