しん)” の例文
これ勝伯が一しんを以て万死ばんしの途に馳駆ちくし、その危局ききょく拾収しゅうしゅうし、維新の大業を完成かんせいせしむるに余力をあまさざりし所以ゆえんにあらずや云々うんぬん
B それで其女そのをんなはね。わたしの一しんさゝげるひとはあなたよりほかにはないとかなんとかつてね。是非ぜひこのあはれなるもだえのすくつてくださいとかなんとかいたものだ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
さけぶやいな、第二段の浪人組ろうにんぐみ七人が、黒柄くろえしゃくやりさきを、サッと若僧わかそうの一しんにあつめ、リラッ、リラッ、リラッ、としごきをくれて八面をっとりかこんだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かんがえると、このときまで、あたまなかにあった、商売上しょうばいじょうのことや、一しん損得そんとくなどということが一しゅんにのごとくんでしまって、ただなかあかるくなるのが
とうげの茶屋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
『倶舎論』に曰く、「死有しうののち、生有しょううさきにありて、二者の中間ちゅうげんに、五蘊ごうんの起こるあり。生処しょうしょに至らんがためのゆえに、このしんを起こす。二しゅの中間なるがゆえに、中有ちゅううと名づく」
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
嗚呼をこがましけれど雪三せつざう生涯しやうがい企望のぞみはおまへさましん御幸福ごかうふくばかりと、ひさしてことばりつ糸子いとこおもてじつとながめぬ、糸子いとこ何心なにごゝろなく見返みかへして、われ花々はな/″\しきにならんのねがひもなく
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
友人というのは、某会社ぼうかいしゃ理事りじ安藤某あんどうぼうという名刺めいしをだして、年ごろ四十五、六、洋服ようふく風采ふうさいどうどうとしたる紳士しんしであった。主人は懇切こんせつおくしょうじて、花前の一しんにつき、いもしかたりもした。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
しかしながらつひそのにん彼等かれらあひだ發見はつけんされなかつた。彼等かれら怨恨うらみすべ勘次かんじの一しんあつまつた。それでも淡白たんぱく彼等かれら怨恨うらみは三にん以上いじやうあつまつてくちひらけばかなら笑聲せうせいたぬほどのものであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
まずそれまではご一しんこそなによりの大事、かならず早まったことをなさらぬがようござる
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分じぶんしんのことよりほか何物なにものこゝろ往來わうらいしてはなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
甲山こうざん鎮守ちんじゅして二十七せい名家めいか武田菱たけだびし名聞みょうもんをなくし、あまたの一ぞく郎党ろうどうを討死させた責任をご一しんにおい、沙門遁世しゃもんとんせいのご発心ほっしん! アア、それはよくわかっておりまする! お父上のご心中
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれの一しん有無うむすこしも村落むらためには輕重けいちようするところがなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
右敵うてき、左敵、前敵、これ以上に敵はない。対手あいての数はあってもただ一人へこれ以上の剣が一度にかかれる理由がない。さすれば三十人も三人の敵と同じ、四十人も同じこと。要はしんしんかた一つ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)