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心
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しん
ふりがな文庫
“
心
(
しん
)” の例文
乳牛はすこしがたがた四
肢
(
し
)
を動かしたが、飼い葉をえて一
心
(
しん
)
に
食
(
く
)
いはじめる。花前は、いささか
戒心
(
かいしん
)
の
態度
(
たいど
)
をとってしぼりはじめた。
箸
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
もの優しく肩が動くと、その蝋の火が、件の絵襖の穴を
覘
(
のぞ
)
く……その火が、
洋燈
(
ランプ
)
の
心
(
しん
)
の中へ、
𤏋
(
ぱっ
)
と入って、一つになったようだった。
霰ふる
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
自分すら忘れきつた彼の人の出来あがらない心に、骨に沁み、干からびた髄の
心
(
しん
)
までも、唯
彫
(
ゑ
)
りつけられるやうになつて残つてゐる。
死者の書:――初稿版――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
こう云う代助は無論
臆病
(
おくびょう
)
である。又臆病で
耻
(
は
)
ずかしいという気は
心
(
しん
)
から起らない。ある場合には臆病を
以
(
もっ
)
て自任したくなる位である。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
眠たくはないが、疲労と不愉快とで、頭の
心
(
しん
)
が痛む。とにかく横にだけはなりたい。そこで
袴
(
はかま
)
を脱いで、括り枕の上にそれを巻いた。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
室
(
へや
)
のまんなかにつったランプは、
心
(
しん
)
が出過ぎてホヤがなかば黒くなっていた。室には
陰深
(
いんしん
)
の気が充ちわたって、あたりがしんとした。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
大學者
(
だいがくしや
)
さまが
頭
(
つむり
)
の
上
(
うへ
)
から
大聲
(
おほごゑ
)
で
異見
(
いけん
)
をして
下
(
くだ
)
さるとは
違
(
ちが
)
ふて、
心
(
しん
)
から
底
(
そこ
)
から
沸
(
わ
)
き
出
(
だ
)
すほどの
涙
(
なみだ
)
がこぼれて、いかに
強情
(
がうじやう
)
我
(
が
)
まんの
私
(
わたし
)
でも
この子
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
ほんとうにもう
心
(
しん
)
から底から、オイオイ泣きたくなってしまった。いや、涙こそこぼさないが、顔中、大泣きに泣いていたろう、今松。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
長いこと
心
(
しん
)
の
臓
(
ぞう
)
に耳を当てたりしたあげく、とど遺骸と見極めたのだから、よもやそこらに抜かりはあるまい、常吉はこう言い張った。
釘抜藤吉捕物覚書:04 槍祭夏の夜話
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
死様にも不思議はなく、持病の
心
(
しん
)
の病と医者も見立てたんですが、困ったことに——吉田屋のお内儀の死んだのは変死に違いない。
銭形平次捕物控:182 尼が紅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
いわゆる“福草履”なるもので、鼻緒は
藁
(
わら
)
を
心
(
しん
)
にして、厚い紙で巻いたのであるから、ごつごつして
頗
(
すこぶ
)
る
穿
(
は
)
きにくいものであった。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
あれは
心
(
しん
)
から底から亭主を好いておりましたが、男はカルタ
賭博
(
とばく
)
を始めて裁判にまでひっかかり、そんな有様で死んじまったとか。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
それは
貴君
(
あなた
)
が下宿屋でなさる事も出来ます。先ず林檎の皮を
剥
(
む
)
いて小さく切って
心
(
しん
)
を
除
(
と
)
って鍋へ入れますが水は少しも
要
(
い
)
りません。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
不取敢その
心
(
しん
)
を捻上げると、パツと火光が発して、
暗
(
やみ
)
に慣れた眼の眩しさ。天井の低い、薄汚い室の中の
乱雑
(
だらしなさ
)
が一時に目に見える。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
余り
心
(
しん
)
から笑うので、私は彼のようにその洒落はわかりはしなかったけれども、また彼と一緒になって笑い興ぜずにはいられなかった。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
女の方では、そんなこととは知らないから、久しく逢いに来てくれなかった恨みを言うことも忘れて、
心
(
しん
)
から嬉しそうにしながら
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
暫
(
しばら
)
くして
青
(
あを
)
い
煙
(
けむり
)
の
滿
(
み
)
ちた
家
(
いへ
)
の
内
(
うち
)
には
心
(
しん
)
も
切
(
き
)
らぬランプが
釣
(
つ
)
るされて、
板
(
いた
)
の
間
(
ま
)
には一
同
(
どう
)
ぞろつと
胡坐
(
あぐら
)
を
掻
(
か
)
いて
丸
(
まる
)
い
坐
(
ざ
)
が
形
(
かたち
)
づくられた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
翁はもと/\
我利
(
がり
)
から広大の牧場地を願下げたと思わるゝを
心
(
しん
)
から嫌って、目下場内の農家がまだ三四戸に過ぎぬのをいたく慙じ
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
色のまっ黒な、眼の大きい、
柔
(
やわらか
)
な
口髭
(
くちひげ
)
のあるミスラ君は、テエブルの上にある石油ランプの
心
(
しん
)
を
撚
(
ねじ
)
りながら、元気よく私に
挨拶
(
あいさつ
)
しました。
魔術
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして、かの
女
(
ぢよ
)
はのろけまじりに昔の
所天
(
をつと
)
のことや近頃會ふ人々のことを語り、義雄の燒き持ち
心
(
しん
)
を挑發しようとする。そして
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
太い、逞ましい喬木でも、
心
(
しん
)
が朽ちているから、うっかり
捉
(
つかま
)
ると枝が折れて、コイワカガミや、ミヤマカタバミの草の
褥
(
しとね
)
へ
俯
(
のめ
)
ったりする。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
事件が
大袈裟
(
おおげさ
)
になることは、もとより覚悟の上であったろうが、絶縁状の字句が、何やらん書生流で、ほんとに、
心
(
しん
)
から底から
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
しかし今では女も男に負けぬ程
狡
(
ずる
)
くなつた。大隈伯が願を掛けたら、
屹度
(
きつと
)
義足を奉納する。
貞奴
(
さだやつこ
)
だつたら
桃介
(
たうすけ
)
さんの
心
(
しん
)
の
臓
(
ざう
)
でも納めよう。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
突然、私は鉛筆の
心
(
しん
)
を折った。他の鉛筆もみんな心が折れたり先きがなくなっているので、私は小刀でその鉛筆をけずり出した。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
浅香 私もあのかたは
心
(
しん
)
から好きです。あなたが、いやな、卑しい人と何するのなら、私お手紙のお取り次ぎなんかまっぴらだけれどね。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
高い帯揚の
心
(
しん
)
は減らせ、色はもっと質素なものを
択
(
えら
)
べ、金の指輪も二つは過ぎたものだ、何でも身の
辺
(
まわり
)
を飾る物は
蔵
(
しま
)
って置けという風で
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
東西南北より、池の
心
(
しん
)
さして出でたる竿は、幾百といふ数を知らず、継竿、丸竿、
蜻蛉
(
とんぼ
)
釣りの竿其のまゝ、
凧
(
たこ
)
の糸付けしも少からず見えし。
東京市騒擾中の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
「みなし子はよう寝とる」と老婆が言った、「痩せこけて、骨と皮ばかりだ。生みの母親がなけりゃ、
心
(
しん
)
から世話をする者もないからの。」
女房ども
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
粥二碗、汁二椀、芋二皿、鮭の乾肉
尽
(
ことごと
)
く喰ひつくして膳の上
復
(
また
)
一物なし。クレオソート三袋。自ら梨一個を
剥
(
む
)
いで喰ふ。
心
(
しん
)
を
噛
(
か
)
み皮を吸ふ。
明治卅三年十月十五日記事
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
第一に鉛筆
心
(
しん
)
が山のようにあります。これは心だけで鞘がない。それからブッキラ棒な竹の杖が一本、これは頭の金具が剥取ってあります。
作男・ゴーの名誉
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
お嬢さんは生娘でオボコのあんな可愛い人だ、大方ご自分がお前さんに
心
(
しん
)
から惚れているということに自分でも気がつかずにいるだろうよ。
斬られの仙太
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
戸板の
杉
(
すぎ
)
の赤みが
鰹節
(
かつおぶし
)
の
心
(
しん
)
のように半透明にまっ
赤
(
か
)
に光っているので、日が高いのも天気が美しく晴れているのも察せられた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
まち
子
(
こ
)
は、
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
に、すべての
景色
(
けしき
)
が
見
(
み
)
えでもするかのやうに、一
心
(
しん
)
になつて
涙
(
なみだ
)
ぐみながら
云
(
い
)
ふのであつた。すると、
末男
(
すゑを
)
も、おなじやうに
追憶
(旧字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
時刻はすでに朝の九時で、太陽はようやく高かろうとしているが、ここゴルゴタの丘の一角には
心
(
しん
)
の底まで冷たい暗黙の気が立ちこめている。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
その火影は寒さに
凝
(
こ
)
って、
穂尖
(
ほさき
)
が細く、
心
(
しん
)
が赤くなって、折々自然にゆらゆらと
閃
(
ひら
)
めくのが、翁の姿を
朧気
(
おぼろげ
)
に照していた。
点
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
(『
義楚六帖
(
ぎそろくじょう
)
』にいわく、「『
倶舎
(
くしゃ
)
』に曰く、『
漸死
(
ぜんし
)
には
足
(
そく
)
と
臍
(
さい
)
と
心
(
しん
)
とに、最後に意識滅す。下と人と天は不生なり。断末摩は水等なり』」と)
通俗講義 霊魂不滅論
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
又
(
また
)
その
眼
(
め
)
の
中
(
なか
)
に
入
(
い
)
りさうな
後
(
おく
)
れ
毛
(
げ
)
を
拂
(
はら
)
ひ
除
(
の
)
けやうとして
其
(
そ
)
の
頭
(
あたま
)
を
振
(
ふ
)
つてる
所
(
ところ
)
を
見
(
み
)
ました——それから
又
(
また
)
一
心
(
しん
)
に
何
(
なに
)
か
聽
(
き
)
いてるやうにも
見
(
み
)
えました
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
その
心
(
しん
)
になるものは通例、顕微鏡でも見えないほどの、非常に細かい
塵
(
ちり
)
のようなものです、空気中にはそれが自然にたくさん浮遊しているのです。
茶わんの湯
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
或
(
あるひ
)
はラブがなかつた
故
(
せい
)
かも
知
(
し
)
れぬ。
妻
(
つま
)
が
未
(
ま
)
だ
心
(
しん
)
から
私
(
わたし
)
に
触
(
ふ
)
れて
来
(
く
)
るほど、
夫婦
(
ふうふ
)
の
愛情
(
あいじやう
)
に
脂
(
あぶら
)
が
乗
(
の
)
つて
居
(
ゐ
)
ない
故
(
せい
)
かも
知
(
し
)
れぬ。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
これは私の親たちの
肝煎
(
きもい
)
りで私の師匠東雲師へ弟子入りをさせたのですから、私の
心
(
しん
)
からの弟子ではなく、
弟
(
おとと
)
弟子でありますが、不幸なことには
幕末維新懐古談:77 西町時代の弟子のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「それに、もつと困ることは、あなたは、
心
(
しん
)
の
心
(
しん
)
まで都会のお坊ちやんなの。おわかりになる? あたしは、これで、なんだとお思ひになつて?」
泉
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
好い松の樹
檜
(
ひ
)
の樹も兎角に何かの縁で
心
(
しん
)
が折られたり止められたりして、そして十二分の発達をせずに異様なものになって終うのが世の常である。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
あのねえ、私、あなたかテムプル先生か、それとも誰か、私が
心
(
しん
)
から愛する人の眞實の愛を得る爲めになら、自分の腕の骨さへ喜んで折らせるわ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
まだ子供とはいえ素性の不確かな、しかも驚く程
悧巧
(
りこう
)
な人間を直ぐに信用して、その境遇に
心
(
しん
)
から同情して窃盗の助手を甘んじて引き受けている。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そこまでは、一
心
(
しん
)
不乱
(
ふらん
)
になって
統一
(
とういつ
)
をやればどうやら
私
(
わたくし
)
どもにも
接近
(
せっきん
)
されぬでもありませぬが、それから
奥
(
おく
)
はとても
私
(
わたくし
)
どもの
力量
(
ちから
)
には
及
(
およ
)
びませぬ。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
どことなく
心
(
しん
)
のある様な身のこなしを仕ながらお久美さんに許りは変らない上機嫌の顔を見せて居る蕙子が腹立たしくて腹立たしくてならなかった。
お久美さんと其の周囲
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「此頃は新橋ださうですね。若くつて綺麗ですから御無理もありませんけれどねえ。」お糸さんはこんなことを云つて
心
(
しん
)
から珍らしさうに
欵待
(
くわんたい
)
した。
二黒の巳
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
女の人は、立って押入から竹
洋灯
(
ランプ
)
を取りだして、油を振ってみて、袂から紙を出して
心
(
しん
)
を摘む。下へ置いた笠に何か書いた紙切れが喰っついている。
千鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
其
(
その
)
風采
(
ふうさい
)
も
餘程
(
よほど
)
變
(
ちが
)
つて
居
(
を
)
るが
相變
(
あひかは
)
らず
洒々落々
(
しや/\らく/\
)
の
男
(
おとこ
)
『ヤァ、
柳川君
(
やながはくん
)
か、これは
珍
(
めづ
)
らしい、
珍
(
めづ
)
らしい。』と
下
(
した
)
にも
置
(
お
)
かぬ
待遇
(
もてなし
)
、
私
(
わたくし
)
は
心
(
しん
)
から
憘
(
うれ
)
しかつたよ。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
一
心
(
しん
)
不亂
(
ふらん
)
に
祈
(
いの
)
りしに今日は
早
(
はや
)
源内の罪
極
(
きはま
)
り御仕置と聞し故娘の豐は其日
父
(
ちゝ
)
の引れ
行
(
ゆき
)
し御仕置場へ行て見るに終に
仇
(
あだ
)
し
野
(
の
)
の
露
(
つゆ
)
と
消果
(
きえはて
)
しゆゑ
泣々
(
なく/\
)
も其所を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
“心”の解説
心(こころ)は、非常に多義的・抽象的な概念であり文脈に応じて多様な意味をもつ言葉であり、人間(や生き物)の精神的な作用や、それのもとになるものなどを指し、感情、意志、知識、思いやり、情などを含みつつ指している。
(出典:Wikipedia)
心
常用漢字
小2
部首:⼼
4画
“心”を含む語句
焦心
中心
心付
心配
心情
心地
心懸
心持
心臓
心中
心得違
心細
心掛
御心
真心
心遣
心附
心象
心底
下心
...